DiscReview: Jun. 2013

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  1. Jimpster / “Porchlight & Rocking Chairs” [Freerange Records]
    UKを代表するDeep Tech Houseの雄にして人気レーベルFreerange Recordsを主宰するJimpsterによるアーティストアルバム。今作は2006年にリリースされた3rdアルバム”Amour”に続く7年ぶりの4作目。前作”Amour”と同様にディープで少しテックな感じのユルめハウストラックを中心にしつつも程よくエレクトロニカも交えた美しく心地よいアルバムです。ただ曲と曲の間がもう少しオーバーラップしていてアルバム全体で1つの楽曲のような雰囲気を醸していた前作に比べると、1曲1曲がきっちり独立している本作は「全体で1つの作品」というよりも「DJフレンドリーな楽曲の総集編」といった趣き。確かに曲がオーバーラップしているとDJにはちょっと使いづらいこともありますが、前作のその雰囲気がよかっただけに少し物足りない気も。収録曲の中では”Brought To Bare”が出色ですな。
  2. Justin Martin / “Ladybug (DJ Version)” [dirtybird]
    そんなJimpsterとかつては距離が近かったのがJustin Martin。2008年リリースのJimpsterもリミックスしている”The Sad Piano”は文字通り「物悲しいピアノのトラック」で、とてもステキな感じです。そんなJustin Martin、最近はClaude VonStroke率いるdirtybird方向に傾いてしまっているせいか、作風がdirtybirdなちょっとダーティで狂った感じになってしまっているのが残念。そんな中でなんとか往年の美しさを取り戻してたのがこの曲。dirtybirdからのリリースにもかかわらずとても美しい。”DJ Version”と書いてありますが、BPM75のエレクトロニカというかオシャレなヒップホップ、DJで使うにしてもハウスセットの中ではなかなか難しそうです。
  3. Roel Hoogendoorn / “Crimson” [Traum]
    美しいTech House / Technoを輩出する大好きなレーベルTraumからの新作。アーティストの名前は聞いたことはありませんが、内容は期待通りのTraumな感じ。強いて言えば本来のTraum節はもう少し落ち着いた雰囲気のような気もするけど、Kollektiv Turmstrasse作品の雰囲気をほのかに漂わせるようなこの高揚感のあるメロディアスなリフはやはり素晴らしい。BPMは118と少しゆっくりめ。
  4. Golden Girls / “Kinetic (Jeremy Olander Remix)” [Floorplay Music]
    美しいメロディといえばこちらも負けていません。そもそもは今から20年以上も前の1992年にベルギーの名門レーベルR&Sからリリースされたのがオリジナル。恐らくこのフレーズはテクノ/ハウス界隈で遊んでいる人ならば一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。ということで本作はそういう懐かし名トラックを今風にリバイバルさせるという文脈の一つ。オリジナル自体がかなり昔っぽさを感じさせないので、この今風リミックスも原曲のよさを最大限尊重しつつもかなり違和感ない感じに仕上げられています。こちらもアウトロの感じが「盛り上がったまま終わる」という展開にぴったり。
  5. Electric Rescue / “The Rave Child (Ryan Davis Cinematic Rebuild)” [Bedrock Records]
    1999年に設立されて以来衰えることなく淡々とリリースを重ねるレーベルBedrock。昔ながらの上品美し系プログレッシブハウスをリリースしつつもテックハウスやエレクトロニックなものなど最新のトレンドを取り入れる様はまさにレーベルオーナーJohn Digweedの姿勢をそのまま体現しているようだし、一方でこのレーベルからリリースされる楽曲はJohnがヘビープレイするようなものばかりということを考えるとそれも当然のこと。ということで本作はそんなBedrockリリースの中でもどちらかというとおとなしめな雰囲気を持つトラック。こういう上品で神秘的、ちょっと物悲しげだけど底抜けに美しいトラックが僕は大好きです。全然フロアは盛り上がりそうにないんだけど。いや、使い方次第か。
  6. Metodi Hristov / “Earth (2013 Rework)” [Witty Tunes]
    こちらはシンプルなトラックもの。こういう「Kick & Hat & Clap!」的オーソドックスなトラックは、その音色、グルーブがいいとメロディによる味付けがなくてもとてもカッコよく聞こえるもの。これもあまり目立ったリフはないし、リズムトラックの構成も曲の展開も奇をてらったものは何もないけれども、とてもカッコよくて使い回しがききそうな感じ。クラブで踊る人にとってはオススメの1曲です。
  7. Nic Fanciulli / “World Dance” [ Circus Recordings]
    YousefのレーベルCIrcusのコンピレーションに収録されたナイストラック。昨今のNic Fanciulliの作風に比べるとキックが硬かったりシンセが派手だったりするような気がするけど(もしかして昔のリリース/プロダクションかな?)、そのシンセの音色が90年代に一斉を風靡したNYハードハウスのサウンド、Razor N GuidoとかJohnny VIciousのそれにとても似ていてかなりアガる。こういう音色はやっぱりカッコいいです。
  8. Terranova feat. Bon Homme / “You”
    いい感じに踊れそうなディープテックハウス。Terranovaさん、昔はAustin Leedsとかと一緒に攻撃力高めなプログレッシブハウスを作っていたような気がしますが、本作はJimpsterとかMilton JacksonとかMichel Cleisとかに通じそうな地味でちょっとキレイ目なディープテック。このちょっとキーが高い男性ボーカルの声はちょっと賛否分かれるかもしれませんが、曲終盤の美しいピアノとこのボーカルがとてもよく合います。雨の日にどうぞ。
  9. Flight Facilities / “I Didn’t Believe (Tiger & Woods Remix)” [Future Classic]
    “Crave You”が泣く子も黙るほどヒットしたFlight Facilities。彼らがジャカルタでDJした時、それまであまり音楽には興味なさそうに社交に興じていたインドネシア人のお客さんたちがCrave Youだけ合唱し始めたのはちょっとびっくりでした。さて本作はそんなFlight Facilitiesの新作。リミックス名がちょっと人をナメた感じはするけれども、内容はファンクな感じのニューディスコ。中盤までの展開は少し退屈ですが、中盤以降ボーカルが入ってからのキレイな感じはやっぱりいいです。
  10. Rameses B feat. Holly Drummond / “Stones” [Nu Venture Records]
    今週のドラムンベース。このRameses Bという人は基本的にはドラムンベースを作っているようですが時々エレクトロニカを作ったりダブステップを作ったりハウスを作ったりと、多才というか多彩というか、そんな感じの人です。そんないくつものジャンルを股にかけつつも、それぞれの作品には「ドラムンベース界のEDM」といった感じのシンセリフ、美しいメロディ、長いブレイクからの展開、というような要素が共通しているように思います。本作もそういう意味では典型的EDMドラムンベース。でもそこまで「シンセをかき鳴らしてとにかくアゲる!」的EDMではないので落ち着いて鑑賞できます。

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