志を育てる (グロービス経営大学院)

「志」
社会人になって自分のアタマで考えるようになってから片時も脳の片隅を離れることなく自分を悩ませるもの。
生きる目的、達成したいゴール。人生を賭すもの。

これまでも何度か語っていますが、人生で初めて「志」を意識したのは社会人になって2年目か3年目、20代半ばの時でした。
不本意な就職活動の末に拾ってもらった会社で渋々働いていた僕にとって、仕事に対する漠たる違和感を拭い去るために転職活動という行動に出るのは時間の問題。なんとなく思いついた「これ、面白そう」という仕事に飛びつき転職エージェントの門を叩く。しかしそこで問われたのは「志」。
「どうして転職したいんですか?」「転職してなにを実現したいんですか?」
矢継ぎ早に浴びせられる質問にしどろもどろになっている僕を見たエージェントは、僕に宿題を与える。
「わかりました。それでは次回までに『私の志』という題でエッセイを書いてきてください。」

これが僕と「志」の初めての出会いです。
それ以降常に僕の脳ミソの片隅に住み続けているもの。いや、「これがおれの志だ!」と思うことができるものを持っている状態ならばいいんです。それが心の片隅にあるのは素晴らしいこと。しかし僕の場合は、「おれの志ってなんだ?」という疑問。それが常に脳ミソの隅っこにこびりついている。そしてそれを見つけられないことで、罪の意識に苛まれる。

志のようなものが見つかった時期もありました。
「自分はこういうことが好きだ。こういう活動を通じて社会に貢献したい。」
しかしそれは結局「適性のなさ」をつきつけられて頓挫。もしかしたらそんな程度で頓挫する「志未満のもの」だったのかもしれません。
「志なんてなくてもいいのでは?」と思う時期もありました。
アインシュタインは志なんてものを考えずただ眼前の研究が楽しくて没頭したのではないか。
でも没頭できるものがない僕にとって、志なく生きるのは時間の浪費です。

さらに現在。海外赴任という貴重な機会を与えてもらっている最中に感じるのはまさに「志の不在」。眼前のタスクを捌くことに注力しきってしまうことで、さらに「志」から離れる昨今。
「『志』なんて大層なものでなくてもいいから、せめて『目標』くらい見つけなきゃ……」と焦る一方、たちどころに過ぎ去る時間。

こんなこと考えてるのって僕くらいなんでしょうか。それとも同じように「志の不在」に悩んでいる同志は結構いるのでしょうか。
恐らく本書が発売される背景には、やっぱり「志不在に悶々とする人々」の存在があったのではないかと思います。そう考えると少しほっとします。なんの慰めにもなりませんが。

本書は現在活躍している人々がどのようにして彼らの志を育み、そしてそれを成長させていったかという過程をまとめたもの。
著者が述べる「志が成長するスキーム」自体は非常に理解しやすいですし、実際に活躍している人々の志の生成過程は非常に勉強になります。
本書を読んだところでたちどころに自分の志ができるわけではないですが、僕みたいに「志の不在」に悩んでいる人にとって何らかのヒントにはなると思います。

なんだか湿っぽいレビューになってしまいましたが、「志の不在」に悩んでいる方は一度目を通してみてはいかがでしょうか。
もし本書を読んだ結果悩みをより一層深める結果になっても当方は責任を負えません。ただ悩みを深めるのも出口への一歩だったりして。

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