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草食化という現象に関する考察。

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以前、「ロウアーミドルの衝撃」のレビューでちょっと話した「草食化の原因」について。

その前にTwitterで見つけた「草食化」に関する秀逸な分析をどうぞ。(Thx for your retweeting! > go)
[quote]
美人→「男の子?みんな積極的だよ」
普通→「男の子?ちょっと消極的かな」
ブス→「男の子?草食男ばかり!」

結論 草食系男子はいたって普通の男でした[/quote]
てことでもしかしたら「草食化」っつーのはただのバズワードに過ぎないのかもしれませんが、上司に問われたので一生懸命考えてみました。
ちなみにその元上司は新卒採用に携わっていたので、採用担当がどうすべきかについても論考を加えてみました。


「安定志向」は結果で、原因は「草食化」と思われます。
草食化の原因は、下記の3点と考えます。

1.欲求自体が減少し、
2.さらに欲求が実現できるとも思わず、
3.その上そんな自分を肯定できている。

それぞれの原因について下記に詳述します。

1.欲求の減少

1)肉体的欲求の減少~面倒な肉体的快楽よりも安直な快楽で満足できる
・リアルからバーチャル化(メンコ→WiFi通信ゲーム)
・飽食の時代(求めずとも得られる)
・情報過多(ビニ本からiPhoneでエロ動画)
2)精神的欲求の減少~「他人からの承認されること」で快楽を感じた経験に乏しい
・「承認」の質低下(見せかけの「承認」=全員主役の劇、徒競走で全員一等)
・「承認」の機会減少(人間関係の希薄化=オープンコミュニティからゲーテッドコミュニティへ)
・「承認追求」より「排他防止」(”仲間を作る”よりも”仲間はずれにされない”人付き合い)

2.欲求の実現手段に対する不信

1)自己に対する不信
・一億総中流化の維持→階層の固定化(学歴は親の収入に比例)
・成功体験の不足
2)社会に対する不信
・長期不況(がんばってもどうせ右肩下がりという疑念)
・成功事例の不足(ホリエモンの失墜による落胆・閉塞感)
・減点方式(一度ドロップアウトしたら終わり→再チャレンジの困難さ)

3.自己正当化の容易化

-個人主義の曲解→プライドの減少(「幸せ」は人それぞれ、世界に一つだけの花)
・哲学教育の不足(「自分の幸せ」に真摯に向き合わない)
・危機感の不在(このままずっとこの暮らしができると思っている。グローバル化なんて対岸の火事)

要するにこんな時代背景等が草食化を生み出してるのではないかと。
では、企業(の人事部?)はどうすべきか。
取りうる方策は下記の2 つだと思います。

1.肉食動物の採用

昨今人材の二極化が著しいと思います(リクルータやってて痛感)。
このうち肉食を採用するには、雇用制度や人事考課、はたまた事業内容をドラスティックに変える必要があると思うので、肉食人材を一定量安定して採用し続けるのは一朝一夕には難しいと思います。

2.草食動物の肉食化

草食動物の肉食化ならなんとかなると思います。
仕事上での成功体験を通じて欲求の復活、欲求の実現手段に対する信頼回復、安易な自己正当化の否定を経験させればいいと思います。(言うは易し、ですが。)
ただ、採用前の人材に対しては、やはり大学がキャリア教育等を施さなければならず、企業のアプローチによる肉食化は難しいのではないでしょうか。


「ロウアーミドルの衝撃」のレビューでも書きましたが、昨今世論リアクションに時々違和感を感じます。
例えば、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が提起した「IT利活用の強制」論や楽天の英語社内公用語化について。
どちらも不慣れな人にとってはしんどいかもしれないけど、それを乗り越えなければより一層厳しい現実に直面するのも自明。
ただそれにすら「IT使えない人はそれでいいじゃん」とか「英語使えない人はそれでいいじゃん」的な言論が少なからず散見されるのは、やはり国民のある部分が「無欲求化」つまり「草食化」しているからではないでしょうか。

欲求のある人はがんばります。
だってお金欲しいしおいしいもの食べたいし異性にモテたいし。
漫然と待っていてもそれが得られないことも知っているから、欲しいモノを得るために頑張ります。
一方で、欲求のない人は自ら得ようとしません。さらに現状維持を標榜します。
しかしながら黙っていても与えられそうな「現状」ですら変化の激しい現代社会においては「獲得しなければならないもの」だったりします。
その意味では、変化を頑なに拒否して「現状」を維持しようとする行為は実に矛盾を孕んだ行為に思えます。

勝間和代とひろゆきの対談ではその「幸福観」に関する大きな隔たりが露見しました。
前者は「自己実現が即ち幸福」という考え、後者は「自分が幸せだと思えば金がなくても職がなくても幸福」という考え。
僕個人としては自己実現の道を歩みたいと思っているけど、「幸福観」についてはひろゆき氏に賛成。
なぜなら幸福とは自分で規定するものだから。
しかしその幸福がどのような形のものであれ、決して与えられるものではない。
ひろゆき氏でさえ、幸福が他人から与えられるものだとは思っていないはず。

その意味では、やはり「草食」的思想を持つ人口の増加は民主主義体制を採る日本においてちょっと恐ろしいなーと思います。


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