無一文事件とオレ流海外現金ハンドリング術。

無一文事件とオレ流海外現金ハンドリング術。


僕は海外旅行の経験がほとんどありません。
大学生の頃に卒業旅行でアメリカに行った程度、その後30歳を過ぎてからインドネシアに赴任をするようになり「日本国外」には慣れましたが、それでも「海外」(つまり当時で言えば「インドネシア国外」)に行くことはあまり多くなく、依然「海外旅行に慣れている」状態にあるとは言えません。

一方で、とはいえ赴任期間中には何度か海外に出張や旅行で行くことがあったため、その中でようやく海外旅行のイロハ的なものを学ぶことができ、荷物のパッキングの仕方等ある程度「オレ流」ルールができてきました。そしてその中の一つに「現金の取り扱い」があります。
世界中様々なところでクレジットカードが利用できるようになってきた昨今、シンガポールのクラブではエントランスフィーの支払いからドリンクの購入に至るまでカードさえあればキャッシュレスで済む一方で、依然として現金が求められる状況の方が日常においては圧倒的に多いと思います。そんな海外旅行とは切っても切り離せない現金ハンドリングに関して、自分にとって基本中の基本ルールが「現金の調達は基本的にクレジットカードのキャッシングで行う。両替は使わない。」というもの。詳しい理由は後述しますが、とにかくこの方法は少なくとも都市圏ないし観光地を訪問する場合は非常に便利です。

しかし、先日こんな僕の習性故の大変な事態に巻き込まれてしまいました。本エントリーではその事の顛末と、その教訓を活かしたオレ流旅先現金ハンドリング術を後学のためにまとめておこうと思います。



まず、何が起こったか。
先日タイのプーケットに一人でダイビングをしに行きました。前日には荷物をしっかり準備、チェックした結果忘れ物もなく、また不安だったLCCの乗り継ぎも順調に行って予定通りプーケットの空港に到着。
空港を出てからいつもまず最初にするのはATMで当面必要なお金を引き出すこと。ふとみるとCIMB THAIのATMがあったのでこれなら安心できるだろうとクレジットカードを挿入……と思ったら3秒後に画面が消え”Power Saving Mode”の表示。「節電モードだったら待ってたらすぐ回復するかな」と思っていたら電源断。うんともすんとも言わず。血の気が引く思いをしながら周囲に助けを求めるもの、「とりあえずコールセンターに電話せいよ」とのこと。インドネシアのプリペイドSIM残高がギュンギュンなくなるのを感じながらタイ語アナウンスで訳のわからないコールセンターに電話、ようやく英語オペレーターが出てきたら「あ、それ無理。カード諦めて」と即答。脱力した後、現状を改めて確認してみると、思ったよりも事態が深刻なことに気づく。

  1. インドネシアでもメインに使っていたVISAのクレジットカードがATMに飲まれ紛失確定
  2. 他にキャッシング可能なカードを持っていない;
    次の主力であるAMEXはそもそもキャッシングサービスを提供していない、インドネシアの銀行BCAのカードはVISAブランドで海外キャッシングも可能だが支払い忘れで利用不可(インドネシアのクレジットカードは口座自動引き落としではなく自分で払わなければならないのでよく払い忘れる)、HSBCデビットカードとJCBクレジットカードは先日の財布整理の際家に忘れた
  3. インドネシアルピア以外の通貨を持っていない;
    普段の出張や旅行の際は数ヶ国分のキャッシュ(各国分はそれぞれ少額だけど合計すると数万円分くらい)を旅先に持っていくのが常だが、今回は家に忘れた
  4. インドネシアルピアが両替できない;
    財布の中に入っている唯一の現金である8,000円分相当のインドネシアルピアに頼るしかないと考え空港のマネーチェンジャーに行ったがルピアを取り扱っていない
万事休す。
空港の案内のお姉さんに相談しても「知らんがな」で終わる。そりゃそうだ、彼女達に僕の問題を親身になって解決するインセンティブはない。仕方なく予約をしていた日本人経営のダイブショップに電話し、相談。しかし手はない。また携帯電話のプリペイド残高が減った。
空港の白タクのおっちゃんたちはそんな状況お構いなしに話しかけてくる。とりあえずどうにかホテルに辿り着いて各方面に電話をしたい。ホテルなら部屋付できるから可能、だが問題はホテルまでの車で1時間の距離をどう移動するか。
「タクシーどうだい?」
「乗りたいけど、おれ、金ないのよ」
「は?」
「金ないの。それでもいい?」
「(なんだコイツ……)」
そんな会話を何人かと繰り返した後、あるおっちゃんが活路を開く。
「おれだって金払って乗りたいよ。でもルピアしかないの。ルピアじゃ払えないでしょ?」
「なら途中でルピア両替できる両替屋に連れてってやるわい」
白タク紹介の両替屋なんてなんだかとても怪しい感じがするが、背に腹は変えられない。白タク運ちゃんに頼んで両替屋へ。ほぼ全財産の100万ルピアで3,000バーツ獲得。これで無事ホテルまで移動できたけど、タクシー料金として1,500バーツ支払い、いきなり持ち金半分に。後からこの値段はノーマルなタクシー運賃の倍くらいということを知ったが、だって選択肢がないんだもの。仕方ない。

無事ホテルにチェックインしてから、改めて状況を整理。
  • 何か策を講じない限り持ち金は手元の1,500バーツのみ。約4,000円くらい、微妙な金額。
  • 一部のホテルでは宿泊代としてクレジットカードに課金し現地通貨を支給するサービスを行っているが、今回の宿泊先ではその扱いはない。そのサービスを提供しているShangri-Laにお願いしてみようかとも思ったが、プーケットにShangri-Laはない。
  • 宿泊費、及び滞在3日目&4日目のダイビングは既に支払い完了のため、基本的には問題ない。一部国立公園の入場料等少額の現金需要はあるものの、1,500バーツでどうにかなりそう。
  • 滞在2日目のダイビングは現金払い。しかし今からダイブショップにお願いして支払いを銀行振込にしてもらえたら参加可能。
  • ホテルでの追加支出の支払いは、支払いカードとしては機能するAMEXで決済可能。最悪ホテルから出なければ食事等も問題ないし、復路のタクシーも部屋付にすれば問題ない。
ということで、このまま現金調達の問題が解決しなかったとしても「家に帰れない」「食事できない」という最悪の事態は回避できそう。その一方で、「食事はずっとホテルで」とか「1泊2日ダイビングクルーズでのビールは諦める」とか旅をエンジョイするための諸々が制限される様子。
やっぱり現金は必要。

とりあえず2日目ダイビングはダイブショップに連絡し、支払いを銀行振込にしてもらうことができた。そして紛失したクレジットカード会社に連絡して紛失&再発行手続きをしてみるついでに緊急で現金手配してくれるサービスがないか聞いてみる。「確認の後、折り返します」との言葉の2時間後、現金の緊急手配が可能との連絡。この手配はカード会社ではなくVISAのサービス。ガッツポーズ。VISA最高。この日はもう遅くどの店舗で現金手配できるか確認できないので、明朝10時以降に再度連絡する、とのこと。とりあえず旅行期間中に現金調達の目処がつきそうで、一安心。しかしまだ現金を手にしたわけではない。
国際電話の場合、受信側であっても料金が掛かる。上記のやりとりをする間にもプリペイドの残高はギュンギュン減り、到着時に3,000円分くらいあった残高も既に500円程度になっている。携帯電話で連絡を受けるのは不安だが、日本時間の明朝10時、現地時間の8時には既にダイビングツアーに出掛けているため、ホテルで連絡を受けるわけにはいかない。考えた挙句、インドネシアの会社の同僚に連絡してプリペイドのチャージを依頼。ホテルにはWiFiがあるのでメールやLINE、What’s upでの連絡は引き続き可能。で、彼女がものすごく素早くリアクションしてくれてなぜか翌朝午前5時くらいにチャージ完了。

万端な状態で翌日電話を待つも、約束の時間になっても全然連絡がない。結局夕方4時くらいに一度不在着信があったきり。結局ホテルに戻るしかなく。部屋に戻るとコールバックせよとのメッセージがたくさん届いている。なぜか昨日からホテルの電話が繋がらないので(直せと言っても直らない)、再び携帯電話で連絡。現金受け取りの手順を確認。電話を終えた頃にはプリペイドの残高はまたしても500円くらいに。2,500円分のプリペイド残高があっという間に消えた。

というわけで、2日目の晩にしてようやくプーケットの街のWestern Union提携マネーチェンジャーにて無事現金を確保。本当によかった。喜びいさんでその足でSIMカードを確保、現金とモバイルインターネットがあればもうこちらのもの。後はそそくさとホテルに帰って余分な金を大事にしまって現状復帰。


以上の経験を踏まえた今回の教訓は「まずカード会社に相談しろ」でした。VISA万歳。VISA最高。
とはいえ、今回活躍したVISAの緊急キャッシングサービス、恐らく利用するにはいくつかの条件があるように思います。

  1. まず紛失したクレジットカードが緊急キャッシングサービス対応していること。今回利用したVISAや、JCB、Masterなどカードブランドが提供しているサービス以外にもセゾンやUFJなどカード発行会社も同様のサービスを提供しているところがあるようです。なおAMEXはキャッシングというサービス自体を2012年の中頃に廃止したため、不可。
  2. 紛失したクレジットカードがキャッシング可能であり残高が残っていること。これは個々のカードの利用規約を確認する必要がありそうですが、今回提供された金額の上限は僕が紛失したカードのキャッシング利用可能額とのことでした。ということはつまりそもそも海外キャッシングの申し込みをしていなかったり、利用可能額の残高が残ってないと利用できない恐れがあります。ただよく考えればそんなカードにはそもそも現金調達を期待していないのであって、無くしても現金ハンドリングには影響はないのですが。
  3. Western Unionの提携店がある程度に栄えている街に滞在していること。Western Unionは海外送金で有名な会社ですが、少なくともVISAの緊急キャッシングはWestern Unionの店舗をアウトレットにしているようです。世界27万店舗もあるようなので大体の都市や観光地であれば問題ないと思いますが、さすがにWestern Unionがないと現金受け渡しは困難なものになりそうです。

さて、こんな面白体験を経て、僕の現金ハンドリング術もお陰様でブラッシュアップされたように思います。ということでそんなオレ流海外現金ハンドリング術をご紹介。

  1. 現金の調達は基本的にクレジットカードのキャッシングで行う。両替は使わない。
    • この方法のメリットは、比較的に場所や時間の制約を受けず手軽に現金調達ができるため、一気にまとめて両替する必要がなく少額のハンドリングで済む、という点です。
    • また為替レートが安定しているのも利点と言えます。通常両替商を使う場合には、両替商によってレートが異なる上、地域によってもレートが異なります。インドネシアルピアを米ドルに替える場合、日本の両替商よりもインドネシアの両替商の方がレートがいい。為替レートが通過の需給を反映した「価格」であると考えると、当然と言えば当然です。
    • さらにキャッシングの金利は思ったほど高くありません。確かに何ヶ月にも渡って返済する場合は結構な金利がかかってきますが、直後の支払い期日に払ってしまえば大した金利になりません。
    • 重要なのは冗長性です。必ず複数のカードを持っていくこと。できれば複数ブランド用意すること。海外在住の場合は日本発行のクレジットカード以外に居住国のカードも持っておくこと。そのカードが海外キャッシング対応か、海外キャッシングを利用するにあたって申込みが必要かどうかを確認しておくこと。海外のATMは日本の高品質な機械と違ってポンコツなものが多いので、カードが飲まれて出てこなくなったり、カードの前に現金が出てきてついカードを取り忘れてしまったり、というケースは想像以上に多いです。カードなんてなくしても再発行すればいいだけですが、今回のようなケースを避けるために必ず複数枚のカードを持って行きましょう。
  2. 各国の現地通貨は帰国後もキープしておく。使い切ったり残額を全部両替したりしない。
    • これはあまり強い必要性があるわけではありませんが、やはり次回同じ国に行った際、現地通貨の小銭をすでに持っているのはタクシーを使うにしろちょっとしたものを買うにしろ便利です。
    • またこれらの現地通貨はやはり現金なので、いざという時には両替すれば役に立ちます。今回のような場合は特に。
    • ここでのポイントは忘れてしまってもあまり痛くない額、大体5000円から1万円程度にしておくことです。このくらいの額ならいつの間にかその通貨の存在を忘れてしまっても大した被害はありませんし、一方で現地到着直後にはこれだけあれば十分です。これ以上の額が手元に残った場合は出国前に両替しておいた方がいいかもしれません。また、あえて一定額を残す必要もないので、その通貨を使い切ってしまった場合にはそれはそれでOKですし、もう二度とその国には行かない!という場合も帰国前に両替しておいた方がいいでしょう。
    • ちなみに、今回往復で乗り継ぎに使ったチャンギ空港でランチをした時のこと。往路はお代をクレジットカードで支払えたので問題ありませんでしたが、復路はカードがないので現金払いのみ、しかもタイバーツは扱っていないのでわざわざ10シンガポール分だけ両替するハメに。こんな両替は面倒だしレートも悪いので、小銭を持っていたらよかったのに!と改めて感じました。
  3. 常に一定量の米ドルを持っておく。
    • 上述した各国現地通過をキープしておくこととほとんど同じですが、米ドルの魅力は基本的にどこに行っても使えることです。円もそこそこに汎用性が高いですが、支払可能性も考慮すると米ドルの利便性の方が上。ということで旅行カバン等に常に1、2枚忍ばせておくといざという時に助かります。
そんなわけで皆さんも海外旅行の際には是非気をつけてください!あの背中を伝う冷や汗の冷たさ、結構忘れられませんよ!!