35歳からの「脱・頑張り」仕事術 (山本 真司)

35歳からの「脱・頑張り」仕事術 (山本 真司)


僕は山本真司氏の著作が好きです。
これまで「20代 仕事筋の鍛え方」や「30歳からの成長戦略」、「会社を変える戦略」を読みましたが、どの著作も非常に勉強になるだけでなく、どこか心を揺さぶられる感覚を感じます。
本書も、やはりそうでした。
なぜか。
戦略コンサルタントとして図抜けた経歴の持ち主である著者が書く指南書はともすると「華やかな経歴を持つ一流経営コンサルタントが上から目線で語るノウハウ集」に成り下がり、いっちょ前にプライドだけは高い僕みたいな人間はヘンなコンプレックスがむくむくと頭をもたげ「何言ってやがるんだい、それができりゃこちとら苦労しないんだよっ」とばかりに耳を塞いでしまいそうですが、どうもそうはならない。
なぜか。

もちろん「コンテンツがいい」ということも、その理由の一つとして挙げられると思います。
例えば本書に書かれている仮説思考のやり方。著者は、「仮説思考の極意とは『経験者に聞きまくること』」と言っています。
内田和成さんの著書「仮説思考」等で「仮説思考」の何たるか、またその重要性は理解していましたが、しかし僕にとってイマイチ合点のいかない部分がありました。

「釣りをしている。しかしなかなか釣れない。とすると、『ここだったら釣れるのではないか?』というポイントに「当たり」を付けて釣り場を変えてみる。すると釣れたりする。この「ここなら釣れるのではないか?」という考え方が仮説思考。」

この内田さんの説明はよくわかるのですが、僕にわからなかったのは「どのようにその仮説が導出されたのか?」「どうすれば精度の高い仮説を導出できるのか?」という点でした。そして僕が思ったのは、「要するに仮説思考は『経験のなせるワザ』ではないか?未経験ではムリなんじゃないか?」ということ。
著者はこの僕の考えを肯定する立場。「経験のない分野はわからん。わかる人に聞きまくれ。」
経営書に書いてあるロジックツリーなどは役に立たない。事後的に整理するにはいいかもしれないが、未知の世界の事象をロジックツリーで網羅することなんて不可能。一流の経営コンサルタントのこの言葉は、僕にとっては大きな発見でした。

このように、本書を含めそれぞれの著作に書かれているノウハウやワザはどれも非常に有意義で勉強になります。
でもただそれだけで「心が揺さぶられる」ものでしょうか。「この本で学んだことをおれも明日から実践してみるぞ!」という気持ちになるものでしょうか。

この「心を揺さぶる何か」、その正体が本書を読むことでようやくわかった気がします。

唐突に関係ない話をするようで恐縮ですが、僕の就職活動は散々でした。
所謂就職氷河期の就職活動でしたが、「そんなものおれには関係ない、おれは自分が望む会社から内定をいくつももらえるだろう」と思っていました。
そんな根拠のない驕りのせいで面接の準備はロクにせず、驕りがあるのに面接では緊張しまくる。
結果は散々でした。
ようやく1社だけから内定をもらうことができたため、渋々その会社に就職することにしました。(今はもちろん拾ってくださったことを今の会社に感謝してますよ!)

入社してからは半ばずっとスネていました。
「なんでおれはこんな会社に。早く転職しよう。」
こんなことばかり考えていました。
そんな僕が転職活動を機に己のアタマの空っぽっぷりを思い知ったのはこちらのエントリーでご紹介した通り。これをきっかけに、僕はようやく自分のアタマで考えるようになりました。
自分のアタマで物を考えるようになると、次第になぜ自分が就職活動に失敗したのか、その理由が朧げながら見えてくる部分がありました。また、この頃から勤務先でリクルーターとして採用活動に積極的に関わり、半ば面接官のような立場(人事権は全くないのですが)を経験したことで、一層学生時代の自分のダメさがわかってきました。もちろん「どうダメだったか」だけでなく、「じゃあどうしたらよかったか」ということも。
ここで当然こう思う。

「ああ!今この瞬間タイムマシーンに飛び乗り当時の自分にアドバイスできたらどんなにいいか!」

ようやく見えてきたこと。当時の自分には見えなかったこと。何がダメでどうしたらいいのか。数年掛けて見えてきた自分自身のことや世間のこと、ようやくわかってきたことを当時のなんもわかってない自分に教えてやりたい。
しかし当然それは不可能。口惜しい。

そんな腹の底に渦巻く口惜しさを抱えた僕にとって、その「捌け口」は自分がリクルーターとして相対する学生でした。別に彼らのことを愛しているわけじゃない。自分の会社を熱烈に宣伝したいわけでもない。ただ学生たちに当時の自分を重ね、自分の身悶えるような恥ずかしいような思い出を浄化したい。自分が理解したこと掴んだことがほんのちょっとでも正しいってことを証明したい。それによって当時の愚かな自分から少しでも脱却できていること前に進めていることを感じたい。
そんな気持ちで僕に見えてきたもの、掴んできたものを学生の方々に伝えてきました。
幸いなことに、学生さん達のリアクションはとてもよかった。ある一人の学生さんがアンケートに書いてきてくれた言葉は下図のようなもの。これ、半ば冗談っぽいですが、嬉しかったです。
彼らの就職活動や人生に実際どの程度寄与できたかはわかりませんが、こんなお礼を何回か頂きました。そんなリアクションを目の当たりにするにつけ、「当時の自分にもきっと有意義なアドバイスができたんだろうな」と思うことができました。この体験によって僕の身悶える思い出は浄化されていく。心の整理ができていく。

著者の文章からもこれと同じような思いが滲み出ている気がするのです。
過去の自分に対する恥ずかしさ、無念さ、その一方で同情するような感情。ちょっとしたコツを掴んでないが故に闇雲に足掻いている至らぬ自分への同情。恐らく、筆者が一番に本書を読んで欲しいと思っているのは「史上最凶マネージャー」と呼ばれた過去の自分に違いありません。しかし当時の自分はもういない。このためそのキモチの矛先は当時の自分に近い存在、つまり数の少ない若年層にも頼れず、数の多い上の世代に押しつぶされそうになっているミドルに向く。

これは著者の徹底的な「自己愛」の本なのではないか。利己的な筆者の自分自身の愛情を、過去の自分を勝手に読者に重ねながら読者に注ぐ。自分を重ねた読者には深く共感できるし、有意義なアドバイスができる。そして利己的な自己愛故、そのアドバイスには偽りがない。そのせいか、読者は素直に彼の言葉に耳を傾け、共感し、心を揺さぶられるのではないか。文章の端々から、そんな筆者の思い、真実を感じ取るのではないか。そしてこのような読者という分身からのフィードバックによって、彼の忌まわしい記憶は浄化されていくのではないか。
もしかしたらこんな感覚を持つのは僕だけかもしれませんが、でも少なくとも僕はそう感じました。

と、本書の内容にまるで関係ないことばかりを書き連ねましたが、本書はまさに少ない部下と共に高い成果を発揮することを求められているミドル層に有益なアドバイスが沢山詰まっています。特になかなかOJTでしか学ぶことのできない「評価の仕方」や「オーナーシップ意識の持たせ方」は貴重な示唆。
現在部下を抱えている方、これから部下を持つ立場になる方、「部下なんていたことないけど、もういい年齢だしそろそろそういうスキルも磨いといた方がいいんじゃ……?」という方にはオススメの一冊です。
ちなみに、「20代 仕事筋の鍛え方」や「30歳からの成長戦略」など彼の他の著作も非常にオススメです!

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