最近諸事情によりインドネシアに興味があります。
昨今は地震とか津波とか火山の噴火とかのニュースがちらほらあって認知度が上がってきている気がしますが、その一方で「あらー遠い南のお国は大変なのねー」という程度の認識しか持たれていないのも事実ではないかと。
しかーし。
実はこのインドネシアという国、結構スゴいんです。
そもそも人口は2億3千万人、日本の約2倍で世界第4位。
そのうち約8割はイスラム教徒で、そのためインドネシアは世界一のムスリム人口を誇ります。
そして世界の中でも有数の親日国の一つ。
その理由は第二次大戦時に資源確保のため日本が占領した際その統治がよかったことも一因とされていますが、それよりも日本の敗戦に伴ってインドネシアが旧宗主国のオランダから独立すべく戦争を起こした際、現地に残留した日本人兵士たちも一緒になってインドネシア人たちと戦ったという点が大きいようです。
なので未だにインドネシアの独立記念日には日本の軍歌が流れたりします。
昨今は経済成長もめざましく、BRICsにインドネシアを加えてBRIICsなんて言われたりすることも。
インターネット回線の普及率はまだ10%程度ですが、その一方でBlackBerryがめちゃめちゃ普及しておりFacebookの言語別アクセス数世界第一位はインドネシア語だったりします。
またインドネシアの自動車市場における日本車のシェアはなんと9割以上。二輪も同様です。つまりインドネシアは次代の超ビッグマーケットなわけです。
その一方で政治的にはまだまだ不安定。
現大統領のユドヨノは直接選挙で選ばれた初めての大統領であり民主化は一定程度進みつつある一方、そもそもインドネシアの国土自体オランダの東インド会社の支配領域をそのまま国土としているので、民族的にも文化的にも雑多、かつ端の方に行けば行くほど「わしらはインドネシア人じゃないけんのう」的スタンスだったりします。
なので時々独立運動が起こる。有名なのはスマトラ北端のアチェやティモール島の東側に位置する東ティモールです。
東ティモールは2002年に独立した21世紀最初の独立国ですが、国際法上は「オランダから独立した」となっているのも興味深いところです。
さて、僕は大学受験時代に世界史を勉強しましたが、大人になるにつれその勉強不足っぷり、もしくはその勉強が表層に留まっていたことをひしひしと痛感しています。
例えば2004年に制作された「ホテル・ルワンダ」を観た時、己の勉強不足を痛感しました。
「ルワンダ難民」なんて言葉自体は試験に出題されるので知っていましたが、そもそも僕が中学生とか高校生の頃に世界のある地域で隣人が隣人をナタでぶったぎって計120万人が虐殺されるなんて事件が起こっていたことはまるで知りませんでした。もう物心ついてる年齢であったもかかわらず。
そんなわけで機会があればなるべく様々な国の歴史、政治史、経済史、宗教史を努めて知るようになりました。
で、インドネシアに興味を持って手にとったのが本書。
本書は、時事通信社の記者である筆者がジャカルタ特派員だった2001年から2005年末までに取材した情報をまとめたもの。それは単なる二次情報のつなぎ合わせではなく、テロを指揮したイスラム指導者へのインタビューや津波の被災地での取材等「ナマの」一次情報に基づくリアルなもの。情報のリアルさ、詳細さもさることながら、その語り口も記者という職業柄非常に読み易く、インドネシア関連の書籍が少ない中彼の国を知る貴重な良著であると言えます。
読者にとっては本書でさえ二次情報であり、実際に見聞きしたり体験した情報には及ばないかもしれませんが、とはいえインドネシアが独立してから現在に至るまで、政治的経済的文化的にどのような試行錯誤四苦八苦をしてきたのかを俯瞰するには最適です。
特に印象深かったのは、アメリカのドラマ「24」に出てくるようなテロの現実がそこにはあり、さらにテロリスト側にもテロリスト側の苦悩や事情があるということです。もちろんテロリズムを肯定するわけではありませんが、「テロ=悪い!」という勧善懲悪な構図で物事を捉えることに慣れきった僕の心と脳みそには非常に新鮮な刺激でした。
インドネシアは不思議な国です。
世界第4位の人口、日本の約5倍の国土、さらに豊富な資源を有していながらこれまで国際的認知度はあまり高くなかった国。
世界最大のイスラム教徒を擁する国家でありながら、厳格なイスラム教国ではない国。
国民の多数が「日本は好きか?」と問われると「好き」と答える国。
そんな親日的巨大マーケットを擁するインドネシアは今後ますます日本との関係が深くなるはず。
その日に備えてインドネシアのことを今からちょっと知っておくのもいいんじゃないでしょうか。
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