東南アジア諸国比較。


僕はこれまで公私問わずほとんど海外に行ったことがありませんでした。 行ったことがあったのは大学の卒業旅行で行ったマイアミのみ。参加したWinter Music Confferenceはメチャクチャ楽しかったですが、このフェスのためだけに行ったので食事はバーガーキングかマクドナルド、行き先はクラブのみ、ということで街を観察する余裕も興味も特になく。
そんな僕が次に海の外に出たのはそれから約10年後、今から1年前に出張でジャカルタに行った時です。その後、4月頃から本格的にジャカルタを拠点に仕事をし始めてから、幸いなことにインドネシア以外にもいろんな国に行く機会を頂けました。ついこの間までは「東南アジア」と言えば「なんだかちょっと暑くてちょっと貧しくてちょっと浅黒い人がいっぱいいる国ばかり」程度の認識しかありませんでしたが、ここ数ヶ月の間にいくつかの国に行く中で、一口に「東南アジア」と言ってもその経済の発展度、文化、風習などがまるで違うことにようやく気づいたので、ここでちょっとそれをまとめてみたいと思います。

現在滞在中のジャカルタを含め、この3ヶ月くらいの間に訪問した国、都市は下記の3ヶ国です。

  1. シンガポール / シンガポール
  2. ベトナム / ホーチミン
  3. マレーシア / クアラルンプール
  4. インドネシア / ジャカルタ
  1. シンガポール / シンガポール
    言わずとしれた東南アジア最強の都市国家。 一人当たりGDPは50,000USDを超え(ちなみに日本は35,000USD前後)、先日発表された電子国家レベルでは世界第三位。リー・クアンユー時代は開発独裁などと言われながらもあらゆる分野との整合性を取りながら全体最適を図る合理的な政策は、政治に期待できない状況の日本に比べるまでもないレベル。

    インフラも全ての面で高レベル。東南アジアではまだまだ当たり前ではない公共交通機関が充実しており、安全な地下鉄に乗ってどこにでもいけるというのは東南アジアの中でもシンガポールぐらいではないでしょうか。この地下鉄の充実が道路交通網の快適さにも寄与しています。(多くの国は鉄道等がないため移動手段を車、バイクに頼るしかなく、深刻な交通渋滞が社会問題の一つになっています。)また今や世界のハブ空港たるチャンギ空港の快適さにもやはり驚かされます。

    電子国家レベル世界第三位というだけあってインターネットも充実です。その速さもさることながら政府が提供する無料のWiFiスポットが国内のほぼ全域を網羅しており、そのため海外からのスマートフォンユーザはわざわざ国際ローミングをしたりローカルSIMカードを買う必要すらないかもしれません。
    ただ難点は物価の高さ。この辺は日本と同じかもしれませんが、他の東南アジア諸国に比べるとやっぱり食事をするにしても高いです。

    とにかくキレイで便利で娯楽もビジネスもなんでもあるシンガポール、ここだけはAPAC地域の中でもちょっと異質な国です。

  2. ベトナム / ホーチミン
    次に訪れたのはかつでのベトナムの首都、ホーチミン。政治体制は社会主義ですが街中をフラフラしている限りではそんな政治体制の違いなんて全く気にならない、というかわからないくらい普通に栄えています。確かKFCもあったし。ただ都市の雰囲気はジャカルタと同じような雰囲気。道路の舗装もボロボロなところが多く、またジャカルタ以上にバイクの量が多い。ホンダのスクーターに父母子供2人の計4人で乗るなんてザラ。ベトナムの一人当たりGDPはまだ3,000USD以下ですが、このくらいの発展段階の国の特徴の一つは、みんなゴミをその辺に捨てるということが挙げられます。モラルの問題なのか、貧困層が多いためにそういう仕事に従事する人が少ないせいかはわかりませんが、とにかく街は一部を除いて汚い。

    インフラもまだまだ改善の余地ありです。移動手段が車かバイクしかなく、まだまだ多くの国民は自動車を買えるほど経済力がないので必然的にバイクの量が増える。で、渋滞がヒドくなる。一方でインターネットの速さには目を見張るものがありました。ベトナムにはインドネシア人スタッフを連れていったのですが、「おお!Youtubeがまるでテレビのようだ!」と驚いていました。Youtubeが途中で止まることなく再生できたのは初めての経験だったようです。シンガポールほどではないにせよ、街中のWiFiスポットも多く、安いホテルでもWiFiは無料で提供されます。

    物価は相当に安め。タクシー初乗りは10,000VND程度、つまり40円程度。ジャカルタが50円程度なのでジャカルタより安いです。ビールも一杯100円程度、レストランで飲んでこのくらいなのでスーパー等で買えばもっと安いはず。食事もちょっとローカルめなレストランに入ってビール飲んで何品か頼んで1人5、600円くらい。安い。あ、ちなみにこれまで食べた中でベトナム料理が一番ウマかったです。他の国は辛すぎたりしょっぱすぎたり高過ぎたりしますが、ベトナムは味付けが日本での食事にとても似ており、また低価格で食べられるおいしい生春巻きは生春狂いの僕にとっては天国のようでした。

    隣の芝生が青く見えるだけかもしれませんが、ベトナムはGDP3,000USD前後の国の中では相当気に入った国の一つです。

  3. マレーシア / クアラルンプール
    正直ナメてました。「マレーシア?まあ発展してるのかもしれないけど他の国に毛が生えた程度だろ?」大間違いです。 シンガポールや日本にはまだまだ及ばないものの、一人当たりGDPが15,000USD近くあり、インドネシアやベトナムの約5倍です。インドネシアの中でもジャカルタに限れば一人当たりGDPが7,000USDくらいあると言われていますが、それでもまだマレーシアの半分。完全に都会です。

    このくらいの国になるとやはり鉄道網がある。空港からクアラルンプール中心部までは専用の高速鉄道が通っているし、街中にも地下鉄が通っています。やはり鉄道(長距離鉄道ではなく短距離鉄道)の有無は都市の発展度を図る一つのバロメーターのようです。このため道路上もカオスになってない。車の数は適量で流れもスムーズ。インドネシアやベトナムでよく見られる「街中になんとなく座ってる人」みたいなのはいません。そのため治安もいい。

    ただインターネットの状況はベトナムほどよくなかったように思います。街中にフリーのWiFiスポットはあるものの、登録が結構面倒だったりする。ホテルでもインターネットの利用は課金されました。ベトナムの安いホテルはフリー、インドネシアでもそこそこのホテルでは無料で提供しているのに、マレーシアのそこそこのホテルで課金されたのはちょっと驚きです。

    そして物価が高い。スタバのコーヒーが可愛く思えてきます。 まず空港からクアラルンプール中心部に行く鉄道が35MYR、日本円で約800円超。800円あったらインドネシアやベトナムでは5、6回食事できます。タクシーも大体1,000円を超える。つまり物価の面でもクアラルンプールは十分都会でした。

    ちなみにマレーシアはマレー人が人口の65%を占めており公用語はマレーシア語、このマレーシア語は同じマレー語系であるインドネシア語との互換性が高く、そのため空港や街中での標識等は見慣れた言葉が多くてなんとなく安心感がありました。が、用法等は結構異なっており、一応何を言ってるか通じるものの「変な表現すんなコイツ」的な目で見られます。その一方で、中華系やインド系など他の民族も多く、このためオフィスでは日常会話であっても英語で行われます。この辺はシンガポールと似ている状況ですね。

  4. インドネシア / ジャカルタ
    最後に我らがジャカルタです。僕個人が隣の芝生を青く見てしまう人間というのも影響しているかもしれませんが、少々控えめな評価になりそうですが。インドネシアは今Asia Pacific地域で最も経済的にホットな地域です。新規参入企業数は日系に限っただけでもここ2年くらいの1ヶ月の参入企業数が数年前の1年間の参入企業数と同じになるくらい多くの企業が進出してきている。それはそれだけビジネスチャンスがあるということであり、それはそれだけ雇用の受け皿が提供されるということであり。本当に他の東南アジア諸国と比べても驚くくらい成長しています。

    その一方で顕著なのが社会インフラの脆弱さ。水道電気ガスの安定供給も危うい上に、交通インフラの脆弱さは本当に深刻な社会問題になっています。経済が発展し雇用が増え給与水準が上昇する中、自動車やバイクの売り上げは物凄い勢いで延びている。某二輪メーカーもインドネシアでの経営数値は常に異常値だそうです。その一方で、それらの受け皿たる道路の許容量は変わらない。数年以内には自動車やバイクの数が道路の許容量を完全に上回り、デッドロックになると言われています。ジャカルタ市内には交通信号がほとんどなく、そのため右折(インドネシアは日本と同じ左側通行です)ができません。右折するにはずーっと向こうまで行ってUターンして戻ってきて左折するしかない。ここで交通信号を設置するには相当大規模な道路工事をする必要がある。その前に地下鉄等を建設し交通量を減らしてから各幹線道路で大規模工事を実施して……ということが必要になりますが、果たしてこれに何年かかるのか。先日某商社の部長さんとお話ししたところ、地下鉄の話は彼が新入社員の頃からあったそうです。つまり2、30年進んでいない。うーん。

    一方でジャカルタは完全な車社会です。これまでに紹介した3つの都市との最大の違いは「街中を歩けない」こと。歩道の整備状況、治安等の問題もありますが、車社会であるが故にジャカルタは厳密には街ではありません。ビルやショッピングモールの集合体です。ビルやショッピングモールの中には色々な店舗やレストラン、オフィスが入っている。しかしそこから出ると何もない。次は車に乗ってまた別のビルやモールに行くしかありません。このため路面店がない。そのためまた歩く必要がなくなる。厳密には路面店はありますが、それらは完全に現地の人々だけの世界です。よほど語学は世俗に通じているか、バックパッカーのような人以外はその世界に入って行くのは色々な困難がある。

    インターネットの状況も他の国に比べるとまだまだ弱い。幸いBlackBerryの爆発的な普及により携帯電話通信網は幅広く、安く提供されていますが、その回線品質はまだまだ低い。そして固定回線は絶望的。最近価格が下がってきたものの、月額5,000円程度では個人の家庭に1Mbps程度の回線しか引くことができません。そしてこの回線も実効速度は0.5Mbps程度。つまりYoutubeがテレビのように見られない。3Mbps程度の契約をしようとすると月額30,000円くらいかかります。インターネットなしには生きていけない僕にとって、WiMAXもしくはLTE等の高速無線ネットワークの普及は一日でも早く普及して欲しい。

    また最近よく思うのですが、ジャカルタはとても画一的な都市です。「都市」ではあるのでショッピングモールには各国のレストランがあるしブランド物も買える。クラブだってある。しかしどこに行ってもサービスの内容が変わらない。どこのレストランに行ってもほとんど同じ値段でほとんど同じ味。決して不味くはない。でも決してウマくもない。クラブもそう。どこのクラブに行っても決してDJは下手ではない。でも決して上手くもない。「この店はこういう特徴がある」「この店はこういうところがいい」という個性がないので飽きるのにあまり時間がかかりません。

    しかし、そうであるからこそビジネスチャンスはたくさんある。シェフにしてもDJにしてもチャンスがいっぱいある。言葉も覚えやすいし気候も穏やかだし人々の性格はすこぶるよい。 なんだかんだ文句言いつつ、結局僕はジャカルタが大好きだったりします。

まだまだ4ヶ国程度しか行ったことがありませんが、それでも各国の違いに驚いてばかりの今日この頃です。できれば数日間の出張ではなくもうちょっと色々経験する時間の余裕があればいいんですがねえ。


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