昨今、ロジカルシンキングの重要性に異論を唱える人はもはやそういないと思います。
特にビジネスシーンにおいて、相手に何かを伝える際、また相手の主張を理解する際、ロジックというものはとても強力な武器になります。
以前はコンサルタントやアナリストの専門スキルのような位置付けでしたが、ここ数年ではこれをテーマにした書籍や研修も数多く登場し、もはや現代ビジネスマンの基礎スキルとでも言うべき地位を獲得しました。
その一方、まだまだロジカルドローイングの方法論は世の中に普及していないように思います。
現代ビジネスマンであれば一度ならず何度もPowerPointやExcel等を使って図表を作成した経験があるはず。ただ、棒グラフを使うべきか円グラフを使うべきか、データをどのような並べ方で表現すべきか、配色や視覚効果はどのようにすれば効果的なのか、というような図表を作成する際のギモンについては誰も教えてくれず手探りで改善していくという状況なのではないでしょうか。
そんな図解表現におけるノウハウについてまとめた良著が本書です。先に断言しておきます。これは良著です。
まずは目次をご紹介。
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- 読み手にとってわかりやすい図表とは
- 図表の作成手順
- 数字の表し方
- データの完全性
- データの量
- フォントの選び方
- ビジュアルデータ表現
- 色の使い方
- データを正しく表現する図表のつくり方
- 線グラフのつくり方
- 縦棒グラフのつくり方
- 横棒グラフのつくり方
- 円グラフのつくり方
- 表のつくり方
- ピクトグラムのつくり方
- 地図グラフのつくり方
- 図表に必要な統計とマーケットの知識
- 図表以前の統計の知識
- 図表作成に役立つ計算
- 図の中での文字と数字の情報
- マーケットの基本
- 図表作成で発生する問題の解決方法
- データ不足の場合
- 大きな数字の小さな変化を表す場合
- 数値の違いが大きすぎる場合
- 色が黒しか使えない場合
- プロジェクト管理に役立つ図表
- 計画を立てる
- プロジェクトのスタート前
- 計画どおりの進め方
- 費用と資源の管理方法
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本書の著者はこれまでニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルといった世界的に有名なビジネス誌の編集に関わり、20年以上インフォメーショングラフィックスの第一線で活躍してきた人物。その長年の経験と実績に裏付けられたノウハウはさすがのヒトコトです。
本書の素晴らしい点は、棒グラフや円グラフ、表などの図解表現に関するコツや注意点についての記述もさることながら、記述がそれらのみに留まらない点です。
そもそも図表を作成する前段階において、図表の元となるデータをどのように収集しどのように編集するか。どの図を採用し、どのフォントで、どの色で表現するか。さらにデータ編集の際に必要となる統計の基礎知識やマーケット分析、プロジェクト管理の基礎知識に至るまで、本書では解説されています。
これらはボリュームがそこまで多くない分内容は概論レベルでありながらも基本的な知識は一通り網羅されているため、この一冊を読むだけで図解表現のスキルは相当に向上すること請け合いです。
ちなみに、先述したように本書は概論レベルであるため、折れ線グラフや株価チャートなど一部言及されていない表現がところどころあります。また、ウォーターフォールグラフなど既存のグラフの応用的な使い方についても深く言及されていません。これらについてより深く学びたい方には、マッキンゼー流図解の技術がオススメ。戦略コンサルティングファームの雄マッキンゼーのコンサルタントが分析結果をまとめる際に活用する図解表現のノウハウが凝縮されており、こちらはこちらで非常に勉強になります。
最後に、これらの本を読んだ感想を一言。
ロジカルシンキングも同様ですが、ロジカルドローイングも言わばただの「容れ物」です。即ち、その中に入れるべきコンテンツがあって初めて価値を発揮する。
いくらロジカルシンキングのスキルに長けていても主張すべきメッセージがなければそれは無用の長物ですし、いくらロジカルドローイングの技術を習得しても伝えるべき示唆がなければ意味のわからない図表に成り下がります。
僕がこれらの本を読んで痛感したのは、プレゼン全体で主張すべきメッセージを一つに絞るように、また各スライドで伝えたい内容を一つに絞るように、各図表においてもその機能をしっかり一つだけ定義してあげることが必要だということです。
まあ結局は道具だけ揃えても自分のアタマがしっかりしてないとどうにもならんようです。
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