30歳からの人生戦略 (古市 幸雄)

30歳からの人生戦略 (古市 幸雄)



20歳のときに知っておきたかったこと」に続き、またしても「年齢モノ」を買ってしまいました。
厳密に言えば例のごとく「本が好き!」で献本を入手したので買ってはいないのですが。

巷に溢れる「年齢モノ」、そんなものは読んでも無駄だと思いながらもついついこうして手に取ってしまうのは、やはりこの種のプロモーションが効果覿面だからでしょうか。
例えば僕の場合。
自分の人生の目標もなかなか決まらず日々手探りで生きながら、世の中はどんどん不確実になっていく不安、その一方で年齢は30を越え残された時間もチャレンジする気力も徐々に少なくなっていく様子を感じ始める時期、その焦燥感。
こういうキモチを抱えている人にとって、こういうタイトルの本は、あたかも溺れる者が掴む藁のように、自分を救ってくれるかもしれない一抹の希望に見えてしまうのでしょう。
そしてそれは年齢を問わない。20歳でも30歳でも40歳でも50歳でも、皆それぞれ不安と焦燥感を抱えている。そういう人のそういう隙間にこういうタイトルはすっと入ってきます。

幸いなのは、これらの本の多くは危険な新興宗教とは異なり、基本的には真実を語ってくれるところにあります。
さらにその真実は、実は結構昔から何度も何度も語り継がれ、実践され、その結果取捨選択され、抽出されてきたもの。
古くは聖書であったりコーランであったり、最近のものでも松下幸之助の「道をひらく」やジェームズ・アレンの「『原因』と『結果』の法則」などはこの類ではないかと思います。
それらは心構えであったり、礼儀であったりマナーであったり、常識であったり基礎的な知見であったりする。
そのため、世代を問わず多くの人にとって益になりこそすれ、恐らく害になることはありません。

さて、多少皮肉混じりではありますが、そんな人生指南書に類する本書に対する僕の落胆は、まさにこの点に起因します。
即ち、そもそも「本書のタイトルは偽りである」という落胆。

例えば、著者は第3章「お金を生み出す勉強法」の中でこう述べています。

[quote]多くの方が気づいていないのですが、勉強をしてキャリア・年収アップをしたければ、あなたがしたい勉強ではなく、第三者があなたにしてほしい勉強をしてスキルや知識を増やす必要があります。[/quote]
この言葉、もっともだと思います。
しかし、「他人からのリターンが欲しければ、他人のニーズを満たせ」というこのメッセージは、30歳のビジネスマンのみならず万人に当てはまる。

また、第1章「人生逆転のアクション」で述べられている

[quote]自分の夢が実現しない最大の原因は、自分の行動を変える勇気がないこと。失敗を避けて何もしない者が、将来、成功するはずもない。[/quote]
という言葉もそう。
60歳を超えてからケンタッキーフライドチキンを創業したカーネルサンダースにも、上記の言葉はぴったりと当てはまります。

つまり、本書はあらゆる世代に通用する心構え等を述べており、その意味で人生指南書としての一定基準は満たしていると思います。
しかし、そうであるがゆえに、「30歳からの人生戦略」という本書のタイトルは、小手先のマーケティング戦略のようにしか見えないのです。
それが、本書を読んで僕が感じた「落胆」でした。

いや、確かに正しいことを言っているし、こういうタイトルを付けなければ売れなかったかもしれない。
でも正しいことを説く人が本を売るために偽ったタイトルを付ける、そのことがちょっと残念に感じられましたとさ。