Voice over Internet Protocolとは、音声を各種符号化方式で圧縮しパケットに変換した上でIP(Internet Protocol:インターネットプロトコル)ネットワークでリアルタイム伝送する技術である。(Wikipediaより)
要するにVoIPとは音声通信をインターネットを介して行う技術、VoIPアプリケーションとはそれを実現するアプリケーションのことです。依然として音声通話が従量課金であるのに対し、すでに定額課金が一般的なインターネット回線を使って音声通話ができれば、通話料の大幅な削減が可能になる。ここ数年企業でもIP電話を導入したり、一般家庭でも「ひかり電話」等のIP電話を導入するところが増えてきましたが、これらの導入目的は主に通話料の削減です。
これは携帯電話でも同様。「小さなパソコン」と言っても過言ではないスマートフォンにこれらの技術を導入するのは以前から可能でしたが、昨今ようやく様々なVoIPアプリケーションがリリースされるようになりました。ここではそんなVoIPアプリケーションの紹介と、賢い使い方を考えてみたいと思います。
- VoIPアプリケーションの種類
VoIPアプリケーションがその認証方式、機能などによっていくつかに分類できると思います。この分類や機能の有無、その他の特徴と自分のニーズにそって、最適なVoIPアプリケーションを選択することが肝要です。- 認証方式
- 電話番号方式
ユーザIDとしてVoIPアプリケーションを使用するデバイスの電話番号を利用する方式。Viberが代表例。このため通話相手の電話番号をさえ知っていれば特に通話相手を登録することなく利用できるというメリットがある一方、スマートフォンやPCなど複数デバイスで同じアカウントを利用することができない、基本的に通話機能を持つデバイスでしか利用できないというデメリットがある。 - 独自ID方式
ユーザIDとしてそのアプリケーション独自のIDを利用する方式。Skypeが代表例。このためスマートフォンやPCなど複数デバイスで同じアカウントを利用することができ、またPCなど通話機能を持たないデバイスでも利用可能というメリットがある一方、予め通話相手のIDを取得して登録しておく必要があるというデメリットがある。 - 独自電話番号方式
ユーザIDとして独自の電話番号を利用する方式。050plusが代表例。独自ID方式の一形態とも考えられるが、大きな違いは独自ID方式は一般の電話機から電話をかけることができないのに対し、独自電話番号方式の場合は一般の電話機からも電話をかけることができる点。メリット・デメリットは独自ID方式とほぼ同様。
- 電話番号方式
- 機能
- ユーザ間通話機能
同じアプリのユーザ同士で通話する機能。VoIPアプリケーションなんだからどのアプリも持っていて当然。 - 一般電話通話機能
アプリのユーザのみならず、一般の固定電話や携帯電話とも通話可能な機能 - ビデオ通話機能
デバイスのカメラを利用してテレビ電話を可能にする機能。 - 電話回線通話機能
WiFi接続時のみならず、通常の携帯電話回線接続時にも通話可能な機能。
- ユーザ間通話機能
- テキストチャット機能
ユーザ間でのテキストチャットを可能にする機能。
- 認証方式
- 通話料金
一般の固定電話や携帯電話へ通話した場合の通話料金。ちなみに同じアプリのユーザ同士はどのアプリも無料。 - 通話品質
文字通り通話時の音声のクリアさ。 - アプリケーションサイズ
アプリケーションのファイル容量。軽いほどダウンロードがラク。
主要なVoIPアプリケーションは下記の通りです。基本的にはiPhoneアプリとしてリリースされているものが中心です。認証方式や機能の違う様々なアプリケーションがリリースされています。
VoIPアプリ | 認証方式 | 機能* | |||
---|---|---|---|---|---|
一般 | ビデオ | 3G回線 | チャット | ||
Facetime | 電話番号または独自ID | × | ◯ | × | × |
Skype | 独自ID | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
Viber | 電話番号 | × | × | ◯ | ◯ |
050plus | 独自番号 | ◯ | × | ◯ | × |
LINE | 電話番号及び独自ID | × | × | ◯ | ◯ |
「一般」: 固定電話等一般的な電話への発信可否
「ビデオ」: ビデオチャット/テレビ電話機能の有無
「3G回線」: WiFi環境なし3G回線のみでの通話可否
「チャット」: テキストチャット機能
- Facetime
Apple純正のビデオチャット用アプリ。純正であるが故に「音声通話は普通の電話機能でやってちょ」「テキストメッセージングはiMessageでやってちょ」ということで「WiFi環境下でのビデオチャット機能」しか持たない。認証方式は電話番号方式で、iPhoneユーザに対しては電話番号で、iPod touchやMacなどの非電話端末に対してはApple IDを利用。あまり使う意味はなさそう。 - Skype
VoIPアプリの雄。先日Microsoftに買収され「Windows Phone端末などMSデバイス以外へのアプリ配信停止か!?」なんていう懸念があったが今のところ杞憂。認証方式は独自ID方式でiPhoneやAndroid端末、iPod touch、MacやWindows PC、さらにPlay Station PortableやXbox 360などあらゆるデバイスで利用可という高い汎用性を誇るが相手のSkype IDを知っていなければダメ。「Skypeクレジット」を購入すれば有料通話、つまり普通の固定電話や携帯電話への発信も可能。Skypeクレジットの購入にはクレジットカードが必要。 - Viber
最近流行っているポストSkype VoIPアプリ。認証方式は電話番号方式のため、特に通話相手を登録する必要がなく、電話帳に登録されている連絡先からViberユーザを自動的にリストアップしてくれる。機能は通話とテキストメッセージングの2つというシンプルな構成だが、電話番号方式という手軽な認証方式と音声品質の高さから一躍人気アプリに。 - 050plus
NTTコミュニケーションズがリリースしたdocomo、au、Softbankにケンカを売るかのごとき問題アプリ。独自電話番号方式であるが故に一般の固定電話や携帯電話から受信することも可能な上、それらの電話に050plusから発信した際番号通知も可能。(ちなみにSkypeでは番号通知は不可)問題の理由はその通話料金の安さで、普通にdocomo機からSoftbank機に電話をかけるよりも050plusを使って通話した方が料金が安い。つまり、もはや普通の通話機能を使う必要なし。海外から日本に電話するのにも非常に便利かつお得。テキストメッセージング機能等はなく通話のみのシンプルな機能。ちなみに有料通話にはクレジットカードが必要。 - LINE
画像まとめサイト等で有名なNAVERリリースしたアプリ。最後発ながら圧倒的な広告投下量、様々な絵文字等に対応した日本人若者好きのするテキストメッセージング機能、そしてWiFi環境下でなくてもアプリをダウンロード・インストールできるファイルサイズの軽さから急速にシェア拡大中。
こんな百花繚乱のVoIPアプリ、どれを使えばいいのか迷ってしまいますが、オレ流最強の組み合わせはこれです。
Viber + 050plus
まず僕はビデオ通話機能や充実したテキストメッセージング機能はあまり必要としていません。前者はそもそもあまり必要性を感じていないし、後者はEメールなどの代替手段がたくさんあるからです。その前提で、通話料金と通話品質を考慮すると、上記の組み合わせが最強と思われます。
まず、Viberユーザ同士はViberで十分です。既存のアドレス帳を利用しての通話相手登録、クリアな音声品質は通話目的には十分。ただ、現在僕が滞在しているインドネシアのように3G回線が貧弱な環境下ではWiFi回線でないと快適な通話はちょっと厳しいかも。また、まだ試していませんが一説には通話品質はLINEの方が上という話も。
050plusはViberユーザ以外への通話に使用します。050で始まる独自の電話番号が割り当てられるので発番号通知が可能な上、普通の携帯電話からの通話に比べて安い通話料金が魅力。海外から国内にかける場合も同様なので、まるで日本にいるような感覚で日本の友人に電話をかけることができます。さらに他の電話機から独自の050番号に対しての発信も可能なため、僕が持っているSoftbank携帯への着信をこの050番号に転送することも可能、つまり海外にいながらにして、また日本の電話機を持たずして090番号への着信を受けることが
できます。
いやーすごい時代になったものです。
これらVoIPアプリの登場によって何が可能になるのでしょうか。
もちろん安価に通話することができるようになるということはVoIPがもたらす最大の恩恵ですが、それと同じくらい重要なのは「もはや携帯電話回線は不要。携帯電話端末すらもいらない。」ということです。
先日SIMロックフリーのiPhoneをdocomo回線で使う記事を書きましたが、これまでiPhoneをdocomo回線で利用する際の最大の懸念はその料金でした。データ通信料金も通話料金も高い。しかし先日紹介したプリペイドSIMカードとこのVoIPアプリを使えば、もはや料金を気にすることなくdocomo回線でiPhoneを利用することができます。
さらに言えば、もはやiPhoneすらも不要。今回紹介したVoIPの一部はユーザ登録時に携帯電話端末を必要とするものがいくつかありますが、古い端末や友人の端末を借りるなどしてユーザ登録のハードルさえクリアしてしまえば、端末はiPod touchやiPadでもいい訳です。それさえあれば普通に通話が可能。もはや電話回線自体の存在意義が疑しくなるレベルです。
そんな訳で既存の電話回線ビジネス、携帯電話ビジネスを脅かしつつあるVoIPアプリ、皆さんもぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
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