海外で働くということ。

海外で働くということ。


僕が海外で働くようになって2年近く経過しました。
この約2年間の間の働き方は、これまで僕が10年近く日本でやってきた働き方とは大きく違いました。その違いの原因は何かと問われると、海外だからとか会社の規模が違うからとかポジションが違うからとか色々あると思うのですが、その違いの理由はさておき今と昔で何が違っているか、気づいた点についてまとめてみました。

  1. スモールチーム
    まず、チームのサイズが小さいです。日本にいた時は一つの新規事業を結構な人数で回していました。営業だけでも1つの案件に部長、課長、課長代理に担当者が2名くらいついていたりする。このチームの中で個々のメンバーの役割はそう変わらず、このため2名いる担当者の役割は全く同じだったりするケースもあります。一方で今の職場ではチームのサイズが小さい。一つのチーム当たり1名か、せいぜい2-3名程度。個々人の所掌はクリアだったり曖昧だったりしますが、多くの場合一人が何役もこなさなければならない。これはもしかしたら日本国内と海外の違いというよりかは大企業と中小零細企業の違いかもしれません。

  2. ゼネラリスト
    スモールチームの中で一人何役もこなすということは、それだけ一人が幅広く色々やらねばならないということです。必然的に個々人はスペシャリストではなくゼネラリスト化していきます。先般の佐々木俊尚さんのメルマガにあったイギリス国営放送のBBCの番組「Click」の制作チームはこの好例です。この制作チームではプロデューサー自身が撮影して編集してさらにグラフィックを作ったりもする。一部スペシャリストが必要なポジションはありますが、それは外注すればいい。言い換えれば、スペシャリストは短期的雇用に収斂していき、パーマネントであるためにはゼネラリストでなければならないということかもしれません。これはLondon Business Schoolのリンダ・グラットン教授の書いた「Work Shift」に書かれる予想とは少し違いますが、僕には少人数の特定分野のスペシャリストだけでスモールチームが回せるとはあまり思えません。

  3. 体調管理
    チームが小さくその中で個々のメンバーが果たすべき役割が大きいと、必然的にその個人が抜けた際の穴は非常に大きくなります。そのため個々のメンバーにとって、なるべく仕事に穴を開けないようにするための体調管理は必須となります。僕が日本で働いていた時は体調が悪くなるとすぐ会社を休んでいましたが、今は体調が良かろうが悪かろうがどっちにしろ休めないので、どうせ働くなら体調がいい方がマシだと思い、体調管理をするようになりました。ちなみに大企業に見られる大きなチームはこれを避けるための冗長性であり、そのため社員は休みを取りやすい。これは組合が強く福利厚生が厚い会社に見られるチーム構成だと思います。

  4. 常時臨戦態勢
    これはiPhone、iPad等の小型デバイスの普及、オンラインストレージ等の普及による変化かもしれませんが、徐々にオンの時間とオフの時間の境界が曖昧になっていきます。早朝だろうが深夜だろうが休日だろうが働く。逆に言えばオンの時間であっても休む。「働く時間」と「休む時間」がはっきりわかれている世界から、それらがミックスされて区別がつかない世界にシフトしつつあるように思います。これは好みの問題もあるかもしれません。僕はどちらかというとまだオンオフの区別をつけたがっている方ですが、確かに土曜に受信した一瞬で返答できるメールは月曜朝まで待たずにすぐに返信した方がいいに決まっています。
    ちなみに今の上司は毎日午後6時くらいにはさっさと帰宅します。その一方でメールは夜中だろうが休日だろうが飛んでくる。外資系企業のエグゼクティブもこういう働き方だと聞きます。今後は好む好まざるに関わらず、組織の反応スピード上げるためにこのようなワークスタイルに収斂していくのではないでしょうか。

  5. プロアクティブさと意思決定
    スモールチームをスピーディーに動かすには個々のメンバーが自律的に動く必要があります。いちいち指示待ちしていたり上司の意思決定を仰いだりしていてはチームの活動は停滞してしまうからです。元マッキンゼーのキャリアコンサルタント伊賀泰代氏の「採用基準」にある「チームメンバー全員がリーダーシップを持つ」状態。ある程度の方向性が与えられたらあとはその中で勝手に動く、勝手に決める。意思決定が自分の裁量を超えていると感じた場合には、上司に事前確認する。ただしこれは「こっちの方向行きますけどなんかあったらよろしくお願いしますね?」という事前確認であって「どっち行けばいいですか?」というお伺いではなく。
    ちなみに裁量の大きさを金額で表してみると、自分がどこまでの裁量を持てるかがわかるそうです。例えば自分の裁量だけでいくらまでの発注ができるか考えてみる。10万円の発注で不安を感じる場合はその人の感じる適正な裁量権は10万円まで、100万円で不安を感じる人は100万円までの裁量権が適正ということだそうです。まあこの辺は慣れとトレーニングでどうにでもなるところですが。

  6. 常時学習
    スペシャリストの場合は一つの道を極めればいい。もちろんその究道の過程でも不断の学習、ブラッシュアップは必要です。一方で、ゼネラリストにはスペシャリスト以上に学習することが求められると思います。それはゼネラリストの方が未経験の分野に放り出される可能性が高いからです。そして放り出された先にはだれもいなかったりします。これまでは先輩なり上司なりがいて基礎的なことはある程度業務の中で教えてもらえたりしました。しかしスモールチームや新規ビジネスではそのような先達がいないケースが少なくありません。そんな場合は自分で必要なことを学ぶ以外にその状況に対処するしかありません。
    このため学習意欲や学習する癖、学習時間、そして本や話を聞ける人などの学習材料を常に確保しておくことが求められます。

  7. 余暇への気合い
    これは必須要件でもないですし万人に当てはまるかどうかもわかりません。完全な経験則です。
    僕がこれまでの社会人人生で学んだこと、特に体力の衰えを徐々に感じ始めてから感じたことは、「体力を回復するには体力の投資が必要」ということです。疲れているからといって体力の投資を渋って家で一日中ダラダラしていたりすると逆に疲れたりしませんか?疲れている時こそ思い切って出かけたり運動したり旅行したりする方が、しっかりくたびれてしっかり食事ができてしっかり寝ることができたりする。精神的にも「あー今日はなんもしなかったなー」という後悔ではなく「今日はくたびれてるのに頑張った!」という前向きな感情が残り、体力をより効率的に回復できるのではないか?というのがこの考えです。
    もちろんやり過ぎて体調を崩すのは本末転倒ですが、がっつり働いた後はがっつり遊んだ方がリフレッシュできるような気がします。

冒頭で述べた通り、これらのことは海外で働くようになってから感じたことです。このためこのエントリーに「海外で働くということ」というタイトルをつけました。
しかしシャープやファーストリテイリングなどの日系企業が外資系のようになっていく中で、インターネットとクラウドが生活や仕事のあり方を変えていく中で、マーケットが日本国内に留まらず世界中に拡大する中で、このようなワークスタイルは日本だろうが海外だろうが関係なく収斂していくトレンドにあるのでは、と思うようになりました。
このような働き方は正直しんどい部分もあります。しかし一方で、日本人が世界中の労働者との比較の中で今の給与水準を確保しようとするならば、もしかしたらこのワークスタイルは避けて通れないものなのかもしれません。一方でこのワークスタイルを最も小さな単位で実現しているのが所謂ノマドワーカーだとするならば、もしかしたら某居酒屋系飲食店の働き方の方よりは随分いいのではないかと思います。
いずれにせよ、いつ会社からクビを切られるかビクビクしつつも、いつクビを切られてもいいように準備をする次第です。