企業参謀 (大前 研一)

企業参謀 (大前 研一)



5年くらい前に読んだ大前研一の処女作にして最高傑作。

まだ入社2〜3年目の頃、当社も戦略支援グループを設置すべきだと考えるようになりました。

バカデカいIT屋である当社において、技術支援の組織体制はとても充実しています。現場で技術的課題や困難に直面した場合、メールによる簡単な問い合わせから数ヵ月のプロジェクト支援に至るまで、社内の技術支援チームが一定以上のサービスレベルで対応してくれます。このため、当初のプロジェクトメンバーがある分野の技術知識を持ち合わせていない場合においても、十分な品質でお客様に価値を提供することができる。このようなスペシャリストによるシステマチックな支援制度が整っているのはとても素晴らしいことだと思うし、当社の強みの一つだと思います。

この一方で、営業面、戦略面における社内サポートは皆無に等しい。昨今の情勢を鑑み御用聞き的受動的ビジネススタイルから狩人的能動的ビジネススタイルへの急速な転換が求められる中、つまりかつてないほど戦略的営業活動の重要性が叫ばれる中、「営業支援」と名のつく部隊は完全なスタッフ業務に終始してしまっている。現場には妥当な営業戦略、マーケティング戦略(著者の言葉を借りるならば「製品市場戦略」)、事業戦略を立案するノウハウもリテラシーも備わっておらず、素人が生半可な知識で場当たり的「戦略らしきもの」を描いて満足しているに過ぎません。僕も当時は新規ビジネスの創出をミッションとして担っていましたが、それも結局は本で読んだ内容をトレースするだけの場当たり的「戦略らしきもの」、当然これらに沿った事業の成果は、「戦略」という言葉とは裏腹に「運次第」。残念ながらそれはこんなことを考えていた時から5年ほど経った今でも、劇的な改善は未だ見られていないように思います。

このような状況を打開するのに必要だと考えたのが、先述した技術支援部隊のような営業戦略支援部隊。短期間で提案書作成支援を行ったり、一定の期間プロジェクトに属して戦略立案およびその実行をサポートしたり。で、それぞれのミッションが終わるとまた別の案件のサポートをする。そうすることで「場当たり的戦略をとりあえず書いて満足」的な事態は少しくらい解消されると思いますし、またそれが啓発活動となって社内に戦略リテラシーが浸透するのでは、とも思いました。

本書はまさにそのような「戦略プロフェッショナルチーム」を設置すべきとの提言を主旨としています。全社戦略だけでなく個々の事業部戦略、製品戦略もサポートするという当時の僕の構想とは少し異なりますが、「戦略立案専門のプロフェッショナルチームを設けるべき」とのアイデアは同じ(つもり)。しかし、一方でショックだったのは、前者が今から約35年も前に既にこのことを発案していたということ。カリスマ経営コンサルタントvs一介のペーぺーサラリーマンという発案者の脳ミソレベルに格段の違いがあるにせよ。

35年間日本の企業経営(少なくとも当社)が進歩していなかったのか、ペーぺーが発案できるくらいサラリーマンの戦略リテラシーが向上したのか、誰でも思いつく話だけれども単純に僕の気付きが遅かったのか、35年というタイムラグの真因はわかりませんが、少なくとも僕の考えていたことがある程度名の通った人物にサポートされていることにちょっと喜びを感じつつ、このアイデアの実現はそこまで困難なのか!と些かの尻込みを感じました。

さて、肝心の内容は、戦略コンサルタントが日常用いる考え方なりフレームワークなり切り口なりを解説する一方、大前研一らしい提言も記された「一回で二度おいしい」著作。いつもはその屈託のない自慢っぷりと強気な口調に辟易する僕ですが、本書は彼の処女作である成果そんな口調もあまり気にせず読めちゃうくらいテイストもまろやか。
後正武さんの「経営参謀の発想法」と共に、企業内軍師(もしくはそのタマゴ)必読の一冊です。