物価の違い。

物価の違い。


2年半の海外赴任から日本に帰って3ヶ月と少し経ちました。
赴任先はインドネシアだったのですが、日本に帰ってきてから友人などに「インドネシアに住んでいた」ということを言うとよく「あっちは物価が安いでしょ!」と言われます。こう言われると、大体返答に困ります。物価が安いかどうかは結構モノによるからです。

実は、インドネシアでは、何もかもが日本より安いわけではありません。安いものは安いですし、同じくらいのもののもありますし、日本で買う方が安いものもあります。
ざっくり分類すると、下記のようになると思います。

  1. 日本で買う方が高い物/サービス
    • タクシー
    • 散髪
    • メイド
    • 家電

    タクシーは初乗り約70円、散髪はかなり高級な美容室で高くてもカット2,000円で安いところだと100円ほど、メイドは住み込みで働いてもらっても月2万円から3万円、通いだと5,000円程度もあり得る。これらのプライスレンジは大体日本の1/10前後の値段という感じです。

  2. 日本でもインドネシアでも価格が変わらない物/サービス
    • マクドナルドのハンバーガー
    • スターバックスのコーヒー
    • ユニクロの服

    多少経済水準に伴う調整はあるものの、マクドナルドのハンバーガーは100円前後でビックマックは200円〜300円前後、スタバのコーヒーは300円から400円しますし、ユニクロの服もほぼ日本と同じくらいの価格です。

  3. 日本で買った方が安い物/サービス
    • 高級ブランドの服や時計
    • 乗用車
    • 電化製品

    高級ブランドの服は日本で買うよりも数十%高い印象です。高級ブランドの腕時計はインドネシアで買うと日本の2倍くらいの値段になります。乗用車は日産マーチが確か300万円ほどと聞きました。電化製品も高い印象です。

というわけで、東南アジア諸国などの新興国で、全ての価格が必ずしも日本より安いわけではないということがおわかり頂けたと思います。
ではどういうものが日本より安く、どういうものが日本より高いのか。また日本で暮らすよりも生活費が安いのか高いのか、ちょっと考えてみたいと思います。

まず、日本よりも価格が高くなるのは、輸入品、贅沢品です。高値の理由は税金で、インドネシアでは輸入品には関税が、贅沢品には奢侈税がかかります。この国では徴税率がまだ低く、全個人の10%程度、全法人の5%程度しか納税者番号を持っていないと言われます。このため、「取れるところから取る」が基本ポリシーで個人所得税の累進性もかなり高いものとなっています。「高級な輸入品を好む人買う人はほぼ例外なく金持ちである」という文脈から、これらの税率は高くなっており、それが購買価格にも添加されています。

一方、日本よりも価格が安くなるのは現地で生産されている製品、もしくは原価の大半が労務費で構成されているサービスです。目下経済成長中とはいえ、まだインドネシアの賃金水準は日本に比べて非常に低く、首都であるジャカルタであっても最低賃金は2013年時点でまだ月額3万円に達していません。このため、労働力は非常に安い。例に挙げたタクシーや美容室、メイドなどは人件費がサービスの主要な部分を占めているため、最終価格も安くなります。なお、メイドが安く雇えるため、日本で売れているような高級家電はインドネシアではあまり売られていません。日本では「ルンバ」「食洗機」「全自動洗濯乾燥機」が家電における「新三種の神器」と言われます。それは家事をフルアウトソースして日本人の効果な労働力を節約できるからですが、インドネシアではルンバや食洗機を買うよりはメイドを雇った方が圧倒的に安いです。

日本と価格が同程度になるのは、グローバルブランドの低価格な消費財です。マクドナルドやユニクロ、ZARAなどはどこの国に行っても基本的にはあまり値段が変わりません。ただ、この辺りはそれぞれのプロダクトによって「行政の方針」「ブランドの戦略」「現調率」等々様々な要素がプライシングに影響していると思います。例えば、当該製品を奢侈品と見なして課税するかどうかは行政の方針次第です。また、その税金分を最終価格に反映させるかどうかはブランド側の戦略によると思います。税金分コストアップになっているが、最終価格には反映させない、という経営判断もあるはずです。また、現調率の高低は関税の額に影響します。少なくともユニクロの製品が日本と同程度の価格で、無印良品の製品が日本のそれよりも高いのは、現調率に伴う課税額が影響していると思います。そんな色々な要素がありつつも、このあたりのグローバルブランドの製品の価格はどこの国でも大体同じような価格帯に収斂しています。

上記の理由から、普通の日常生活を営むためのコストは日本よりも少なくなりそう、ということが言えそうです。
ただ最終的に生活コストに影響するのは、どの生活レベルに合わせて生きるか、という選択だったりします。日本では貧富の差があまりないため、提供される財・サービスにもあまりバラツキがありません。「めちゃくちゃ汚くてもいいから10円で食べられるご飯屋」なんてないですし、「みすぼらしくてもいいから50円で買える服屋」もあまり見かけません。安い食事はせいぜい吉野家とかマクドナルドレベル、安い服屋はせいぜいユニクロやしまむら、イトーヨーカドーレベルです。一方、インドネシアをはじめとする東南アジア諸国は貧富の差が大きいので、貧しい人々の経済圏と裕福な人々の経済圏があります。最近はこれらに加えて中間層の経済圏が新たに形成されてきました。貧しい人々の経済圏では、家賃は月1万円くらい、食費は1食数十円から100円程度なんていう世界もあります。一方、裕福な人々の世界では家賃は月10〜20万円以上、食費は1食1,000円です。インパクトが大きいのが家賃で、どういう家に住むかによって1ヶ月あたりの生活コストは大きく変わる。しかしそれは、どういう生活レベルで生きるか、という選択にほかなりません。
同様に、現地で生活するとなると現地で仕事を探さねばなりませんが、日本の会社から駐在員として派遣されるのではなく、現地で直接雇用されるような場合だと、やはり給与水準はある程度現地の水準を考慮されつつ決められることになります。少なくとも手取りの額は日本でもらっていた時よりも少なくなるでしょう。

以上を考慮すると、新興国では一部の物価が安いのは事実ですが、必ずしもそれが「楽して暮らせる」ということを意味するわけではないようです。

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