“アタマがいい”のに結果がついてこない人の逆転仕事術 (吉岡 英幸)

“アタマがいい”のに結果がついてこない人の逆転仕事術 (吉岡 英幸)



最近タダで最新の本を入手する方法を見つけました。
書評コミュニティサイト「本が好き」です。
基本的にはその名の通り本好きがそれぞれ書評を投稿するコミュニティサイトなのですが、一定数書評をアップしていると献本をもらえる権利が発生します。
で、希望する本の書評を書く代わりにその本を献本してもらえると。
当然「もしドラ」並の超人気本などは献本対象には入っていませんが、色んなジャンルの新刊が対象になっているので「興味はあるが金を出すほどではない」本を読むにはいい仕組みだったり。
てことでせっせと書評を投稿して(といっても既にブログでアップしたやつですが)、ようやく1冊ゲットしました。

それがこの本。
そもそも「”アタマがいいの”に結果がついてこない人の逆転仕事術」というタイトルがビミョー。「逆転仕事術」という部分は最近の仕事術ブームに乗っていてよくある感じなのですが、その前のサブタイトル的な部分がビミョー。
恐らくこのタイトルに惹かれて本書を買う人は「自分はアタマがいいと思っている」かつ「仕事で成果を出していない」という微妙な条件を満たしている自覚があるということで、ビミョーな人です。当然献本としてこの本を選んだ僕もビミョーです。

そんな疑念を抱きつつ読んでみると……内容もタイトルに違わぬビミョーさでした。

一言で言えば、「アタマの悪い人を見下しつつ『アナタはアタマのいい人ですよ!』などとおだてるタチの悪い本」。

いや、実は書いてあることの多くは非常にまともなんです。
「プロセスは結果に結びついてナンボ」「相手のレベルに合わせて説明する」「思考プロセスを明示化する」「図示する、例示する」「批判だけでなく代替案を提示する」などなど。
また以下のような「アタマのよさ」の類型も興味深く、なるほどなと思います。
[quote]
1. 飲み込みが早い「高速回転型スマート」
2. 直感で矛盾がわかる「数学思考型スマート」
3. 一瞬でアイデアを思いつく「データベース型スマート」
4. 人を笑わせるのが得意「パラレル視点型スマート」
5. とにかく話が分かりやすい「気配り型スマート」[/quote]しかし、とにかく文体が気持ち悪い。「あなたほどのアタマのいい人なら」とか「他の人はバカすぎてあなたの思考がわからない」と言った気味の悪い下手なお世辞が全編通じて頻繁に登場します。まるでジャイアンに揉み手をするスネオの如き腐った美辞麗句のオンパレードに恐らくアタマのいい人だろうが悪い人だろうがまともな感覚を持った人なら確実にイヤ〜な気分になれるでしょう。
そんな中、ふと頭に浮かぶのは「結局本書のターゲットは誰なのか?どんな人物なのか?」という疑問。

まず本書のタイトルから判断すると、本書のターゲットは「アタマのいい人」のはずです。
「アタマのいい人」とは恐らく上述した5類型に当てはまる人でしょう。
一方、本書を読み進めるとどうやら本書がターゲットとしている「アタマのいい人」とは下記のような考えを持った人間のようです。

  • 自分はアタマがよすぎるからバカな同僚達は自分の考えていることがわからない
  • 自分は一生懸命考えているのに何も考えずに行動して結果を出す同僚が評価されるのはおかしい
  • なぜ自分がバカに合わせて説明しなければならないのか
  • 周りのバカ達は自分のアタマのよさを妬んでいる、だからバカな上司は自分を評価しない
これ、どこからどう見てもバカはコイツでしょう。
恐らくこんな人間はバカだということは筆者にもわかっている。それでもなお読者を「アタマがいい人」と呼んでいる。
つまり本書は読者を「あなたのようなアタマのいい人は」などと「アタマのいい人」呼ばわりしつつもその実完全に読者をバカ扱いしている非常にタチの悪い本だと言えます。

繰り返すようですが、本書のメッセージはほぼ正しい。
上記のように周囲に対する批判を繰り返す読者に対して「他人を変えるより自分を変えろ」と説いているからです。
しかし、その語り口がまるでわが子を溺愛する親から子に発せられた言葉のよう。仮に自分を変えることができたとしても、「結果がついてこない」のが「自分の責任」であることが理解できない人間はその変えた後の行動パターンが定着するわけもなく、いずれまた壁が訪れます。
「他人を変えるより自分を変える」のは「自分の方がまともだから妥協して仕方なく変わってやるか」という動機からではなく単純に「自分にマズいところがあった」という点に対する冷静な反省の上で現れるべき行動。
そこに目を向けず表層的対処でなんとかなる的メッセージを発しつつ、腹の底で周囲をバカにするような読者に表面的には媚びながら腹の底ではバカにしている筆者の態度に憤りを感じます。

意外なのは筆者がリクルート出身であること。
リクルートでの業務経験から新たなメソッドを考えそれを実行に移しビジネスにしていく、そんなリクルート卒業生のスタンスには毎度のことながら敬服します。
でもリクルートOBってこんなイヤらしい人が多かったっけ?

そんな後味の悪さに浸りたい方にはオススメの一冊です。