DiscReview: May. 2012

DiscReview: May. 2012


  1. Satoshi Tomiie / Straight Up [Systematic Recordings]
    トミイエ先生久々のご自身名義でのプロダクション。リミックスも含めると今年1月のGuti / “Keep It”のリミックス以来だけれども、オリジナルプロダクションに限れば2009年暮れのMes / “Back To Basics”以来ということで実に2年半ぶりくらいの超久々リリース。Mes名義プロダクションが続いた2009年頃はどちらかと言うとFreerangeあたりに通じるようなメロディアスなディープテックハウスを作っていたST先生ですが、wstcのインタビューにもあるとおり昨今はルーツに立ち戻ってヴィンテージ機材等を利用した温故知新なハウスミュージックを制作しているとのこと。そんな本作は確かにレトロな音色のリズムトラックを使いながらもその変則的なリズムの配置に今風の気配も垣間見えるトラックで、えーと、正直難解です(先生、すみません)。でもお気に入りのカナル型イヤホンで聴いているとなんだか段々ハマってくる不思議。いや、ほんと。Alex Niggemannのリミックスはオリジナルを活かしながらもちょっぴり咀嚼しやすいように味付け。こちらもオススメです。こんなトラックがぴったりハマるSatoshi Tomiie’s Popup Party、2回目がつい先日東京で開催されたばかりですが、うーん行きたかったなあ。
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  2. David Morales & Roisin Murphy / Golden Era (Franco De Mulero & Hector Romero Golden Days Mix) [Ultra]
    そんなST先生が超久々の新作を発表した一方、こちらの御大も自身名義の新作を投下です。御大のFB投稿では”The Face”名義の新作がどうたらこうたらという情報があったのですがどうやらそれとは違う様子。さて本作は”Golden Era”というタイトル通り黄金時代を懐かしむかのようなレトロ感満載のボーカルハウスです。PVもそんな感じ。ただやっぱり楽曲のクオリティの高さはさすがといったところで、”Golden Era (David Morales Disco Mix)”の流麗な感じはやはりついつい聴き惚れてしまいます。しかしそれより何より注目したいのは本リミックス。サトシトミイエのレーベルSaw Recordingsの共同設立者であり、最新版”DEF MIX第三の男”であるHector Romeroの初プロダクションじゃん!?なんてことで一瞬興奮しましたが既に何曲かリリースしている様子。とはいえDavid自身によるバージョンに比べてちょっと落ち着いた彼のリミックスはいい意味で淡々としていて心地よい感じです。
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  3. DJ Vivona & Joi Cardwell / Return To Love (A Director’s Cut Treatment) [King Street Sounds]
    Satoshi Tomiie、David Moralesと来たらこの人を紹介しないわけにはいきませんね。Frankie Knucklesです。最近は個人としての活動よりもEric Kupperとのユニット”Director’s Cut”としての活動が多いFK御大、本作もその名義でのリミックスです。というかEric Kupper自身も非常にDef Mix Productionsと近しい人物であり、さらに本作のボーカルはJoi Cardwellと非常に懐かしいメンツの揃ったトラックです。リズムトラックを聴いているとなんだかふと「Kiss〜Kiss〜Kiss〜Kiss〜」と鈴木亜美の某名曲を歌ってしまいそうになりますが、別物です。ちょっと切なげなボーカルハウス。うーん、素晴らしい。
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  4. P’Taah / Remixed Silence [Street King]
    Ananda Project率いるChirs Brannの別名義P’Taahのリミックスを集めたアルバムです。残念ながら全曲未発表!てな感じではなく数曲は結構前にリリースされていて、それらを含めこの度リミックスアルバムとしてコンパイルした様子。個人的に大好きなfeaturing Monday満ちるの”The Cosmic Laws (Phil Asher Restless Soul Vocal)”などなど素晴らしいリミックスが収録されてるのですがそれもうだいぶ前に買ったよ的な後味の悪さは残ります。さて、そんな本作の中で絶対聴くべきなのは”The Cosmic Laws”以外にこの2つ。”Everything Is Naturally Free (Supernova Remix)”と”This Is Imaginary (Gramophonedzie Deep Remix)”。前者は安定感が高すぎる故もういい加減コケて欲しいと願いそうになるSupernovaによるディープテックハウス。後者は名作”Why Don’t You”を当てたGramophonedzieによるオーソドックスなディープハウス。どちらも原曲のピアノフレーズが素敵でキレイな感じ。素晴らしい。
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  5. Andre Lodemann / Fragments [Best Works Records]
    新しくリリースされたアルバムに既に買ってしまった曲が何曲かある、そんな悔しさはこのアルバムでも味わえます。ディープテックハウス界の巨匠Andre Lodemannによるアーティストアルバムです。Andre Lodemannと言えばその美しい〜メロディワークで大大大好きなアーティスト、特にAkabu / “Another World”のリミックスなんて美しすぎてたちどころに死ねるかどうかの瀬戸際って感じですが、そんなAndreによる本作はどれもこれも期待を裏切らない流麗トラックばかり。とはいえ2009年にリリースされた”Where Are You Now?”もしれっと収録されているところを見るとちょっと後味の悪さはP’Taah / “Remixed Silence”の比ではないかもしれませんな。
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  6. Jody Wisternoff feat. Pete Josef / How You Make Me Smile [Anjunadeep]
    流麗なトラックばかりを紹介している気のする今月、次なる流麗トラックはこちら。ほぼ毎月1曲紹介するのが義務化しているんじゃないかと思われるレーベルAnjunadeepから「Way Out WestのNick Warrenじゃない方」もしくは「実はNick Warren以外にもう一人いたWay Out Westの人」ことJody Wisternoffが新作をリリース。Pete Josefくんのボーカルをフィーチャーした本作はオリジナルも落ち着いた流麗ユルめプログレッシブでいい感じなのですが、問題はRemix EPに収録されているCelsiusのリミックス。ちょっぴり懐かしさのあるリフを挟みつつも疾走する美メロプログレッシブハウスに仕上げた手腕はお見事。大大大好きなVincenzoのリミックスも収録されているのに「それはそれ」としてしまうくらいいい出来です。
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  7. Hanna Hais / A Cote (Room 806 & S.P.Y Afro Mix) [Atal Music]
    ディープ流麗トラックをもう一つ。本作、元々はハウス界の重鎮Matthias Heilbronnによるプロデュースらしいのですが、そんなMattyのプロダクションよりもよりディープで秀逸なのがこちら。S.P.Y.と言えばDrum ‘n Bass界の巨匠ですが、そんな人がなぜかどディープなハウスミュージックを作っています。しかしその出来がよい。全編に渡って淡々と展開するディープテックハウスですが、その美しさとほどよく踊れそうなリズムトラックは時間帯を問わず結構化ける可能性がありそうな予感も。やっぱりいいですね、こういうの。
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  8. Ruben De Ronde / Stoer Remixes [Rejected]
    さて、流麗トラックタイムはちょっとさておきたまにはトラックモノの紹介を。こちらはレーベルオーナーJoris Voornが「こいつはオラのシークレットウエポンだっちゃ!」なんて言うステマを繰り広げていた問題作。まあRejectedからのリリース、かつリミキサーがKruse & Nuernbergの時点でステマは不要と思いますが。内容はK&Nらしいオォーソドックスなハウストラックに不穏なシンセが展開する至ってシンプル、至って普通、しかしカッコいいトラックに仕上がっております。ただ注目すべきは実は”Kruse & Nuernberg Dub Tool”の方。普通「Tool」なんて言われると「どうせリズムかシンセリフのループなんでしょー」と思ってしまいますが、このバージョンにおける”Tool”はむしろ誤解。取った方がいい。これは「Dub」です。しかしDubの方がカッコいい。どうかToolという言葉に騙されないよう。
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  9. Mat Zo feat. Linnea Schossow / The Sky (Extended Mix) [Anjunabeats]
    今月のプログレッシブハウス。最近歳をとってきた僕はプログレッシブハウスを聴く時もだいぶ穏やかなものを好むようになってしまいました。Mat Zoはメロディアスなプロダクションが多いもののどちらかと言えばだいぶ早め強めな作風故にちょっとくたびれてしまうことが多いのですが、これは別。BPM125という後期高齢者向けな優しい感じ、穏やかな三拍子感、そしてメロディの素晴らしさとボーカルの美しさ。還暦で引退したJames Zabielaが縁側でプレイしそうな1曲です。
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  10. Bryan Ferry / Alphaville (Todd Terje remix)
    今月最後に紹介するのは別に今月リリースのトラックでもなんでもないですが、素晴らしすぎるのでご紹介。NuDisco帝王としてブイブイ言わせているTodd Terje、吉祥寺から世界を股にかけて活躍中のEric Logan氏によればどうやらこれは「トッドテリー」と読むそうですが、そんなトッドテリーによる近年稀に見る名作です。作風はどちらかと言えば機嫌がいい時のDJ Kozeに近しい感じ、春の木漏れ日のように軽妙なハウスミュージックですが素晴らしいのはトラックの展開に合わせて折り重なるキーボードやマリンバの流麗かつ軽快な音色。11分という時間を感じさせない多様な展開、BPM118を遅いと思わない軽快な足取りは本当に聴いていると幸せな気分になります。ただ残念ながら購入はUK人民のみ。どうにかして入手してください。