効果的なIT投資;飲食店の場合。

効果的なIT投資;飲食店の場合。

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もはや日々の生活、業務と切っても切り離せなくなっているITですが、その投資対効果とか意義というものは、空気や健康のありがたさみたいなもので意識しないとなかなか感じることができないように思います。そんな中、先日職場の人と行った大手居酒屋チェーンで久々に意義が見えやすいIT投資の例を見かけたのでちょっとご紹介したいと思います。

そのお店で僕が感心したのは下記の2つでした。

  1. タッチパネルオーダーシステム
    最近大手居酒屋チェーンではよく見られるようになったタッチパネル式の注文システムです。このシステムが顧客にもたらす価値が、基本的に下記の2点。

    • オーダー処理の迅速化(注文からデリバリーまでのリードタイム短縮)
    • 注文履歴・注文金額の確認

    後者はそこまで大した機能ではありませんが(それでもないよりあった方がいい)、それよりも前者の価値は素晴らしかった。他店ではここまで感心しなかったので、この店がちゃんとこのシステムに合わせて現場オペレーションを最適化していたということでしょうか。
    そもそも居酒屋でのオーダー処理を分解すると下記のようになります。

    1. 店員を呼ぶ
    2. 注文を伝える
    3. 注文した商品がデリバリーされる

    タッチパネルオーダーシステムは上記のうち「店員を呼ぶ」「注文を伝える」プロセスを排除します。特に前者は「呼び出しボタン」実装によって改善されている店もありますが、基本的に時間がかかるプロセスです。これを排除することによってリードタイムはかなり短縮できる。且つスタッフにとっても「注文を聞きに行く」業務を排除できるので、それ以外の「商品デリバリー業務」「テーブル片付け業務」「来店客案内業務」等にフォーカスできます。
    ちなみにこの店では「あ、ビールお代わりしよ」と思ってから実際にビールがデリバリーされるまで体感で30秒〜1分でした。酔っている時の体感なので実際何秒だったかは定かではありませんが、それでもその場で実感するくらいデリバリーが早かった。
    このリードタイム短縮は店舗側にも売り上げという意味でポジティブなインパクトがあったと思います。リードタイム短縮のお陰で僕らのビール消費量は確実に増えていました。このオーダー数の増加は単純に店舗の売上増に繋がります。

  2. 予約コールセンター
    もう一つ感心したのは予約用のコールセンターでした。
    今回利用した店舗はランチ営業をしていないので、店舗の開店時間は17:00でした。このため、社員やスタッフの出勤時間は16:00頃。つまりそれ以前の予約の電話は店舗に誰もいないために受けられません。電話しても誰も出なければ、客は他の店舗に乗り換えるだけです。予約用のコールセンターはこの機会損失を解消します。
    面白いなと思ったのはこのコールセンターの対応時間でした。コールセンターは10:00から15:30まで対応し、それ以降は店舗で対応することになります。確かにコールセンターでの予約受付体制と店舗での体制を重複させる必要はないので、これは正しい設定だと思います。問題は窓口が時間外の時の対応、つまり「15:30前に店舗に電話した場合」15:30以降にコールセンターに電話した場合」、もしくはどちらも時間外の場合の対応ですが、ここも「営業時間外の店舗への電話はコールセンターへ転送」などの運用設計がなされているものと推察します。

こういったIT投資に感心する一方、意義がよくわからないIT投資も見かけました。

上述した居酒屋で飲んだ後にバーに行ったところ、そのバーでもオーダーシステムが導入されていました。上述の居酒屋と異なるのは下記の点。

  • システムは専用端末ではなくiPad touch + 専用iOSアプリ
  • 操作者は客ではなくバーテンダー

後者の特徴故に端末を全席に導入する必要がなくなり投資額の抑制にはなりますが、そもそもフロア面積50平米程度、客席数20程度の店舗でこのシステム導入は必要だったか。
少なくともデリバリー時間の短縮には繋がっていないし、客が操作する端末ではないので注文履歴等も確認できない。顧客側メリットはあまり確認できません。また、客が注文するお酒やカクテルが全て網羅的にこのシステムに登録されているわけではないので、イレギュラーな注文が入ると商品名や価格を入力する必要が生じ、むしろ時間がかかる。店舗側のメリットとして「売上集計の迅速化及び漏れ防止」といったものは考えられますが、後はこのメリットに対して投資額が見合うかどうか。
店長曰くこのiOSアプリの開発は外注したとのことなので、ソフトとハードを含めて投資額は少なくとも50万円程度にはなっていると思われます。この一方で売上集計の非効率さによる経済的損失はせいぜい店長の数時間分の労務費で、そんなものはサービス残業的にうやむやになっているはず。オーダーの漏れ防止は紙伝票運用の徹底でも対応できそうだし、その意味で50万円のIT投資を正当化する材料を見つけるのはなかなか難しそうです。

というわけで、効果的なIT投資はそれがもたらす価値を踏まえて設計し、またそれに合わせてオペレーションも構築していかなければならないんだなあと学んだ1日でした。

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