社会保障等の問題が語られる中「世代間格差」という言葉をよく耳にします。即ち若者が高齢者に搾取されるという構図。現在の日本の年金制度はその最たる例です。
そんな現状を打破するために必要なのは「若者が政治に興味を持ち投票に行くこと」。もっともです。ただ、最近思うのは、多くの若者が思う「おれが投票に行ってもなんにも変わんねーし」的な感覚は実は真実なのではないか?ということ。
少子高齢化が進展する中で、人口に占める高齢者の割合はどんどん増えている。一方で生産年齢人口の割合は当然ながら減る。地域ごとの一票の格差を考えると、高齢者の票数は絶対値として大きくなっています。さらに今後の世代別人口の推移を考えると、高齢者の票数はより増大し、若者のそれはより減少する。これはほぼ自明の傾向と思います。さらに参政権には年齢の下限はあるが上限はない。つまり医療の発達により寿命が延びれば延びるほど、全票数における高齢者票の割合はさらに増えていくわけです。
選挙をマーケティングの観点で捉えると、得票、つまりシェアを確保するために合理的な行動は最も大きなセグメントをターゲットとすることです。従って高齢者層にアプローチする政策を立案し、彼らの票を獲得するのが合理的。もちろん競合がそういう戦略を取る中若者層にアプローチする政治家もいるでしょう。しかしそれはニッチな市場を狙っているだけ。市場環境が変わらない限り、ニッチな市場がメジャーな市場になるわけではありません。
ではこのような票数の偏りをなくすにはどうしたらいいか。
票数が人口と投票率の積であるとすると、現在の高齢者市場と若者市場間の偏りをなくすには、下記の4つの方策が考えられます。
- 若者の人口を増やす
- 若者の投票率を上げる
- 高齢者の人口を減らす
- 高齢者の投票率を下げる
- 若者の人口を増やす
つまり少子高齢化を食い止めるということですが、これは非常に難易度が高く、また時間がかかります。短期的な解決策としては移民の受け入れがあると思いますが、移民の受け入れ自体が一般化していない以上一足飛びに移民への参政権付与が実現するとは思えません。従ってこの策は事実上不可能であると考えられます。 - 若者の投票率を上げる
これが昨今叫ばれている解決策です。しかし、これは卵と鶏の関係のように思えますが、現時点で高齢者市場が政治家にとって魅力的である以上、若者が投票に行くのは自ら無力感に苛まれるようなものです。さらにそもそも絶対的な市場規模の差がある以上、投票率が上がったところで偏りの解消にまでは至らないのではないかと思います。 - 高齢者の人口を減らす
この策が物騒な方法を意味していない以上、この策の意味するところは「高齢者の投票人口を減らす」です。これはつまり「高齢者の投票率を下げる」と同義であるため、ここでは割愛します。 - 高齢者の投票率を下げる
最後に考えられるのがこの策です。具体的には参政権に年齢の上限を求めるなどの方策が考えられますが、これはこれで新たな歪みを生みそうです。現時点で最も有効と思えるのは、「世代別選挙区制」の導入です。運用上手間を考えると電子投票の議論と併せて検討を進める必要がありそうですが、例えば比例代表の部分だけ世代別選挙区制を導入してみる、など工夫の余地はありそうです。
と、雑駁に今後の投票制度をどうしたらよいか考えてみましたが、しかしふっと頭をよぎることが。
選挙制度を変えるための政策、法案自体も選挙によって選ばれた政党、政治家によってなされるとするならば、そもそも大お得意様である高齢者の発言力を弱めるような政策をわざわざ実行しようとするかどうかという点には疑問が残ります。
恐らくこれが実現するのは若者の海外脱出の深刻化や財政破綻というのっぴきならない事態になった時。うーん、一体それはいつになるのでしょうか……。
コメントを残す