攻殻機動隊とマトリックスの違い。

攻殻機動隊とマトリックスの違い。



僕は攻殻機動隊が大好きです。
もともと我が家はエイリアンとかスターウォーズなどのSF系映画、もしくはAKIRAやエヴァンゲリヲンなどのSF系ジャパニメーションが大好きな家庭なので、僕がそれ系を好きになるのも自然の摂理。
攻殻機動隊はそんな僕らのSF好き心理を満たしてくれるとともに、特に「イノセンス」に見られるアートワークや音楽の素晴らしさも惹き込まれた理由の一つでした。
さらに攻殻機動隊は四畳半神話大系的な小難しい言い回しが頻出するのに加え、そもそもの根源的テーマが「自己とは何か」という哲学的なものってのも好きな理由の一つ。

さて、この攻殻機動隊は案外歴史が古く、原作マンガの連載が始まったのは今から20年以上前の1989年、劇場版が公開されたのが1995年。
その後これらは多くの作品やクリエイターに影響を与えることとなりました。
その代表的なものが映画マトリックス。話のネタや映像表現など、多分に攻殻機動隊との類似点が見られます。
ただし、一点似て非なるポイントがあります。

それは人間がどのようにネットワークに接続しているかという観点。
どちらの作品も人間が脳神経からダイレクトにネットワークに接続している点は同じです。
しかし、マトリックスでは人間が機械によって強制的にネットワークに接続させられ、仮想現実を見させられているという受動的なスタンスである一方、攻殻機動隊では人間は自らの意志でサイボーグ化即ち「電脳化」し、能動的にネットワークに接続しています。

どちらも近未来を描いた作品ですが、僕の意見としては後者の方が圧倒的にリアリティーがある思います。

なぜか。
人間の記憶の外部化は歴史の必然だからです。

例として、コンピュータの歴史を振り返ってみます。
初期のコンピュータはメインフレームが主でそのサイズは「一部屋くらい」と非常に大きいものでした。しかしその後科学技術の発展に伴いパーソナルコンピュータという概念の登場、パソコンの中でもデスクトップ型からラップトップ、ネットブック、さらにはiPhoneやBlackBerryなどのスマートフォンの登場、そしてウェアラブルコンピュータという概念など、どんどん小型化し、携帯可能となる傾向にあります。
さらに人々の行動にも変化が生じ、インターネットの普及、さらにGoogleの登場によってもはや人の「記憶」という行為、もしくは「脳」というメディアの記憶容量はあまり問題にならなくなってきました。
お気に入りの女優のプロフィール、六本木あたりのおいしいレストラン、旅先で撮った写真、忘れかけたSQL構文、ちょっとしたメモ……、今ではほとんど全ての「記憶」がインターネット上にある。
さらにその検索方法も、以前は何か調べたいものがあれば自宅に帰ってテキストを打ち込んで検索しなければならなかったのが、今ではラップトップやスマートフォンでいつでもどこでも検索でき、さらにはテキスト、声、写真(商品画像やバーコード等)などなど様々な方法で検索できます。

そもそもこのようなコンピュータの普及以前にも記憶の外部化は行われてきました。
どこかで読んだ本には、記憶の外部化の成立過程が下記のように示されていました。

[quote]1. 個人の記憶: 文字通り個人の脳に蓄積された記憶。
2. 集団の記憶: 長老や村長などを中心として集団で語り継がれる記憶。
3. 社会の記憶: 宗教などより広範な集団で語り継がれる記憶。
4. 物理媒体の記憶: 壁画、書籍などの媒体に記録された記憶。
5. 論理媒体の記憶: 電子的な媒体に記録された記憶。[/quote]

上記は曖昧な僕の記憶(←ここがまだ現代に残る外部化の限界…)に基づいた整理ですが、要するに人間は太古より記憶を外部化して社会や文化を築いてきた生き物であるということです。現代の現象は、インターネットの登場により一層記録、保存、共有が容易になり、外部化が加速されてきただけのことです。

では今後どうなっていくのか。
先日見たテレビ番組では、先天的な視覚障害を持つ人の脳に直接電気信号を送り、カメラで写した画像をその人に「見せる」という技術が特集されていました。
これが示すところは、要するに脳でさえも一つのデバイスであり、視覚信号などを外部と通信することができるということです。
ラップトップやスマートフォンなどのデバイスがより小型化し、脳とシームレスに通信できるようになった場合、恐らく多くの人は自らの身体にチップを埋め込みそのチップと脳との通信経路を確立し、「脳をネットに常時接続させて思い浮かべただけで情報を検索、収集する」ことを可能にすると思います。
それはただ手段や技術の違いだけであり、本質的には「おじいちゃんに戦争中の話を聞く」とか「図書館で調べ物をする」のと同じ行為です。
さらに、今まで録音装置で録音していた音や、カメラ等で撮影、録画した映像、さらに肌触りや匂い、味などもビットに変換してリアルタイムでアップロードして記録していく。
現時点では味覚触覚嗅覚のビット変換はまだ普及して言いませんが、これらはもはや技術的に可能であることがほぼ確実となっている技術であり、つまり人が自分の経験、体験の総体=記憶を全てアップロードすることも近い将来技術的に可能となる世界はやってきます。
結果として自分の記憶はネットワーク上にバックアップすることが可能となるわけです。

バックアップが可能であれば、リストアも可能になる。
言い換えれば、自分の記憶の全てを他の脳や記憶媒体にコピー出来る。
自分と全く同じ記憶を持った他の個体が存在するとしたら、本物の自分はどれか。自分とは一体なんなのか。
これが攻殻機動隊の根本的なテーマです。

攻殻機動隊の世界では、バトーのこのセリフがその答えを示しています。

[quote]「ゴーストのない人形は哀しいもんだぜ。特に赤い血の流れている奴はな。」[/quote]
でも実際ゴーストなんて存在しなかったらどうしよう??
これが最近僕がずっと抱えている不安です(笑。
でもネットワークに脳みそ直結できたら超便利なんだけどなあ。
[tmkm-amazon]B000197J1I[/tmkm-amazon][tmkm-amazon]B0000APYMZ[/tmkm-amazon]