この記事が公開される頃、映画「ソーシャル・ネットワーク」が日本でも公開されました。世界最大のSNS「Facebook」を創り上げ、25歳にして米雑誌フォーブスが発表した「世界で最も若い10人の億万長者」の第一位にランクインしたマーク・ザッカーバーグの自伝的映画です。
彼の人生をテーマにした映画が作られることを初めて聞いた時、僕はとても不思議に思いました。
「ITで新しいサービスを作った人の自伝なんて良質のエンターテインメントになり得るのか?」と。
しかしそれは単なる僕の固定観念、単純にこれまでITという新しい分野のサービスや人物にフォーカスが当てられて来なかったために感じた違和感でした。(だってビル・ゲイツの自伝的映画なんて想像できないでしょ?)
どこかで読んだ「ストーリー」の基本構造とは、少なくとも以下の4要件を備えているそうです。
[quote] 1. 主人公
2. 目的 / ゴール
3. 敵 / 葛藤
4. 支援者[/quote]マンガ「ドラゴンボール」であれば、孫悟空が、時にドラゴンボールを狙う悪の集団と闘いながら、仲間たちとともに最終的にドラゴンボールを7つ集める。これがストーリーの基本構造。
冷静に考えてみると、このような基本構造はほぼ誰の人生にも見られることです。まして世界最高の何かを創り上げた人々の人生には、非常に質の高い要素が詰まっているはず。そう考えると、ビル・ゲイツの人生もきっと面白いストーリーになるんだろうし、だからこそマーク・ザッカーバーグの人生も良質のエンターテインメントに成り得たのだと思います。
さて、本書もそんなエンターテインメントの一つ。本書の著者はトニー・シェイ、「靴版Amazon」とも言うべきサービス「Zappos」のCEOの話です。
僕は「Zappos」という名前は知っていたし「靴版Amazon」というサービス内容も知っていましたが、未だ日本でサービスが始まっていないこともあって彼やそのサービスの内容について詳しいことをよく知りませんでした。
ただ、何かの記事に「Zappos」という名前が出てくるとき、それは大抵その特徴的な企業文化に関する言及とセットであったため「なんだか既存の枠にとらわれん面白い会社らしいぞ」ってことはなんとなく知っていました。そんな朧気なZapposというサービスとその企業文化への興味から、本書を読んでみようという気になった次第です。
本書は、トニー・シェイが幼い頃から現在に到るまでの出来事を彼自身が彼自身の言葉で語ったもの。
彼がどのような子供時代を送りその後どんな大学生活を過ごし、何に向かってどんなビジネスを手がけ、その途上でどんな苦難にぶつかりそれをどんな人とどう乗り越えたのか。本人が書いているが故に原文は文法的におかしなところがあったりするそうですが、それを補って余りある情景描写は秀逸です。
さらに素晴らしいのは、「社員満足」とか「顧客満足」という言葉をスローガンだけに終わらせず、経営に反映した過程も詳細に描写してある点です。
経営関連の書籍の中には「ザ・ゴール」や三枝匡の三部作など小説という体裁をとった名著がいくつかありますが、本書もその1つであると言えます。
「社員満足」とは何か、「顧客満足」とは何か、「ビジョン」とは、自分が歩むべき道とは。
多くの企業、多くの経営者、多くのビジネスマンだけでなく多くの人々が抱く煩悶を解決するヒントが本書に垣間見えると思います。
ちなみに、本作はテクノ、ハウスなどのダンスミュージックの素晴らしさを理解する上でも一助となります。p136-p140を読んでみてください。ダンスミュージックファンのもそうでない方もクラブに行きたくなるはず!
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