現場で実践!若手を育てる47のテクニック (田中 淳子)

現場で実践!若手を育てる47のテクニック (田中 淳子)

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最近の自分の能力開発テーマに「チームマネジメント」があります。実を言うと、現時点で僕には部下もいませんし、マネージするチームもないのですが。それでもこの分野の勉強をしようと思う理由には、このエントリー(「何を得たか。」)に書いた通り海外駐在の間にうまく能力開発できなかったこと、そして「自分の年齢に応じた市場価値」を獲得したいこと、があります。

そもそも巷でよく言われる「人材の市場価値」とはどういうことでしょうか。会社の幹部講話や先輩の説教の中で「市場価値を意識しないと」と言われたことのある、または言ったことのある人は少なくないと思いますが、それが具体的にどういう作業なのか、きちんと説明できる人はあまり多くないのではないかと思います。

自分の市場価値を確認する作業は、マーケティングのそれと同じです。それは主に下記の3ステップで構成されると思います。

  1. ターゲットとする市場を定義する
  2. 市場のニーズを知る
  3. 自分がどの水準にあるか知る
  1. ターゲットとする市場を定義する
    まずは広大な人材市場のどのセグメントを狙うか、明らかにする必要があります。基本的に人材市場は「業種 x 職種 and/or ポジション」というマトリクスで分けられると思いますが、そのマトリクスの中のどのセグメントを狙うのか、というのがこの作業です。もちろん「業種」「職種」以外の別の軸で市場を切ってみてもいいですし、新たな市場を作ることもできると思います。いずれにせよ、「営業」として生きていこうと思っている中で「北海道の農家からすごい引き合いがあった」としてもあまり「市場価値がある」とは言えないかもしれないので、ターゲットとする市場を明らかにすることが大切だと思います。
  2. 市場のニーズを知る
    ターゲットとする市場が明らかになったら、次にその市場のニーズを把握します。人材市場の場合、基本的に市場のニーズはジョブディスクリプション等で明らかになっています。そこには、どういった仕事に就いてもらいたいか書かれていると同時に、年齢や学歴、語学の能力やどういった経験を積んできたか、などの応募条件が書かれています。上記の農家の例で言えば「長期間住み込みでフルタイムで働ける方」とか「農学部の学位があり酪農に関して基本的な知識を備えていること」なんてことが書いてあるかもしれません。この理解が誤っていると、「すごい引き合いが来た」としても実はそれは自分が売りにしたい「営業スキル」ではなくただ「体力」が評価されただけ、なんていう誤解が生まれてしまいます。
  3. 自分がどの水準にあるか知る
    ジョブディスクリプションでどういう能力やスキル、経験が求められているか、その指標を知ることができました。あとはその各能力指標について、自分がどの水準にいるのかを確認します。しかし、資格などで定量化できる分野は評価がしやすいのですが、その他は中々客観的に評価することができません。そのため、定量化しにくい部分は実際に動いてみて、その感触で測って行くしかないと思います。転職サービス等に登録してみてどの程度企業や転職エージェントから声がかかるか見てみる、転職エージェントに会ってみてそのリアクションや気合いを見てみる、実際に求人に応募してみる、などの方法です。

上記の作業で、概ね自分の市場価値=市場におけるポジションを窺い知ることができるのではないでしょうか。

さて、このプロセスの中で問題になるのは「自分のターゲット市場は、自分の自由意志だけでは選べない」という点です。上記のステップの中で「市場のニーズはジョブディスクリプションで確認できる」と書きましたが、ジョブディスクリプションに書かれた応募条件の中で唯一自分がコントロールできない項目が「年齢」です。
会社を学校に例えると、進学の速さは学校によって様々ですが、概ねどの学年でどの程度の成果を出せるか、という指標のようなものは多くの学校の間で共通してあると思います。小学一年生に因数分解は期待されませんし、一方で小学六年生ではある程度の漢字の読み書きができることはどの学校でも期待されます。会社において新入社員に期待されること、30代に期待されること、40代50代に期待されることも、人材市場ではある程度共通しているように思います。つまり、望む望まないに関わらず、自分の年齢によって市場から期待されることはある程度決まってくる。

一方で、「学習の速さ」「カリキュラムの進行度」は学校によって異なります。「現在通っている学校の学習の速さ」と「他の多くの学校の学習の速さ」が同じであればあまり問題ではありませんが、これが違う場合、特に現在通っている学校のカリキュラムが他校よりも遅めの場合、大変です。例えば、他校では小学校二年生で学習することを、自社では小学校三年生に教えていたとしたら。転校する際に一学年下に編入できればいいですが、その学校にとってその生徒を採用するインセンティブはありません。市場で期待される市場価値を得るためには、独学で身につけるしかありません。

さて、30代半ばという僕のような年代の人材に市場が求めるものは何か。
これについては、海外赴任時代の上司が言っていたことが今でも印象に残っています。曰く、「20代ではプレイヤーとして成果を出す。30代ではチームを率いる立場として、40代では組織を率いる立場として、50代では会社を率いる立場として成果を出せないと、市場では売れない。」50歳になろうとしていた彼は、この考えに基づき、子会社であっても「社長」という会社を率いることができるポジションに手を挙げたそうです。
僕が社内外の「カリキュラムの進行度」に違いがあることを知ったのは30歳手前の頃でした。その前から当然頭ではわかっていましたが、目の当たりにしたのはこの頃です。この時感覚として得た年代ごとに市場から求められる能力も、上述した上司の感覚と似たようなものでした。それは、それまでの僕の感覚からは5年程度乖離していたため、僕自身は「自分は売れる能力を持っている」と信じていたのとは裏腹に、その賞味期限は5年前に切れていました。

書評のふりをしながら本書の説明をするのがすっかり遅くなってしまいました。本書は、上記のような悩みを抱えつつ受けた研修でもらったもの。その研修自体は「チーム憲章を作る」とか「ラポールを築く」とか、まあ大切なんだろうけどあまり実践では役に立ちそうにない、そんな印象でした。そんな研修でもらった本なので、もらった直後は本書にもあまり期待していませんでしたが(失礼ながらタイトルもジャケットもイマイチですし)、ところがどっこい読んでみると本書の内容はとても詳細で実践的。当たり前のようなことも書いてありますが、それでも上司の目線や部下の目線など多様な角度から解説してあってとても勉強になりました。

現在の環境において、自分の努力でチームや部下を持つ、というのはなかなか一朝一夕にできるものではありません。しかしそれを言い訳にしていても、自分の市場価値は上がりません。今僕にできることは、一生懸命自習したり塾に行ったりすること。いつ何時そのポジションにアサインされても、きっちりパフォーマンスを発揮できるよう準備しておくこと。そんなわけで、僕は今日も本書を読んで脳内の部下とコミュニケーションの練習(妄想)に勤しんでいます。[amazonjs asin=”4822262790″ locale=”JP” title=”ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック”]

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