もともと哲学なんてものは非常に高尚かつ高飛車で近寄りがたい学問だと僕は思っていた。
その一方で、大学を卒業して就職し社会人として生きつつも自分のキャリアや人生に思いを巡らせる日々を経る中、自分の人生と向き合うための道具として哲学ってもんがなんとなくわかってきた。
例えば、僕にとっては「ビジョナリーカンパニー」だって「iCon」だって「坂の上の雲」だって哲学書だ。
それらが多かれ少なかれ自分の生き方や考え方を見つめなおす契機となったから。
さて、そういった思想考察が哲学なんではないかと思い始めた時分、徐々に学問としての哲学にも興味が湧いてきた。
自分なりの哲学っつー土壌ができた上で学問としての哲学に触ってみると結構理解できちゃったり共感できちゃったりするんじゃないの?と。
そこで読んでみたのが「高校生のための哲学入門」。
今となっては内容も思い出せないけど、はっきり言えるのはこんなもん哲学じゃない。ただの「哲学の解説」。
音楽に例えると、実際に色んな音楽を聴いたり演奏したりして学んでいくのではなく譜面と教科書で理論と歴史を学ぶだけ、的な。
それって音楽じゃなくてただ記号や文字を読んでるだけでしょ。
そんなわけで学問としての哲学に辟易してはや数年、再び人生の悩みの時期に突入したのを機に(つーかずっと悩みの時期な気もするけど)、ニーチェなんていう学問哲学の大ボスみたいな人の著作をふと読んでみようと思った。(どこの本屋にも平積みしてあったので)
本書は「ツァラトゥストラはかく語りき」や「人間的な、あまりに人間的な」などの著作の中からオイシイ語録をピックアップ、それらを「己」「喜」「生」「心」「友」「世」「人」「愛」「知」「美」というテーマでまとめたもの。
一つ一つがヒジョーにコンパクトである上、前書きにある通り本当に「ニーチェの哲学は難しくない」ためサクサク読める。
あんまり読むのが早くない僕でも一日の通勤の行き帰りで読了。
で、繰り返すようだがこれらの言葉は難しい「テツガク」なんてモノとは程遠く、むしろ生活に密着した「あるある系哲学」といっても過言ではない。
そんなあるある系の中から僕が気になった何節かを以下にご紹介。
[quote]友人を求める前に自分自身を愛する:本当の自分を探すために、誰かを求める。自分をもっと相手にしてほしいから、友人を求める。漠然とした安心を求めて誰かに頼る。なぜ、そうなるのか。孤独だからだ。なぜ、孤独なのか。自分自身を愛することがうまくいってないからだ。(022; 「ツァラトゥストラはかく語りき」)[/quote]
僕は結構「社会的承認」を欲しがる人間です。
仕事がんばるのもDJするのもそう。
一生懸命女の子を口説いたりするのも実は性欲のためではなく受容されたいからだったりします。
で、それって要は自分で自分を受容できてないからなんですね。
だから他人の評価や肩書きに伴なう「ハク」を求める、と。うーん。
[quote]>友人を作る方法:共にに苦しむのではない。共に喜ぶのだ。そうすれば友人が作れる。(075; 「人間的な、あまりに人間的な」) [/quote]
最近友人を作るのが難しいと思うようになりました。
出会いの機会はあるのですが、まあ飲んでわいわい騒ぐだけ騒いで「んで?」っていう。
結局クラブとかダンスミュージックが好きな人って周りにいないし、生き方考え方に共感してくれる人もそういないし。
だから仕方ないっちゃ仕方ないんですが、今僕が「友人」だと思っている人々は、価値観が合うってのもあるけどなんか色々一緒にやってきたな、と。
そういう共通の経験が絆を深めてくんだなーと思いました。
[quote]真に独創的な人物とは:何か奇抜なことをして衆目を集めるのが独創的な人物ではない。それは単なる目立ちたがり屋だ。たとえば、独創的な人間の特徴の一つは、すでにみんなの目の前にあるのにまだ気づかれておらず名前さえ持たないものを見る視力を持ち、さらにそれに名称を新しく与えることができる、ということだ。(117;「悦ばしき知識」) [/quote]
要するに全裸で出社するヤツは独創的でもなんでもなくて、MP3プレーヤに曲転送する時ラクちんにできた方がよくない?と言い出すヤツが独創的である、と。うーんなるほど。
総じて言うと、僕にとっての哲学ってのは自分が生きる上での信条だったり理想だったり美学だったり、そんなようなもの。
例えば「仕事振られたら断らない」「つまらない仕事でも手を抜かない」「電車乗りるときは絶対に降りる人を待つ」などなど。
約1世紀チョイ前に紡がれた言葉の数々は時間の隔たりを感じさせず、その「あるある」度は天津木村のエロ詩吟並み。
みなさん是非一度手にとってみてはいかがでしょうか?
そして一つだけ要望。絶対文庫本にすべし!重いしかさばる!余白多すぎだろ!
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