暗号解読 (Simon Singh)

暗号解読 (Simon Singh)



久々の小説です。「小説」というカテゴライズでいいのかわかりませんが、少なくともビジネス書ではありません。
何度かブログにも書いているように、僕はあまり小説を読みません。読書は勉強に近いものであって僕にとって娯楽という位置付けではないようです。厳密には音楽や映画など小説よりも好きな娯楽が他にあるから娯楽としての読書の重要性がそこまで高くないのかも。しかし最近もう一つ重要な理由を思いつきました。
それは、「情報源がない」ということ。
つまり、何を買っていいのかわからんのです。ビジネス書ならば自分の状況や学びたいテーマに応じてチョイスできます。目的がハッキリしているのである程度立ち読み等で良し悪しも判断できる。しかし小説はよくわかりません。巷で面白いと言われているものが僕にも当てはまるかよくわからないし、本屋に行けば大量の小説、そしてさらりと立ち読みしてみても内容の善し悪しはよくわからない。てことで小説から遠ざかってしまう。逆に言えば誰かのレコメンド等によって興味を持てば買って読んでみたりもします。

前置きが長くなりました。要するに本書は他人からレコメンドされ、興味を持ち、読んでみたという訳です。

で、本書、面白いです。

本書は「フェルマーの最終定理」の著者サイモン・シンの著作であり、「フェルマーの最終定理」と同様に小説というよりは下手すると教科書に近い内容。「フェルマーの最終定理」は一見してシンプルであり簡単そうに見える定理の証明に数多くの数学者が数世紀に渡って知恵の限り尽くしていく、そんな一大数学スペクタクルでしたが、本書もほぼ同様の内容。
そのテーマはタイトルの通り、「暗号」。

よく考えると「暗号」って結構面白いものです。バラエティ番組で使われることもあれば(昔放送されていた脱出系の番組とか。暗号を解いて出口のカギを発見し、脱出するというヤツです。)、インターネットが普及した昨今通信の秘匿性を保護する目的で使われることもあります。この両者は共にいわゆる「暗号」ですが、この2つの関連性がイマイチピンとこない。この両者は一見なんの繋がりもないように見えるし、繋がりがあったとしても前者のような原始的暗号が後者のような高度な通信保護手段に進化しく過程は想像もつかない。どちらも「重要なメッセージを特定の人間以外には伝わらないようにする」という同じ目的を持っていますが、手段という観点では恐らく全く異なる。

ということで本書はそんな暗号の進化の歴史と暗号それ自体を、それにまつわる様々なドラマを交えながら丁寧に紐解いていきます。それはつまり情報を隠したい人と知りたい人の知恵比べであり、暗号作成者と暗号解読者の手に汗握る頭脳戦。

僕が本書を面白いと思った理由は、以下の2点でした。

まず第一に、アタマの体操になるところです。本書は暗号の教科書としても機能します。原始の暗号から現代の暗号に至るまで、その構造と強度、弱点は非常に興味深く、またそれぞれの暗号の生成、解読プロセスはそれ自体いいアタマの体操になります。ヘタをすると僕も友達へのメールを書く時に暗号化してしまいそうです。また、ITに関連する仕事をしている方ならば、現代の通信に不可欠な暗号化についてその起源と基本理論を知っておくのは損にはならないはず。
第二に、暗号にまつわる物語です。暗号ネタで近年大ヒットしたのは「ダ・ヴィンチ・コード」。小説も映画も大ヒットしましたが、やはり暗号というものは人の好奇心、冒険心をそそるようです。秘密というものはいつの時代にあっても人の好奇心をそそり、秘密の暴露というものはいつの時代にあっても人の期待を膨らませる。スコットランド女王メアリー・スチュアートや第一次大戦下でのドイツとイギリスの諜報戦に関して暗号が果たした役割はそれ自体非常に興味深いストーリーです。

いずれにしろ、理系っぽい話が大嫌いな人にはあまりオススメできないかもしれません。でもクロスワードパズル等が大好きな人にとっては超オススメ。面白いです。また「コード」とか「サイファー」とか「エニグマ」とか言う単語に意味なくグッとくる方にもオススメかも。
万が一、ダ・ヴィンチ・コードの主人公のような境遇に置かれることになったら、「これは……ヴィジュネル暗号だな……」なんて言いながら颯爽と解読してみたいものですな。