オレ流人事考課。

オレ流人事考課。

オレ流人事考課。



最近多くの会社で人事考課の手段としてMBO=目標管理制度を採り入れているところが増えてきていると思います。
そもそも高度成長期が終わったあたりから「全社員みんなおんなじ評価、おんなじ昇進スピード」という制度が限界に近づき、結果として成果に基づいた評価が必要となってきたというのがこの背景にあります。
ただ、社内の財務法務総務部門などのスタッフ部門と、営業部門、開発部門では同じものさしでは測れない。
従ってそれを「目標の達成度合い」というものさしで共通化しようとしたのがMBOという制度だと思います。

しかしながらMBOにも限界があります。
そもそも目標自体の設定、その目標が被評価者にとってどの程度チャレンジングか、または達成した目標が組織の期待値を上回ったか否かという判断を完全に客観的に行うことが困難であることがその理由であり、そのため往々にしてMBOにおける評価は恣意的なものになる、という状況が現実なようです。

そんな問題意識を踏まえ、MBOの運用におけるポイントを僕なりに整理してみました。
長文だしつまんなそうだし突っ込みどころは色々あるかもしれませんが、ご興味ある方は読んでみてください。



まず、人事考課は評価者(直属上司)と被評価者(部下)のコミュニケーションが基本です。そしてこのコミュニケーションが成立するための要件は「透明性」と「信頼関係」の2点です。
「透明性」のない評価は公平感納得感を損ない、また「透明性」は「評価者の評価を信じる」「被評価者に真実を言う」という相互の「信頼関係」がないと、猜疑心にまみれてしまうためです。
これらの要件を前提条件として、下記に示す手順で目標の設定から評価までを行ないます。

【目標の設定(被評価者の作業)】
 1)目標の設定
 2)評価尺度・単位の設定
 3)目標値(およびストレッチ幅)の設定(定量化)
【目標の合意(被評価者と評価者の作業)】
 4)目標・評価方法の合意
 5)評価観点、及びその観点における評価尺度のしきい値設定
【評価(被評価者と評価者の作業)】
 6)事前に合意済みの目標について評価
 7)事前に合意していない目標について評価
 8)評価の根拠についてフィードバック

上記の手順について、以下に詳述します。

【目標の設定(被評価者の作業)】
 1)目標の設定

まず、被評価者は一定期間(1年、半期、四半期など)における目標の設定を行ないます。
営業であれば売上向上が目標になるかもしれませんし、開発であればコストの削減になるかもしれません。
基本的には被評価者が属する組織のミッションを踏まえつつ設定します。

 2)評価尺度・単位の設定

目標が決まったら、それをどのような尺度、単位で評価するのかを設定します。
売上であれば「円」ですし、新規顧客の開拓であれば「人」や「社」が尺度になります。業務効率化が目標ならば「時間」が適切かもしれませんし、場合によっては削減した時間の割合、つまり「%」が適切かもしれません。

 3)目標値(およびストレッチ幅)の設定(定量化)

目標と評価尺度を決定したら、具体的な目標値、つまり売上をいくら達成するのか、新規顧客を何社開拓するのか、何%業務時間を削減するのかをここで設定します。
要は自分の「がんばり度合い」を定量化する作業です。
ここでは、「がんばった場合に達成できる目標」加え、「超頑張った場合に達成できる目標値」を設定することも必要です。
例えば、普通に頑張った場合に売上が100万円だったとして、超頑張った場合の売上が120万円だったとする。
この「超頑張った場合に達成できる目標値」がストレッチ目標です。
人は目標を高く設定しないとがんばれません。しかし目標が高すぎるとがんばる気がなくなります。
そこで通常の目標とさらにそれをストレッチした目標の2つを設定することがポイントです。


ここまでは被評価者が事前にやっておくべき作業です。

【評価基準の設定(被評価者と評価者の作業)】
 4)目標・評価方法の合意

被評価者が目標を設定したら、その目標について評価者と合意します。
設定した目標は妥当か、その評価尺度は適切か、さらに目標値の基準に問題はないか、などの点について評価者と被評価者で議論して合意します。

 5)評価観点とその観点におけるしきい値の設定(優/良/可/不可など)

次に、評価観点とその観点におけるしきい値を設定します。これは「評価者が評価する際の基準」を定量化する作業です。
多くの場合このプロセスが抜け落ちていたり恣意的だったり透明性を欠いていたりするため、評価に不公平感が生まれるものと思われます。
まず「評価観点」とは何に照らし合わせて評価するか、ということです。
例えば、被評価者個人の絶対評価、つまり「昨期の自分より頑張った」という観点で評価するのか、その人の役職・等級に基づいて評価するのか、それとも「被評価者に対する上司の個人的な期待度」で評価するのか、などです。
この評価観点の合意が疎かになっている場合、つまり「被評価者は『新入社員に求められる水準をクリアしているからおれは高評価のハズだ!」と思っている一方評価者は『こいつは優秀だから5年目社員と同等の働きをして欲しい、それに比べると今期はちょっと物足りないなあ』と思っている」ような場合、評価に納得感が生まれません。
この評価観点の合意は、多くの場合就業規則では役職や等級に基づく相対評価と規定される一方、実際の運用では絶対評価になるため乖離し、従って評価者と被評価者の間に意識のズレが生じます。
さらに、この評価観点に基づいて、どの程度の成果を「素晴らしい」とするか、どの程度の成果を「ダメダメ」とするかについて定量化します。
つまり、「この役職だったらこのくらい売り上げて欲しい」とか、「組織としてこのくらいの売り上げが最低限必要」というような基準値を定量化します。
これは組織、もしくは評価者の立場から、「優」「良」「可」「不可」の4段階程度で設定します。
ここで注意すべきは、目標値と評価基準のギャップが大きい場合、つまりストレッチ目標を達成しても「可」に満たない場合や、通常の目標を達成しなくとも「優」になってしまう場合です。
例えば被評価者のストレッチ目標が120万であるにもかかわらず、200万売り上げなければならない場合や目標が100万であるにもかかわらず50万売り上げたら「優」という場合などは、しきい値の設定を調整する必要があります。
これらの評価観点およびしきい値は、評価者側が設定するものであるため基本的にはその評価者が評価する被評価者に対しては共通した観点、しきい値を設定すべきです。そうでないとこの観点やしきい値の設定が恣意性を生むことになるためです。


以上が期初の段階で事前に合意しておくべきことです。

【評価(被評価者と評価者の作業)】
 6)事前に合意済みの目標について評価(ストレッチ/notストレッチ × 優/良/可/不可)

評価の段階では、まず事前に設定され、合意された目標について評価を行ないます。この時、評価は下記の2軸に基づき行ないます。

・被評価者の達成した成果が目標値またはストレッチ目標値をクリアしているかどうか、
・被評価者の達成した成果が評価観点のしきい値をクリアしているかどうか。

前者は「目標達成」と「ストレッチ目標達成」の2段階、後者は「優」「良」「可」「不可」の4段階あるため、計12パターンの評価となります。
そのそれぞれに対して、例えば下記に示すような体系で評価を行ないます。

ストレッチ × 優  =S
ストレッチ × 良  =A
ストレッチ × 可  =B
ストレッチ × 不可 =C
普通    × 優  =A
普通    × 良  =B
普通    × 可  =C
普通    × 不可 =D

 7)事前に合意していない目標について評価(被評価者が申告し、評価者がその場で評価)

さらに、期中に突然舞い込んだ案件など、期初の段階で合意できなかった目標についても、この場で申告し、評価します。
その際はこれまでと同様のプロセスで目標設定、評価を行ないます。

 8)最終評価

プロセス6、7で算定されたS〜Dの評価を足しあわせ、最終的に被評価者の総合評価を決定します。
会社によっては結果目標だけでなくプロセス目標も合わせて評価すると思いますが、基本的にはプロセス目標も、もしくはOJTやOFFJTも同じ遡上で評価すべきと考えます。

 9)評価の根拠についてフィードバック

最後に、それぞれの目標に対する評価の根拠についてフィードバックを行ないます。
なぜ評価がよかったか、なぜ評価が悪かったか、悪かった場合どのようなアクションをすればよかったか、今後何を改善すべきか、です。
評価者の存在意義は、このフィードバックに尽きるといっても過言ではありません。このフィードバックは被評価者の具体的行動に基づいて行われるべきで(「なんとなく動きが悪かったよね」ではなく「あのシチュエーションのあの行動はこういうところが足りなかった」などと説明すべき)、これができない評価者が評価すべきではありません。


以上が、僕が考える評価のプロセスです。
なお、この運用における留意点は下記の通りです。

■留意点
・評価者と被評価者は、通常業務において密接な関係であること。
 (信頼関係構築のため、モラルハザード防止のため)
・評価者、被評価者とも、誠実にコミュニケーションする。
 (被評価者の嘘は普段の行動でバレる。評価者の嘘はフィードバックでバレる。)

サービス業の中核は「人」であり、また日本の産業がサービス業にシフトしていることを踏まえると、日本の企業における最重要かつ基本的な資本は「人」です。
一方で、人材流動に関してもグローバル化が進展しており、優秀な人材の獲得競争はより熾烈な状況になってきます。
このような状況下で、より優秀な人材を獲得、維持するために公正な人事考課制度を導入することは日本企業にとって不可避だと思います。
僕が述べた人事考課制度はいささかシステマチックすぎるかもしれませんが、一方で驚くことにマクドナルドやグローバルダイニングといった会社も、もしくは戦略コンサルのような会社も、人事考課は非常にシステマチックです。(実際の運用は見たことがありませんが)
これまでの年功序列的な評価、もしくは義理人情的ウェットな部分に基づく評価は日本的経営の長所だったかもしれませんが、そろそろこういう人事考課にシフトする必要があるのではないでしょうか?