「堪える」マネジメント。

一般論として、会社の中で不正などが起きた場合、その是正措置として管理が厳しくなることが多いと思います。決裁権を上層部に集中させ、規則を新たに設け、その遵守を徹底させ、遵守状況を報告させる。
これは会社などだけでなく、社会一般で見られる現象と思います。ある学校で生徒の校則違反が見つかった場合、教師は生徒をより監視するようになり、校則を厳しくし、疑いのある行動を取り締まっていく。

ただ、問題を抑制するためによかれと思って講じた上記のような措置が、案外そういった問題発生に拍車を掛けることもあるように思います。

校則を厳しくしたが故に校則違反が増える。
鬱病の治療が進み薬の処方が普及したが故に鬱病の患者数が増える。
サービス残業を取り締まるため残業時間の監視を徹底するが故にサービス残業の検出数が増える。

こうして新たに検知された問題は、さらに管理や監視、ルールの厳格化を加速させ、より多くの問題を生み出すのではないか。その問題の多くは、監視が厳しくなる以前は問題とは扱われていなかったもの。どんどん「問題」の定義を拡張させ、問題発生数を増やし、その監視や管理に稼働を取られることになるのではないか。

ここでマネジメントに求められるのは、「堪える」ことではないかと思います。

ある高校の話です。
校内である大きな事件がありました。その事件は場合によっては犯罪と呼べるようなもので、普通の高校であれば、その事件の当事者たちは即刻退学処分になっていたと思います。そして校則を厳しくし、教員による生徒の監視を強めたでしょう。
ただその高校ではそれをやりませんでした。先生たちがしたのは、まず当事者たちと話し合うことでした。そしてその経過を逐次他の生徒に共有した。親に対する報告はひとまず保留にし、まずは当事者たちとの話し合いによって解決しようとしたそうです。
先生たちは、当事者たちを退学させ管理を厳しくすることで問題解決を図るのではなく、当事者たちと話し合い、退学させずに更正させる方向で問題を解決するよう努力しました。
対応策の大変さは、後者の方が圧倒的だと思います。前者も大変ですが、大義名分はある。しかし後者は、恐らく親や他の生徒からの批判に耐えつつ、時間を掛け、辛抱強く進める必要があったと思います。
でもその先生たちは「堪えた」。

管理することも大変ですが、それはあまり難しくありません。創造性や忍耐力を必要としないからです。しかし「堪える」ことは非常に難しい。
インドネシアにいたころの僕にはその忍耐力が不足していたように思います。問題が起きればルールを新たに作るか強化するかし、状況を報告させ、問題再発の抑制に躍起になりました。ただそれによって生産性を下げ、社員の士気を下げ、彼らの信頼感を失っていたのでは、と思います。

「堪える」ことはラクではありませんが、いいマネージャーになるために、僕も今後「堪える」ことを学んでいきたいです。


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