なぜ自分がこの本を手にとったのか。
もう読み終わってから1、2年経ってしまっているので正直よくわからん。
そもそも僕はいわゆる「自己啓発本」、厳密に言えば「エセ自己啓発本」が好きじゃない。
「早起きをしろ!」だの「残業をするな!」だの言われても「うるせー、好きなようにやらせろ!」と思うし、そういう習慣や考え方、志や思いの持ち方まで人に左右されたいとは思わないし、なんだかそういう本って一種のセラピーとか宗教っぽさが滲んでる感じがして、なんかやだ。
だから、まさに文字通り自己啓発の権化のようなタイトルでありかつ訳者が勝間和代(笑)なんていう本書に、当時の僕が自然と興味を持ってそれを手にとるなんてちょっと考えにくいこと。
でも恐らく当時の僕は、Amazonの売れ筋ランキングをなめるように見て、レビューが高評価だった本書を色々学びたい一心で手にとったのだと思う。
ただ、この本を読んだ直後の感想は今でもはっきりと覚えてる。
「我が意を得たり」
本書には当時僕がぼんやりと抱いてた、あいまいながらも見つけ出しつつあった人生観や哲学、ものの考え方や人との接し方、自分との向き合い方について、非常に明確に、体系的に、具体的に記されていたので。
本書は、米国の名司会者であるオプラ・ウィンフリーも担当した訴訟コンサルタント(っていう職業は日本ではポピュラーではないのでピンとこないけど)である著者が、人がより主体的に自分の人生に関われるようにするため、またよりその人の人生を幸せなものにするために役立つ人生の法則について解説したもの。
本書に書かれている人生の法則とは下記の通り。
[quote] 人生の法則1: ものがわかっているか、いないか
人生の法則2: 人生の責任は自分にある
人生の法則3: 人はうまくいくことをする
人生の法則4: 自分が認めていないことは変えられない
人生の法則5: 人生は行動に報いる
人生の法則6: 事実なんてない。あるのは認識だけ
人生の法則7: 人生は管理するもの。癒すものではない
人生の法則8: 私たちは自分の扱い方を人に教えている
人生の法則9: 許しには力がある
人生の法則10: 自分が求めているものを知り、要求する[/quote]
訳者である勝間和代の訳のせいかどうかはよくわからんけど、一見するとこれらはなんだか胡散臭い(笑。
何回か本書を読んで、本書に心酔している僕でさえも、未だにこの見出しを読むとなんだかキナ臭い印象を受ける。
ただ、そこに書かれている法則はまぎれもなく「真実」ばかり。
それはつまり「自分の人生は自分しか生きられない」というくらい当たり前で疑う余地のないの事実。
この「絶対的な真実」のみを取り扱っている点が、他の似非自己啓発本と大きく異なる部分だと思う。
僕はあまり親しくない人に自分の考えを述べるのを躊躇う人間です。
なんとなく自分の考えは他人と比べてちょっとヘンだと思うし、自分がよく考える「〜すべき」とか「〜であるべし」なんて思想はなんかちょっとキツいと思うし、僕の人格、性格をあまりよく知らない人にそれを滔々と話しても「うへー」と思われるだけだと思うので。
例えば。
安い居酒屋で同僚が「いやー、部長がまるでわかっちゃいなくてさ。おれがこんなに成果挙げてるのに全然それを評価しないんだぜ。」なんて愚痴を言ったとする。
恐らく「バカだねー、その上司」などと同調するのが普通のリアクション。んで、彼は「でしょー」と言って気持よく酒を飲む。
でも僕は「え、でもそれって君のせいでしょー」と言ってしまう。
彼の愚痴にはいくつかの原因が考えられる。
「実は彼は言うほど成果を挙げていなかった」、「成果は挙げていたが上司にそれを伝えられていなかった」、「成果を伝えられていたが、その成果は上司や組織の望むものではなかった」、「上司や組織の望む成果ではあったが、他の同僚と比べて相対的に低い成果であった」等々。
このようにいくつか原因は考えられるけど、でも共通して言えるのはいずれにしろそれは彼自身の責任であるということ。
ただし、僕が言いたいのは「それが彼自身の責任であるから彼は責められたり非難されたりすべきだ!」ということではなく、それが彼に帰すべき責任であるからこそ「彼が」その状況を変えることができるのだということ。
つまり、上司が彼を評価するかしないかは「彼が」コントロールできることだと僕は考えている。
もう一つ極端な例を。(極端すぎてよく引かれる)
結婚式において新郎が「おれがお前を幸せにする!」なんて言うのは正しくないと思う。
人は他人を幸せにすることなんかできないので。
人の幸せはその人だけのものであり、その幸せの定義も幸せに感じるかどうかもその人次第。
そこに他人が介在することなんてできない。
僕の幸せは僕だけのもの。
人から1万円もらったら「嬉しい!幸せ!」と思うけれども、その人はただ1万円を僕にくれただけであり、それを幸せだと認識するのはどこまで行っても僕自身。
もしかしたら僕は「こいつ理由もなくおれに金をよこすなんて……同情か!おれのことを貧乏だと思って愚弄してるのか!」と怒るかもしれない。
いずれにしろその人はただ僕に1万円をくれただけ。
結婚生活において新郎もしくは新婦ができるのは「愛してるよ」と言ったり、がんばって稼いできたり、家事子育てを手伝ったり、浮気をしなかったり……「相手が幸せになる蓋然性の高い行為をすること」だけだ。
それを幸せと思うかどうかは受け取る本人次第。その人にしかコントロールできない。
で、大体こういう僕の本音を人に言うと、「はあ?」って顔をされる。
一生懸命意図を説明したところで、理解してもらえないか、敬遠されるか、ヘンテコな人だと思われるかのどれか(笑。
なので、僕という人間、僕の考え方をあまりよくご存知ない人にはこういう本音は言わないようにしてます。
でもやっぱり本音は本音。
これは他人に対してだけでなく、自分にも当てはまる本音。
いい評価をもらえなかったのであれば、それは僕の責任。
幸せでないのであれば、それも僕の責任。
今人生に満足していないのであれば、それは全て僕の責任。
「自分が不幸なのは他人のせい」なんて考えるのは間違っている。
逆に、全て自分の責任であることを心から理解できれば、自分との付き合い方、人生の生き方はだいぶ違ってくる。
だって全て自分でコントロールできるんだもん。
自分ではコントロール出来ない「外的要因」なんてものはないんだもん。
『五体不満足』の乙武氏を見ていると、先天的疾患ですら「外的要因」にはならないことがわかる。
それを嘆くか嘆かないかも彼次第。それによって得られた他人とは異なる視点を喜ぶか喜ばないかも彼次第。
本書のタイトルは、残念ながら多分に誤解を招くものであるように思う。
原著のタイトル『Life Strategy』ですら、「Strategy」という言葉から想起されるイメージは本書から得られる示唆にはそぐわない。
本書から得られるのは、戦略とか手法とかいうメソドロジーではなく、人生における哲学的真理。
これを「わかっているか、いないか」で、確実に人生の風景は大きく変わる。
絶対的真理であるが故に、本書のタイトルや見出しから受ける胡散臭さに惑わされず本書を手にとることをすべての人にオススメしたいです。
これを読んでどういう示唆を得るかすらも、読んだその人次第だけど(笑。
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