マイケル・ジャクソンの死後、そして「This Is It」の公開後、僕は不思議な感覚に襲われた。
今まで彼に対してアンチの姿勢だったマスコミや多くの人々が急に彼を絶賛し、追悼したから。
いや、もちろん絶賛されないよりはされた方がいい。
しかし彼の人生が、マスコミの助長する特にそこまで熱心なファンでもない一般市民の「負の感情」に煽られたものだとしたら、この現象も感情のベクトルが違うだけで結局「彼の死」という大きなスキャンダルに対しての扇動という意味で同じなのではないか、そんな疑念を抱いてしまうくらいその絶賛と追悼は猛烈で、そしてそれまでとは180度違った評価だった。
僕は単純にマイケル・ジャクソンという人間を正しく理解して欲しいだけだ。そして正しい理解の上で至った評価ならば、プラスでもマイナスでもどちらでもよいと思う。
そんなことを僕が言う権利なんてどこにもないが、1人のファンとして、彼のお陰で文字通り人生を変えられた人間として、ある種の押し付けのような気持ちでそう思う。
特に僕らの世代 – 「Thriller」や「Bad
」がリリースされた80年代に幼稚園や小学生時代を過ごした世代 – はものごころついた頃には既に大きなツアーはなく、メディアへの登場もゴシップがほとんど、その報道姿勢はアンチだったため、誤解しやすい土壌にあった。
でも彼の特長的なブレスだけでなくダイナミックで繊細な歌の全てに耳を傾けてくれたら、股間に手をやるセクシーなパートだけでなく精密でハイレベルなダンス全体に目を向けてくれたら、もしかしたら彼の死を少しでも遅らせられたかもしれないと思うのだ。
幸いなことに、生前の彼を知るための教材は色々残されている。
1つはアルバムやシングルなどの音楽。彼の音楽を知り、楽しむには最も適した教材。
2つはライブやPVなどの映像。「This Is It」を観て感動した人は是非「Live In Bucharest
」を観てもらいたい。気力も体力も十分なマイケルによるリハーサルではない完成されたショーを目の当たりにできるので。
そして3つ目に当たるのが本書だ。彼がわずか9歳でジャクソン5のリードボーカルとしてデビューしてから、どんな人生を歩み、どんな思いでアルバムを作り、なにが歯車を狂わせたのか。それをクインシー・ジョーンズやライオネル・リッチー、ダイアナ・ロスなどマイケル・ジャクソンと親しかった人々の証言をもとに、詳細に説明した本書は文字通り「マイケルジャクソンの教科書」である。マイケルの音楽人生にフォーカスしているが故に彼のディスコグラフィーを学べる教材ともなっているので、CDを選ぶ際の参考書としても適していると思う。
先日ある「マイケルジャクソンナイト」と銘打ったパーティーでDJをさせてもらった。
「彼の死後ブームに乗って多く開催されるようになったMJ追悼パーティーの1つ」程度の認識しかなかったが、DJをやらせてもらってその認識が誤りだったことがわかった。
曲をかけるごとに、全員が振り付け通りに完璧に踊る。圧巻だった。
DJとして嬉しかっただけでなく、1人のマイケルジャクソンファンとしてこんなにも熱狂的な人たちに会えたことが嬉しかった。
そしてそれが日本中で開催されている「マイケルジャクソンナイト」というパーティで、さらには世界中で同様の光景が広がっているかと思うと、改めて彼という存在の影響力の大きさを感じた。
残念ながらもうすでに彼はここにはいないけど、是非彼がどんな「人間」だったか、ちょっと本書を覗いてみてください。
ちなみに著者の西寺郷太氏は自身もミュージシャンでありSMAPや中島美嘉などに楽曲を提供するなどの実績がある一方、日本屈指のマイケル・ジャクソン研究家。さらにWikipediaによるとその興味の対象は政治や宗教にまで多岐に渡り、マイケル・ジャクソンと小沢一郎の比較についての論考までやってたり。
そんな彼がマイケル・ジャクソンについて書いたもう一冊の本「マイケル・ジャクソン」もオススメです。
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