標準化と差別化。

標準化と差別化。


以前、「日本初、海外」というエントリーを書いてからわだかまっていたものがありました。このエントリーでは「グローバルに活躍するにあたってビジネスマンの場合は標準化を、アーティストの場合は差別化を進めた方がいい」ということを述べたのですが、これがどうもしっくりこない。その違和感の原因は「それってつまり職種や分野によって標準化した方がいい場合と差別化した方がいい場合に分かれるってこと?」という疑問でした。
この疑問を解く鍵を、ちきりんさんのこのブログエントリーを読んで垣間見た気がするのでちょっと書いてみます。

ちきりんさんのブログエントリーでは新三郷の街がまるでアメリカの地方都市のように、標準化されきっていることが書かれています。
グローバリゼーションが国境を超えた経済活動を意味し、それが世界のどこでもマクドナルドのハンバーガー、AppleのiPhoneが買えることを意味するのならば、企業間競争及びそれに伴う淘汰、支配も国境を跨いで起こるということ。グローバルに商品やサービスを提供できる企業はより多くの顧客にリーチできるようになり、一方でその購買力は商品のさらなる低廉化や品質向上をもたらす。こんなことは今更述べるまでもありませんが、グローバリゼーションとは世界規模で起こるStandardization、標準化をもたらすものと言えます。

しかし標準化はグローバル社会を生きる上での必要条件です。逆に言えば必要条件を満たせなければ死ぬ。新三郷に見られるような大規模ショッピングモールやフードショップによる標準化された生活パッケージが提供されない地域での生活は今まで以上に不便になると思います。もちろん自給自足の生活もありだし、そういうパッケージから距離を置く生活もできると思います。ただ前者は獲得できる物質の量や種類は圧倒的に制限されますし、後者は新三郷と同等のものを獲得するのにより大きなコストないし時間を要するようになる。ここで生活できる人は限られて来るだろうし、それ以前に都市の経営者にとってはこの状態で人口を確保し続けその街の繁栄を維持するのは至難の技でしょう。

これは個々人の世界でも同様です。例えばビジネスマンも世界的な標準化の流れに適合していくことが生き抜く上での必要条件となる。それは英語であったりロジカルシンキングであったり一通りのITに関する知識技能であったり会計や経営戦略に対する理解であったり。これらはビジネス書でよく見るような単語の羅列ですが、逆に言えばそれだけよく目にする一般的なものくらいは身につけておかないと、やがて仕事がなくなります。ブルーカラーの世界はもちろん、ホワイトカラーの世界においても中国、インド、インドネシアをはじめとして世界中から大量に安価な労働力が次々供給されるからです。

このように、グローバル社会においてはまずは標準化するかしないか、できるかできないかが生死を分ける。これは別に今に始まったことではなく、かつては地域単位で、そして日本全体で起こってきたことの範囲がもう少し広がるだけ。昔から地域において人々は文化や風習など標準化された生活フォーマットに望むか望まざるかに関わらず適合し(逆に適合できなければ村八分等で排除し)てきたし、日本全体でもジャスコや吉野家、マツキヨなど標準化の猛威はそこかしこで見ることができます。つまり、過去の歴史に照らしてもこのトレンドは必然と言えるのではないでしょうか。

しかしながら、当然ですが世界のトッププレイヤーになるには標準化では不足です。そこにはさらにDifferentiation、つまり差別化が必要です。いかに他者と差別化をし代替不可能な存在になるか。国レベルでは法人税を大幅に減税し企業を誘致したり、都市レベルでは語学教育等に注力して観光による発展に務めたり、個人レベルではMBAとMOTを持ち技術の理解に基づいた高度な経営能力を獲得したり、というようなことが他者と自分の代替可能性を減少させ、やがては唯一無二の存在に押し上げる。

さて、以上を踏まえた上でCrystal Kayの話をもう一度。
ビジネスの世界では、トッププレイヤーにならずとも標準化して企業に雇用してもらえばそこそこに給料をもらって生きることができます。つまり労働力ピラミッドにおける生存可能範囲が結構広い。ピラミッドの上から結構下の方の人まで生きられる。
一方、アーティストの世界はこの生存可能性が狭く、かなりのトッププレイヤーでないと生きられない。このため、より差別化することが求められる。もちろんアーティストの世界でも標準化は必要だし前提条件だと思いますが、それはアーティストマネジメントやプロモーション、ブッキング管理の部分であり、ここはアーティスト本人が全て担うべき部分でもありません。このためアーティスト本人に対しては差別化に対する優先順位を上げることが強く求められるのではないでしょうか。