最近Kindleにハマっています。端末としてのKindleではなく、サービスとしてのKindleの方です。
言わずもがなですが、インターネットが普及して以降海外で生活することが飛躍的にラクになったと思います。
友人とのコミュニケーションはTwitter、FacebookほかSNSを使えばいつでもどこでもきめ細やかにできるし、電話だってVoIPアプリを使えば無料でできる。ニュースはいつでもリアルタイムで見られるし、映画や音楽のコンテンツも気が向いた時に購入できる。そこにまたひとつ加わった便利なものが電子書籍。
Kindleが日本でのサービスを開始し、ようやく僕の中での「電子書籍」が始まりました。
そもそもこういったコンテンツビジネスは、コンテンツの豊富さを揃えたプラットフォームが勝つということはiTunes Storeが音楽や映画の世界で証明し続けていること。音楽の世界ではSportify、映画の世界ではHulu、Netflixなどそれぞれストリーミングという違うビジネスモデルで挑むプレイヤーもいますが、買い切りビジネスに関して言えば音楽ではiTunesないしAmazon、映画ではiTunesがデジタルコンテンツ市場ではビッグプレイヤーになっていると言えると思います。それはその取り扱いコンテンツの豊富さ故。
一方、書籍というコンテンツに関して言えば、それまでの日本の電子書籍市場は惨憺たるものでした。iOSの世界では紀伊国屋Kinoppyやダイヤモンドブックスなど書店系出版社系電子書籍アプリをはじめ、青空文庫やアプリ化された個々の書籍などのアプリが乱立した結果、この本を読むにはこのアプリ、この本ならこっちのアプリ、最近出たあの本はそれ自体独立したアプリ、としっちゃかめっちゃかな状況。一方で既に紙媒体で持っている書籍を所謂「自炊」によって自分で電子書籍化するのも手間、時間、コストがかかる。コンテンツのデジタライズを趣味としている僕にとっても、電子書籍にはまだまだ食指が伸びない状況でした。そこにようやくKindleが参入してきたお陰で、紙書籍から電子書籍に移行する準備が万端整ったという状況です。
そんなKindle、というか電子書籍の一体何がどう便利なのでしょうか。
- 購入がラク
電子書籍のみならずデジタルコンテンツの最大の魅力は、調達に際して物理的な店舗という制約から解放されることです。音楽コンテンツを買うのにCD屋に行く必要がなく、電子書籍を買うのに本屋に行く必要がない。家にいながらにして、電車に乗っている時、知人に薦められたその瞬間、ふと思い立った時、カフェでお茶しながら「ああ、あの本持ってくればよかったのに!」との思いに駆られた時。その場で買える。これは非常に快適です。さらに海外に住んでいても買える。海外では、和書を売っている本屋へのアクセスが大変な上、その品揃えも十分ではなく、さらに個々の書籍の値段が高い。幸いジャカルタにも紀伊国屋はありますが、取り扱っている日本語の書籍は一部の雑誌、小説、語学の参考書、あとは旅行本くらい。しかもそのそれぞれの値段は日本での購入価格の2倍程度。電子書籍はこんな問題を一気に解決してくれます。 - 持ち運びがラク
これもデジタルコンテンツの大きな魅力です。まだウォークマン、CDウォークマンが主流だった時はいくつものカセットテープや何枚ものCDを持ち歩く必要がありましたが、そんな手間、もしくはその時の気分によって聴きたい音楽を変えられないフラストレーションを解消したのがiPodでした。電子書籍も同じです。以前はちょっとした外出の時や出張などの際、その時の気分などを予め想定して読みたい本を何冊か選んで持ち歩いていました。当然そこそこの重量がある。そしてそんな思いをして持ち運んだとしても、出かける前慎重に本を選定したとしても、「ああ、結局読みたかったのは今持ってる本じゃなくて持って行こうか悩んで結局やめたあの本だったわー」などという後悔にまみれてしまうことはある。電子書籍は全てiPadやiPhoneに入れておけます。このお陰で気が向いた時にいつでも本を読めるようになりました。 - 検索、編集がラク
電子書籍の便利な点は、さらに特定のフレーズを検索したり、しおりを挟んだり、メモを取ったり、辞書をひいたりといった作業が非常にラクな点です。以前は、例えば書評を書いている時に引用したいフレーズを延々とページをめくって探したり、思いついたことを本の余白に書き込んだせいで紙面が汚くなってイヤな気分になったり、そもそもメモを取りたいのにペンがないので書けなかったり、といった点が非常に不便でした。厳密には不便さを認識する前に「そういうもんだ」と思ってその不便さを当たり前のように許容していました。しかし、電子書籍はこれらの作業が圧倒的にラクです。さらに目が疲れている時にはフォントサイズを大きくしたり、なんてことができるのも電子書籍ならでは。電子化のお陰で本をより一層読みつくすことができるようになりました。 - 出版がラク
最後に、電子書籍の普及はコンテンツの生産側の状況にも革命をもたらします。音楽業界では当たり前になった状況ですが、それまでは「CDのプレス」「流通」というどうしても大きな資本がなければできなかったことが、コンテンツのデジタル化によって非常に小さい資本でもできるようになりました。それ以前もパソコンの普及によりコンテンツを自分で生産する人の数はどんどん増えてきていましたが、大量生産及び流通も自分でコントロールできるようになって始めて生産者の数が爆発的に増えたように思います。電子書籍も同様。現にAmazon.co.jpでは既に個人が出版していると思われる書籍が100円というような低価格で売られています。
Kindleが日本でのサービスを開始する直前、ちょうど僕は出張で日本に帰っていました。時間があれば本屋に行き、欲しい物リストに入れておいた本を一生懸命買い漁る。また海外に住んでいる都合上滅多に日本の書店に来られないため、そんなに欲しくない本もせっかくだからと一生懸命買い込む。毎回買い込む書籍の量は10冊から20冊に上り、僕のスーツケースはパンパンになる。当然重い。それを一生懸命運び、ようやくジャカルタに帰ってきた直後、Kindleが日本でサービスを開始したとのニュース。恐る恐るストアを覗いてみると……僕が大変な思いをして買い込んできた書籍のほぼ全ては電子書籍として売られていました。しかも安い。悔しかったです。しかし同時に、新刊を含むほぼ全てがKindleストアで網羅されていたことに興奮しました。もうあんな大変な思いをして本を買う必要はありません。
この日以来、僕は「もう二度と紙媒体の書籍は買わない」と心に誓いました。まだ一部の書籍はKindleストアで取り扱われていませんが、それも時間の問題だと思って買い控えています。というわけで今は新規調達分はすべて電子書籍になっています。恐らくゆくゆくは、僕が音楽コンテンツに対してやったように既に所有しているコンテンツのデジタル化を進めると思います。これもバカにできない費用がかかりますが、これはある意味自分の部屋の中のスペース、引用したい文を探す手間、外出先で思いついた時に手元になくて読めないフラストレーションを解消するための対価だと思うと十分に価値があるように思います。なにはともあれ、「デジタル万歳!」です。
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