ジャカルタ海南チキンライス紀行。

海南鶏飯(ハイナンチーファン)は、茹で鶏とその茹で汁で炊いた白米を共に皿へ盛り付けたマレーシアやシンガポール、タイなどの東南アジア周辺地域で一般的な料理。日本語へは「ハイナンチキンライス」、「海南風チキンライス」などと訳されている。現地では、専門店や屋台で食べることができる庶民的な定食のひとつで、香港の茶餐廳やマレーシア料理店などでも一般的である。
Wikipediaより引用)

海南鶏飯、ハイナンチキンライスは僕の大好物の一つ。東南アジアでは一般的なファストフードで、こちらでは「チキンライス」と言えば日本で言うところのケチャップライスではなくこちらのチキンライスを指します。鶏のスープで炊いたご飯に蒸し鶏もしくはローストしたチキンを添えたもの。ダークソイソースと呼ばれるどろっとした醤油とすりおろしたショウガのタレなどを合わせて食べます。シンガポールではどこでも食べられる上一食300円くらい、またどの店でも味にハズレがないのでお腹が減った時のファーストチョイスになります。タイでも「カオマンガイ」という名前で人気です。

僕が初めてチキンライスに出会ったのはジャカルタ出張の時でした。海外経験に乏しくそもそもチキンライスというものを知らなかった僕は、当時宿泊していたホテルのレストランで夕食に何を食べようか悩んだ挙句、料理の説明から無難な味のように思えた「Hainanese Chicken Rice」を注文しました。
感想は、

「ま、不味い!!!!!」

宿泊していたのは一応5つ星の一流ホテル。朝食ブッフェを提供するレストランなのでそこまで美味しいことはないとしても、ヒドく不味いなんて事態は想定していませんでした。しかし、不味い。そもそもご飯がポッソポソで米というかもはやクスクスを食べているような気にさえなります。
この経験から僕は一つ学びました。

「Hainanese Chicken Riceというものは不味い食べ物なんだな。」

しばらくしてシンガポールに一人で出張で行く機会がありました。何を隠そう初めてのシンガポールでした。インドネシアに続き二カ国目の外国に足を踏み入れるドキドキ感、その先進国っぽさと途上国っぽさの混在する空気に僕は興奮していました。用事を済ませた後、ランチの時間に。

「何を食べようかな……」

この時点で僕は海南チキンライスがシンガポールでは非常にポピュラーな食べ物だということを学んでみました。一応ウェブサイトで事前に調べ、美味しいと言われる店に。
行った店はショッピングモールの一角にあるものの、店構えは非常にシャビー。シンガポールの「途上国っぽさ」が出ている感じ。僕が苦手とする雰囲気です。店員は中国系の愛想の悪いおばちゃん。英語が公用語のシンガポールであるにも関わらず英語が通じるのか不安になるレベル。それでも恐る恐る注文。

「チ、チキンライスプリーズ」

無愛想にドンと置かれるチキン、ライス、スープ。汚い。見た目は5つ星ホテルで食べたそれの方が圧倒的にマシです。しかしここまで来て食べないわけにはいかない。覚悟を決めてライスを口に。

「う、美味い!!!!!」

尋常でなく美味い。スープで炊かれたご飯の香り高い味わい、鶏肉の柔らかさとダークソイソース、ショウガダレとの絶妙なコンビネーション、そしてコクがありながらもあっさりしたスープ。それがたかだか300円くらい。ジャカルタで2,000円近く払って食べた激烈に不味いチキンライスとは大違いです。この広い世界にはなんて美味い食べ物があるんだ……!!

この経験から僕は一つ学びました。

「Hainanese Chicken Riceというものは美味い食べ物なんだな!」

冒頭に引用したWikipediaの説明にもある通り、聞けば海南チキンライスとは別にシンガポールでしか食べられないわけではなく、東南アジアでは一般的とのこと。

「ジャカルタにも美味いチキンライスを食べさせる店がきっとあるはず……」

ここから僕のジャカルタ海南チキンライス紀行が始まりました。
ジャカルタに戻ってから僕は様々な店に行きました。とはいえ僕の行動範囲はジャカルタ中心部がメイン。北や西の方にある中国人街は行動範囲外であり、また情報も乏しく土地勘もないので一人で行くのは困難。それでも下記の店に行きました。

  • Satoo, Shangri-La Hotel)
  • Penang Bistro, Kebon Sirih
  • May Star, Gandaria Mall
  • ******** (日本人経営のお店なので名前は伏せます)
  • Duck King, Grand Indonesia
  • Chatter Box, Plaza Senayan

どれも美味しくない。どれも見た目はそれっぽい感じです。唯一May Starだけ、小さなお椀に入ったライスだけでチキンもスープもないという衝撃のチキンライスを出してきました。それ以外は一応チキン、ライス、スープの3点セットがちゃんと出てくる。しかし美味しくない。
問題は米です。炊き方が下手なのか、米の品種の問題か、どの店で食べてもポソポソです。ポッソポソです。「パラパラ」とかそういうレベルではなく、「米炊く時水入れた?」ってレベル。
この中で最もマシだったのはChatter Box。シンガポールのMandarine Hotelに入っているチキンライス名店の一つと同じ名前ですが、ジャカルタのそれはシンガポールのような高級店ではなくファミレスみたいなもの。味は普通ですが、また食べたくなるようなものではありませんでした。

正直僕はジャカルタで美味しいチキンライスを食べるのを諦めていました。
「どうせシンガポールに行けばまた美味しいチキンライスが食べられる。わざわざジャカルタで食べる必要なんてないさ……」
僕はある意味やさぐれていました。
そんなある日、近所のショッピングモールに散髪に行った帰り、非常にそれっぽい店構えのチキンライス屋を発見。初めて見た時の感想はよく覚えています。

「それっぽい!!」

早速店に入り、注文。
メニューにあるチキンライスは「Premium Hainanese Chicken Rice」と「Executive Hainanese Chicken Rice」の2種類。謎の区別。店員に「違いはなに?」と聞くものの早口のインドネシア語でよくわからない。

「よくわからんけど高い方がうまいんでしょ?」
「へえ、そうですな。」

ということで「Executive Hainanese Chicken Rice」を注文。っても値段は25円くらいしか変わりません。
すぐに料理が出てくる。……それっぽい。
早速口に運ぶ。

「こ、これだ……!!」

初めてチキンライスを口にしてから2年半ほど、初めてシンガポールで美味しいチキンライスを食べてから1年半ほど、ようやくまともなチキンライスをジャカルタで食べることができました!!!

ということでそのお店をご紹介。

  • Boon Chang Kee (文昌記)
    City Walk Sudirman Lt.1 No.22, Jl. K.H. Mas Mansyur No.121, Jakarta
    +62 21 3662 8889
    http://boonchangkee.com/

シンガポールで食べるようなチキンライスをジャカルタに求めてる方、是非こちらに行ってみてください。

ちなみに、番外編としてシンガポールでお気に入りの店は下記の通り。

  • Lucky Chicken Rice
    Orchard Road沿いLucky Plaza内にあるチキンライス屋です。何を隠そうこれが僕が初めてシンガポールで食べたチキンライス。ベストはスチームとローストをミックスした文字通り「ミックス」。店に入って無愛想なおばちゃんに「ミックス」と言えば出てきます。ちなみに卓上のショウガダレがなくなっていることを指摘すると、おばちゃんはより不機嫌になります。
    #02-110 Lucky Plaza, 304 Orchard Road
    +65 6738 4175
  • Boon Tong Kee
    色々なところでウマいウマいと噂の文東記。多分行ったと思うのですが、実はあまり覚えていません。確かウマかったはず。ちょっとMRTの駅から遠いので、たどり着くには駅からひとしきり歩ける足腰の強さか、バスを乗りこなすスキルが必要かもしれません。
    425 River Valley Road
    +65 6736 3213
    http://www.boontongkee.com.sg
  • Five Star Hainanese Chicken Rice
    文東記の隣にあるライバル店。記憶が曖昧な一回目の文東記訪問の後、再度訪れようとした時タクシーの運ちゃんが「隣のFive Starの方がウマいぜ」と行っていたので入ってみた店。違いはあまりわかりませんが(そもそも文東記はうろ覚えだし)、こちらも美味しかったです。
    419 River Valley Road
    +65 6235 6760
    http://www.fivestarchickenrice.com
  • Sin Kee Famous Chicken Rice
    会社の先輩から「ウマいらしい」と教わった店。行ってみたところ所謂発展途上な感じのガランとした食堂でした。イスは風呂場にあるようなプラスチックのイス。店員は英語が通じてのるのか通じてないのかわからないレベル。チキンライスはとても美味しかったですが、骨付き、パクチーなし、スープなしなのが玉に瑕。
    38 Commonwealth Avenue
    +65 9682 0381

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“ジャカルタ海南チキンライス紀行。” への1件のコメント

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