パチンコがアニメだらけになった理由 (安藤 健二)

パチンコがアニメだらけになった理由 (安藤 健二)



先日行われたニコ生トークセッションに関するニュースを読みました。
「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」の著者若宮健氏、元パチンコ店店員で芸人のウェルダン穂積氏、そしてひろゆき氏がパチンコ業界について語ったとのこと。
このトークライブも見ていませんし、若宮氏の著書も読んでいませんが、確かに「なぜどこの駅前にも一等地にパチンコ屋があるのか?」とか「なぜ駐車場の車に放置された赤ん坊が毎年死んでいるのにパチンコ屋の規制について議論にもならないのか?」等は不思議に思うこともありました。
が、基本的に僕の人生にパチンコはほとんど関係しないので、とりあえずそっとしておきました。
そんな中、先日ご紹介した書評&献本サイト「本が好き!」で本書の献本があったのでふと献本を申し込んでみました。

昨今、テレビを見ているとモバゲーやGREEなど無料SNSゲームのCMと共にパチンコのCMが数多く流れているのに気づきます。
頻繁に流れるパチンコのCMは、アニメや昔のドラマ、最近ではアグネス・ラムなど「タイアップもの」がほとんど。
本書はこのような「タイアップもの」が増加した背景について、関係者に対する地道なインタビューに基づき調べ上げた一冊です。
面白いことに著者自身がパチンコに無縁な人間であるため、「確変」や「リーチ演出」などパチンコ専門用語についても丁寧に解説されている一方、パチンコ素人から見たパチンコ業界の不思議さについても語られています。
例えば、パチンコを始める時に著者が突き当たった壁について、下記のように記述されています。

[quote]しばらくは、人が打っている台を背後から覗いていたが、パチンコのやり方がどうにも分からない。ついに実際に打ってみることにした。台で遊ぶためのパチンコ玉を買うことにしたが、どうやって買えばいいのか分からなかった。
(中略)
店員に「どこで玉を買えばいいんですか?」と聞くと、パチンコ台の差込口に直接お札を入れればいいと教えてくれた。
(中略)
左にある差込口に千円札をいれたが、何も起きない。不思議に思って、再び店員を呼んだ。店員の男性が無言で、台の脇にあるボタンを押した。ジャラジャラと玉が出てきて、台に備え付けられたさらに埋まった。これでやっとプレイ可能になるようだ。ゲームを始める前に、こんなに苦労するとは思わなかった。[/quote]
上記のような記述で著者が語る通り、パチンコは初心者にとって敷居の高い遊びです。
短時間で多額のお金がなくなっていくし(このお陰で僕はパチンコにハマらずに済みました!)、ゲームのルールを解説する説明書のようなものはどこにもない。パチンコ攻略雑誌を読んでもそこには専門用語ばかりでとても初心者が理解できるようなものではない。

その一方、数年前アニメ「新世紀エヴァンゲリヲン」とタイアップしたパチンコ台がヒットした際は、「このタイアップがパチンコの新規顧客獲得を可能にした」との報道が目立ちました。
しかし、ただ「エヴァ」がパチンコになったからという理由だけで、エヴァファンだったパチンコ素人たちはこの高い敷居を乗り越えたのか?
そもそもエヴァなどのアニメを好むアニメファンは、DVDやフィギュアなどを買う代わりにパチンコに多額のお金を投じるのか?
これらの疑問を考えると、どうも「アニメタイアップがパチンコの新規顧客獲得を実現した」という見方はどうも納得できない。
このような問題意識から、著者によるパチンコタイアップに潜む謎の解明が始まります。

本書を読む前、僕は本書にパチンコ業界に絡む陰謀などの都市伝説的オカルトトーク的なものを期待していました。
しかし、フタを開けてみるとそこに書かれていたのはパチンコメーカー、アニメ会社の自らの事業に対する真剣な姿勢。
現在のタイアップ乱立の状況は、彼らが自分のビジネスに真剣に取り組んだ結果もたらされたものであり、そこには陰謀の「い」の字もありませんでした。
オカルトトークがまるでなかったのは少々がっかりしましたが、現在のタイアップ乱立が全て各ステークホルダーの合理性に起因するものであり、また大成功を収めた「エヴァンゲリヲン」機のヒットの理由も実に合理的である、ということは正直言って僕にとって驚きでした。
パチンコーメーカーの社員も、アニメ会社の社員も、パチンコファンも、全て合理的に動いた結果現在のタイアップ乱立という状況があるのです。
このような、僕のようなパチンコ素人が業界の外から眺めるだけではわからなかった合理性が明らかになる点に、本書の価値はあると思います。

ということで、パチンコ好きもそうでない人も、是非一度手にとって読んでみてください。
エヴァがなぜヒットしたのか、なぜパチンコメーカーはアニメタイアップを模索するのか、なぜアニメ会社はコンテンツの本来のターゲットとは異なるパチンコ業界とタイアップするのか、ファンはなぜその台を打つのか。
これらの謎に対する納得感のある合理的な答えがきっと得られると思います。