まぎれもなく僕の人生を変えた一冊。
これは誇張でも何でもなく、文字通りこの本は僕の生き方を変えた。
確かにこれはただのロジカルシンキング本で、新書なのでとてもコンパクト、さらに著者の名前は胡散臭い。
でも本当にこれを読んで、僕の目からウロコが落ちた。
本書は下記の一節から始まる。
この後に述べられる論理的思考の方法、論理的な文章の書き方も重要だが、それよりも何よりもこの一節を理解することが重要。
[quote]書くことは考えることだ。だから、書くために必要なことを、自分の頭で考える方法がわかれば、文章力は格段に進歩する。
では、あなたは暗記と応用ではなく、「自分の頭でものを考える方法」を習ったことがあるだろうか?[/quote]
この本を読んだのは社会人2年目の時。まだ20代前半の頃。
当時の僕は勤めている自分の会社や仕事の内容に漠然とした不満を抱えていた。
「なんかこの会社は違うんじゃないか」「もっと自分に合ういい仕事があるんじゃないか」
今振り返るとよくある「青い鳥症候群」ってヤツだと思うが、その時の僕はそれなりに真剣だったのである転職エージェントの門を叩いてみた。
通常転職エージェントは転職希望者に対して無償で職の紹介を行ない、転職が成立した段階で転職先企業から紹介料をもらう。
従って、多くのエージェントは本当にその希望者にその会社が合うかどうか?なんてことは考えず、いかに時間と手間をかけずに転職を成立させるかに関心がいってしまう。
だけどこのエージェントはちょっと違った。
「どうして転職したいんですか?」「何がしたいんですか?」
ということを執拗に聞いてきた。普通なら適当に答えればすぐに「なるほどー、じゃあこのポジションなんてどうです?バッチリ合うと思うんですけど!」なんて言ってくるが、彼はどうやら納得いくまで聞きたかったようだ。
結局彼が納得するような答えが出せない僕に対して、彼は「じゃあ、次回までに『自分の志』ってタイトルでエッセイ書いてきてもらえます?A4用紙1枚くらいでいいんで。」と宿題を出した。
「志」。
口頭で10秒程度で答えるのならなんとかなる。しかし書くとなると難しい。何から書いていいのかわからない。彼を説得できるかもわからない。
「ちなみに、書く際にこの本が参考になると思いますよ。」
そう言って彼が紹介してくれたのがこの本だった。
何を書いていいかわからなかった僕はひとまず本書を買って読んでみた。
そこで目に入った一文が先程紹介した一節。
「おれ、今まで本当に自分の頭で考えてきたか?」
本書は主に以下の「7つの要件の思考法」を解説する。(「自分の立場」と「読み手」をまとめると6つ。)
[quote]1. 意見
2. 望む結果
3. 論点
4. 関係性(自分の立場、読み手)
5. 論拠
6. 根本思想[/quote]
所謂「ロジカルシンキング本」としての内容は「3. 論点」「6. 論拠」あたりに詳述される内容だが、この本の特徴はこれ以外に「1. 意見」や「4. 関係性」に言及している点。
論理的思考やその結果著された文章は所詮「入れ物」であり、そこに入れるべき「自分の意見」がなければいかに論理的であろうとその文章は空虚であること、また自分の立場や読み手が望むもの、つまり自分と読み手の「関係性」をしっかり理解しなければその文章は機能しないこと、これらについて言及されたロジカルシンキング本はあまりない。
これらは詰まるところ哲学そのもの。
本書はこれ以外にも、「上司を説得する文章の書き方」「議事録の書き方」「志望動機の書き方」など、特定のシチュエーションに沿った文章の書き方も指南する。この点では通常のロジカルシンキング本としても十二分に機能。
ただし、ロジカルシンキングというものについてより深い知見を得たければ、名著中の名著「考える技術・書く技術」を読むべき。
さて、『「志」を書く』という宿題をもらった僕はどうなったか。
当たり前のことだが、本書を読んだところでたちどころに自分の意見を持つことができ、自分の考えをスラスラと言えるようになるわけではない。
結局僕はその宿題を出さず、転職活動からは遠ざかってしまった。
しかし、これのお陰で「おれはどういう人生を歩みたいんだ??」という問いを常に持つようになった。
その問いの答えがおぼろげに見えるようになるまで3年くらいかかったけれども、そもそもそれまでの自分の人生に欠けていたもの、それが「自分の頭で考える」ことだということに気づけたのはとても大きいことだった。
それ以降日常のささいなことについても「自分はどう考えるか?」を意識するようになったし、その結果他人の意見にも興味が出てきたし、そのためたくさんの本を読むようになったし、それに刺激されてより一層考えるようになったし、その結果自分の意見を言えるようになってきた。
もしかしたら20代になるまでそんなことに気付かなかったってのはスゴい遅いことかもしれないし、もしかしたらまだまだ「自分の頭で考える」チカラってのは未熟かもしれない。
でもそこに気づいたのはとても大きい。
そんな意識の変革を僕にもたらした一冊です。
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