想像力には限界がある。

人間の想像力には限界があります。「百聞は一見に如かず」とはよく言ったものです。
もちろん一見できない状況において百聞だけで意思決定しなければならないシチュエーションは数多くあります。それは仕事においてもそうだし、プライベートにおいてもそう。
仕事においては、誤った意思決定はしかるべき手段によって修正されます。お客様に迷惑をかけたり上司から怒られたり。しかしプライベートにおける意思決定の過ちは、まず自分がその過ちを認めた上で、自らが対処に向けて動かないと解決に至らないのが難しいところです。

このような想像力不足による意思決定の過ちが最も起きやすいのが、そしてその意思決定の過ちの影響が大きいのが、下記の3点だと思います。

  1. 結婚
  2. 仕事
  3. 不動産


これらの3点は、未経験な状態ではどのように行動すべきか全くわかりません。いかに想像力を働かせたところで、それまでの人生に類似した経験がほとんどないため、それは役に立たない。この想像力で埋められない隙間を埋めるために膨大な情報が巷に流通しています。しかし情報はあくまで情報、最終的に「自分が満足するかどうか」「何に満足するか」は結局のところ経験してみないとわからない。にも関わらず雑誌に書いてある情報を鵜呑みにして多くの人が満足すれば自分も満足すると思ってしまう。就職人気ランキングの上位に就職できればバラ色の人生が待っていると思ってしまう。
それ故に、誤解を恐れずに言えば、人生で一番最初のこれらの意思決定は、多くの場合失敗します。

この失敗に対する個々人のリアクションはいくつかのパターンに分けられます。

  1. 失敗を認めない
    まずは失敗を認めないケースです。
    これは幸せなのか不幸なのかわかりません。「知らぬが仏」という言葉もある通り、認識していなければそれは失敗ではないのかもしれない。しかしながら実際には自分が真に求めるものと現実とが乖離している。その乖離は自分の認識の外側で自分を圧迫する。知らず知らずのうちに自分にストレスがかかっている状態はあまり幸せとは言えません。あの憧れの会社に入社できて超ハッピー!……なはずが想像以上の過酷な労働に身体がついていかない……この会社に入社できたのはハッピーなはずなのに……。
    このようなケースはカウンセリングに行くとストレスの原因がわかり、正しく認識できるようになると思います。
  2. 失敗の原因を他に求める
    次は失敗の原因を他に求めるケースです。つまり「こんなはずじゃなかった!」と言う場合。
    多くの場合これは自分の責任です。つまり、自分の腹の底にある本当の要件を掘り出せなかった自分が悪い。知名度や華やかさでマスコミ関係の仕事を選んだものの実は土日に休めることや家族と過ごす時間を確保できることが重要だとわかった場合。経済力のある男性がいいと思ったが、実はちゃんと子育てを手伝ってくれる方がいいとわかった場合。いずれにせよ自分の心の奥に潜む要望や欲求を理解できていなかっただけ、それが実際の経験を通じて表層に出てきただけ。
    経験前と後で変わったのは周囲ではなく自分です。これもいいカウンセラーについて自問自答を手伝ってもらうと徐々にわかってきます。
  3. 失敗を認めて対処する
    失敗を認めて対処する場合は、「現状維持」と「修正」の2つのプランがあります。これはどちらが正しいというものでもなく、単純に生き方や程度の問題です。
    家選びを間違えたなーと思っても住んでるうちに「住めば都」になっていく人もいれば、働き始めた会社で何かが違うと思ったらすぐに職を変える人もいる。
    「現状維持」で満足できるのならばそれが最上ですが、満足できない場合は恒常的にストレスまみれの暮らしを送ることになります。旦那に我慢ならないが離婚に踏み切れない妻などがこれに当たります。一方で、直ちに修正したところで修正すべき点が何でどう修正すべきかわからないうちに行動するとまた同様の過ちを犯すことになります。転職するたびに給料が下がるジョブホッパーなどがこれに当たります。
    ここで大切なのは、自分の心の中のクライテリアをはっきりさせること、何が重要で何が妥協可能かはっきりさせることです。それによって「現状維持」すべきか「修正」すべきか見えてくるし、それぞれの策を取った場合に甘受すべきことを甘受できるようになるのだと思います。

それではこのような意思決定とうまくつきあうためにはどうしたらいいか。
「失敗は成功の母」という言葉を見ると、「失敗しない道はない」ように思えます。これは一つの道です。つまり、「とにかくやってみる」。想像しても無駄ならば、やってみるしかない。失敗したら失敗した際に適宜対処する。失敗してもいちいちくよくよしない。
 もう一つは、「よく考えた上で腹を括る」です。この「よく考える」という行為、つまり「自分の心の奥底の欲求を白日の下に晒す」という行為は通常然るべきトレーニングをうけていないとなかなか難しく、できればカウンセラーに相談しつつ時間をかけて取り組むのがベストと思いますが、そうしたスキルを身につけた上で自問自答する、欲求を掘り出してみる。そうして見つけ出した要件に自分が納得できたら後はそれを受け入れる。万が一その要件が真実でなくとも、「覚悟」によって真実にしてしまう。結婚式における「誓い」とはこの「覚悟」を意味するのだと思います。つまり「結婚前はとても紳士的で素敵だった貴方が仮にリビングで着ている服を脱ぎ散らかし子育てにはまるで関与せずさらに仕事をクビになったとしても、この結婚は私の決断であり死ぬまで婚姻関係を全うする覚悟があることを宣言します」ということ。
いずれにしろ大切なのは自分の想像力を過信しないこと。想像力が不完全だとわかった上でその不完全を受け入れるか、不完全さを埋めようとするかのいずれかが重要だということです。

まあこんなことを考えすぎると「何もせずひきこもる」のが最上になってしまうので、こんな風に考え過ぎるのが一番やってはいけないことなのかもしれませんが……。


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