自分のアタマで考えよう (ちきりん)

自分のアタマで考えよう (ちきりん)


海外に赴任する前に経験者から言われたことがありました。
「まるで真っ暗闇の深海の中でどっちが水面かもわからずにもがいているような気分だよ」
今はまさにそんな感じかも。もがけどもがけど光は見えてこないし空気も吸えない。前に進んでいる感覚がない。
もう一つ、自分の仕事を振り返ると「メールをクレー射撃のように撃ち落としている」ようにも感じます。次から次に打ち上げられるクレーをもはや脊髄反射で撃ち落として行く。残るのはクレーの破片だけ。これに追い打ちをかけるように、なんだか最近どんどんアタマがわるくなっているような気がする。まともにモノを考えられない。考えたところで捻り出すアウトプットの質がどんどん落ちてきている。
そんな中、ロクに考えもせずに海中でもがき続け、クレーを撃ち落とし続ける。進捗したのか、進歩したのかもわからず帰宅し、ベッドに倒れ込み、眠い目をこすりながら再び海中のクレー射撃場へ……。

さて、本書は人気ブロガーであるちきりんさんの書いた思考法に関する本です。彼女のブログエントリーもいつも非常に興味深く、また当ブログでもレビューした前著「ゆるく考えよう」は「自分流シアワセの掴み方」ともいうべき内容でとても面白かったです。
普段のおちゃらけ具合からはなかなか想像がつかないですが、著者は米国大学院で学び外資系企業で働いたいわゆるそれ系の人。まあ「米国大学院」と言ってもピンキリだし「外資系企業」もピンキリだけど、なんとなくウォートンとかシカゴとかのMBAを卒業してメリル・リンチとかモルガン・スタンレーとかで働いてたってイメージを勝手に抱いています(笑。つまりこの想像が概ね正しければ、論理的思考についてきっちり学んできっちり実践したバックグラウンドをお持ちと思われます。
思考法について著した本としては、先日レビューした波頭亮の「思考・論理・分析」や他の名著とほぼ同じ内容です。ただ特筆すべきはおそらくターゲットを「『外資コンサル的』言葉遣いや手法にアレルギーを感じる人」を対象にしていること。その意味では「世界一やさしい問題解決の授業」あたりとターゲットは同じかもしれません。要するに「ロジックツリー」とか「MECE」とか「バリューチェーン」とかそんな「コンサル的」表現を一切使うことなく(別にもはやコンサル特有の手法でもないですが)、これらの概念を解説しています。そしてそれらを説明する際の事例もプロ野球から少子化、都知事選、婚活などワイドショーが好きな層もエンジョイできるケースをチョイス。これらの解説は平易すぎるほど平易でありながらも、決して本質を疎かにしていない。秀逸な内容です。

結局のところ本書のメッセージは、「『考えている』と言いつつ他人の思考結果を借りて『考えているフリ』をするのではなく、自分で思考して示唆を捻り出せ」ということ。この意味では「自分の幸せは何か自分で考えろ」と主張した前著と根底に流れる主張は一貫しています。

さて、実は僕は「そんなことはわかってるしオレは既に自分のアタマで考えている!」と思っていました。ロジカルシンキングの手法についてはこれまで何冊も本を読んでいるし、「ロジカルシンキングという手法自体は容れ物であってその中に入れるメッセージは自分で考えねばならない」ということはこのエントリーをはじめとして当ブログでも何度か述べてきました。
が、本書を読んで気づいたのはそれが最近まるっきりできていなかったということ。

本来右も左も分からない深海の中で、さらに次から次にクレーが飛んでくるクレーの中でまず最初にするべきことは、無理矢理にでも時間を作って自分のアタマである程度の筋道を考え出すこと。それをしてこそ深海の中にも光を見出せるし、クレーの量にも動じず捌くことができる。それなのに僕は暗闇に怯え、クレーの量に愕然とするあまり、思考を放棄し、本に正解を求め、ただその苦境を切り抜けようとしている。
おそらくこのやり方でも苦境は乗り切れる。僕の赴任期間は有限なので、時間が経てばまた東京のどこかの部署に戻り、今よりは落ち着いた環境に身を置けるので。
でもそれでは自分がどっちにどれだけ進んだのかもわからず、ただただ目の前に散らばったクレーの破片を見て「結構数は撃ったよな」なんて思って自分を慰めるのが関の山。その一方で失うのは貴重な成長の機会、得るのは退化した脳ミソ。

なんとか他人の思考結果を借りようと必死に本を読み漁った結果待ち受けているのはおそらくこんな結末。本書はそんな僕に「そんなんじゃダメだよ!」と教えてくれた本でした。
さてと、なんとか時間作らないとな……。

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