先日、新年早々人生で初めてiPhoneを紛失しました。幸運なことに、約36時間後には無事回収することができましたが、この経験からいくつか教訓を得たので備忘録としてここに書いておきたいと思います。
- 何が起きたのか
まず、ことの顛末について。
1月2日の晩、代官山のクラブAirで行われた木村コウさんのDJ30周年を祝うパーティに遊びに出かける。この日は”Back To Basics”と題して木村コウさんが彼のキャリアを振り返るクラシックセットを披露するとのこと。彼のDJによってクラバーとして育てられたと言っても過言ではない僕にとっては外すことのできないパーティであり、そして我を忘れて狂喜乱舞するパーティ。というわけで当日は素晴らしいハウスクラシックスとAIBAさんのライティングの下に妥当な論理的帰結としての狂喜乱舞。ふと気づくとiPhoneがない。この日はあまり履きなれないユルいパンツを履いており、iPhoneはその尻ポケットに入れていた。このポケットはそこまで浅いわけではなかったけれども、あまりに狂喜乱舞していたために落ちてしまったのか。実はこの日iPhoneを落としたのは二度目。しかし一度目はクラブにちゃんと届けられていたため、手元に戻ってくるのにあまり時間はかからなかった。
こうした一度目の経験があったせいか、二度目に失くした時も「恐らくクラブに届けられているだろう」と、あまり危機感が募ることはなかった。一応クラブのスタッフの方々に落とし物がないか尋ねてみたものの、「ない」との返事。ただ、この時はまだ「まだ届いていないのだろう」くらいの気持ちでいた。
そうこうするうちにパーティが終わり、音が止まり、照明が付き、帰宅の時間に。改めてクラブのスタッフに聞いてみるものの「届いてない」との返事。え。バーやダンスフロアの床を見て回ってみても、見当たらない。ちなみにこのiPhone、この日の時点で購入してから一週間も経っていなかったので、このタイミングで失うのは経済的なダメージがかなり大きい。少々焦りつつも、もはやそこでは打つ手がないため、仕方なく帰宅。帰宅してまず行ったのは、「iPhoneを探す」機能によるiPhoneの所在探知。iPhoneには「iPhoneを探す」という機能が備わっており、この機能を有効にしていれば遠隔地から「GPSによる位置情報の確認」「音を鳴らす」「紛失モードをオンにする(画面上にメッセージ表示し、操作をロック)」「データ削除」ということを行うことができる。僕のiPhoneでもこの機能は予めちゃんと有効にしておいたので、自宅から自分のiPhoneの所在を確認することができた。すると画面上に表示される位置は、「足立区入谷」。
え?この時点で、僕のiPhoneは紛失した現場である代官山のクラブから誰かの手によって持ち去られたことが確定。人手を介さずiPhoneが渋谷区猿楽町から足立区入谷になんて行くわけがないし、そもそも僕がいたクラブから外に出るはずがない。
「盗まれた……」そう確信し、冷や汗をかく。
しかしよりによってなぜこんなところに。Google Mapの航空写真を見てみても、iPhoneの所在を表すピンが示すのはあまり人が住むような場所には見えない。ストリートビューで眺めてみても、駐車場のように見えるが、どういう建物なのかイマイチよくわからない。ピンから数メートル離れたところにはマンションらしきものもあるが、その住人だろうか……。「盗まれた」ことを前提に、色々な憶測が頭をよぎる。
ただどんな悪人を想像しようと、今できるのは「iPhoneを探す」機能を使ってiPhoneの画面に自分の会社貸与携帯電話の番号と「この番号に連絡欲しい」旨のメッセージを表示し、さらにiPhoneの音を鳴らして今の持ち主に気づかせることくらい。これ以上はこの時点で打つ手がないため、ひとまず就寝。翌日、起床するとすぐiPhoneの所在を確認。まだ足立区から動いていないものの、オフラインになっている。恐らくバッテリー切れによる電源断だろう。しばらく他のことをしつつ、再度iPhoneが起動されるのを待つ。iPhoneが起動されれば位置情報がアップデートされるだろうし、音やメッセージにも気づくだろう。iPhoneを持ち去った動機が故意なのかうっかりなのか、悪意なのか他意はないのか、どちらかはわからないが、どちらにしてもいつか電源を入れるはず。その時までしばし待機か。
待機する間、インターネットでiPhoneの盗難について情報収集。盗まれた人の立場、盗んだ人の立場の両方から。少なくとも最新のiOSで仮想移動体通信事業者と言って、携帯電話回線をNTT docomoから借り受けてそれを自社ブランドでパッケージングしなおして顧客に回線を販売する業者。つまり僕は、回線という意味ではdocomoの回線を利用しているが、回線の契約はdocomoではなくNTTコミュニケーションズと行っている。この状況下で、「通信キャリア」としてどちらを書くべきか。
ちなみに後日OCNに問い合わせたところ、「遺失届には通信キャリアとして『OCN』と記載してください」とのことだった。ウェブサイトで調べた情報によれば、交番に携帯電話が届けられた際は通信キャリアに契約者の照会をし確認が取れた後に契約者本人に返却する、というオペレーションになるそう。通信キャリアを記載するのはこの照会先を特定するためと考えると、確かに僕が契約してもいないdocomoを通信キャリアとして届に記載しても意味が無いのかもしれない。交番から帰宅してから、改めてiPhoneを盗まれた人のブログを見る。そうすると、やはり皆位置情報を基本に様々な情報を集め、それを総合してiPhoneの所在を突き止めたりしている。見習わねばと思い僕も改めてもう一度Google MapのストリートビューでiPhoneの所在を確認。何かヒントは落ちていないか。
これまでiPhoneが存在するであろう建物を表通り側からばかり見ていたけど、ふと思い立って裏側の通りから画像を確認。すると、視界に飛び込んできたのは駐車場に停められている何台ものタクシー。これ、明らかにタクシー会社だ……!
ストリートビューの画像から確認できるタクシー会社のロゴから会社名をチェック、早速そのタクシー会社のウェブサイトを確認してみると、掲載されている加盟会社の中に、まさに「iPhoneを探す」の位置情報が指し示す住所が。これだ!!経緯はわからないが、僕のiPhoneはなんらかの理由でタクシー会社に遺失物として保管されている可能性が高い。つまり個人ではなく法人の管理下にある。これで転売は廃棄等の可能性は非常に小さくなったし、何よりiPhoneを回収できる期待が大きく高まった。
この事実を発見した時は既に夜中だったため、翌朝まで待ち、その会社に電話してみる。僕「落し物の問い合わせでお電話しました。1月3日の早朝に忘れ物のiPhoneはありませんでしたか?」
タクシー会社「ああ、届いてますよ。」キターーーーーーーーーーー!!!!!!
念のため機種や本体色、カバーの材質や色などを確認してみたところ、確実に僕のiPhone。僕「では本日取りに伺います!!」
というわけで早速その日中にその会社へ行き、そして無事自分のiPhoneを回収。紛失から実に36時間が経過していた。ちなみにそのタクシー会社で僕のiPhoneを受け取る手続きをした際、遺失物票のようなものにサインしたのだけど、そこには僕のiPhoneが放置された状況、つまり「いつ」「どこからどこまで」乗車した客が忘れていったかが書かれていた。それによると、このiPhoneは「1月3日の午前4時」、「代官山から自由が丘」まで乗車した客が置いていったとのこと。つまり僕のiPhoneを持ち去った誰かは、代官山のクラブで僕のiPhoneを拾った後、午前4時頃にそのクラブを後にし、そこでタクシーを拾って自由が丘まで帰宅。そしてその帰宅途中のタクシー車中で何らかの理由によりクラブで拾ったiPhoneをそのまま放置した、ということになる。自分のものと思ってうっかり拾ったものが実は自分のものではなかったことにタクシー車中で気付いたのか、はたまた悪意を持って持ち帰ったものの車中で操作できないことに気づきそのまま放置したのか、真相は定かではないけれども。
いずれにせよタクシー車内に放置されたのは不幸中の幸いと言えそう。想定した最悪のパターンは「バラされて部品ごとに売却」だったし、もしくはタクシー車内ではなく路上に放置されればそのまま雨や車等で損壊してしまう可能性もあった。たった36時間で無傷と言っていい状態で帰ってきてくれたのは、本当に幸運としか言いようがない。こういう経緯で、僕の36時間に渡るiPhone紛失騒動は一件落着。
お騒がせした皆様、捜索に協力してくださった皆様にはこの場をお借りしてお詫びと御礼を。大変申し訳ありませんでした。また、ご協力頂きありがとうございました。
今後クラブで狂喜乱舞する時はポケットの中のものが出ないように対処した上で狂喜乱舞します。 - どう対処すべきか
さて、ことの顛末は上述の通りだが、せっかくのトラブル経験なのでこの経験から得られた示唆、教訓をまとめておきたい。
iPhone紛失というアクシデントに際して、対処は大きく「事前」と「事後」の2フェーズに分けられると思う。- 事前
まずはiPhone紛失という予期せぬアクシデントに備えて行っておくべき事前準備。この準備をしているかどうかで、紛失した時のiPhone回収の可能性や、個人情報漏洩リスクなどが変わってくる。いずれも大した手間ではないので、直ちにやっておきたいところ。- 「iPhoneを探す」機能を有効にする
何はなくとも、この機能は必ず確実にしっかり念入りに有効にしておく。iPhone発見に至る最大の糸口はiPhoneの位置情報だが、この機能が有効になっていないとそもそもiPhoneの所在を確認することができなくなる。遠隔ロックなど「iPhoneを探す」が持つその他の機能ももちろんとても重要だが、位置情報を確認するために必ずこの機能は有効にしておくこと。 - パスコードロックを有効にする
当たり前の話だが、iPhoneはパスコードでロックしておくこと。パスコードは英字数字混在の長い文字列の方が望ましいが、数字4桁でもいいので必ずロックしておく。
合わせて一定時間iPhoneを操作しないと自動的にロックされる設定も有効にしておいた方が吉。 - ロック画面から機能にアクセスできないようにする
iPhoneをパスコードロックしていても、実はロック画面から操作できる手段がまだ、残っている。「コントロールセンター」と「Siri」は、設定次第ではiPhoneをロックしていても使えてしまう。コントロールセンターは機内モードのオンオフなど操作することでオフラインでのiPhone利用を可能にしてしまう。オフラインだと「iPhoneを探す」機能を有効にしていたとしても位置情報を特定することができなくなる。またSiriは自分を含む連絡先情報等をペラペラ喋ってしまうなど、リスクが高い。このため、この2つはロック画面からでは使えないよう設定しておくこと。
- 「iPhoneを探す」機能を有効にする
- 事後
次に、不幸にもiPhoneを紛失した後の対処について。- 電話をかける
最も基本的な対処。自分のiPhoneを紛失したと思ったら、まずは電話をかけよう。友達やお店に電話を借りてもいいだろうし、公衆電話からでもいい。拾った人が普通の人であれば、電話に出てくれて所在等を教えてくれるかもしれない。もしくは意外にも自分のすぐそばでiPhoneが鳴るかもしれない。 - 「iPhoneを探す」で「紛失モード」をオンにする
電話に誰も応答しない場合、圏外等で電話が掛からない場合、自分のすぐそばで鳴っている気配もない場合は、直ちに「紛失モード」をオンにする。所有者本人であれば「紛失モード」はすぐに解除できるので、気軽に「紛失モード」にしてしまってよい。
「紛失モード」になっていても着信はできるので、「『紛失モード』にしてから電話をかけ続ける」という対処でも問題ない。
なお、この「紛失モード」にした瞬間、iPhoneの端末自体は遠隔ロックがかかって操作ができなくなる上、iPhoneの初期化等アクティベーションを行おうとしてもアクティベーションロックがかかって初期化自体できなくなる。これでひとまずデータの安全性は確保できたと言っていい。換言すれば、この機能ゆえに「iPhoneを探す」が持つもう一つの機能、「データ削除」は実行する必要がないとも言える。「データ削除」を実行するとiPhoneは初期化されるが、端末側の状態がどうなっていようとアクティベーションサーバ側で引き続きアクティベーションロックは有効になっているため、そのiPhoneをアクティベートすることはできないからだ。 - 警察に届ける
「電話をかける」「『紛失モード』をオンにする」と並行して、警察に遺失届を出しておいた方がよい。iPhoneを紛失した場所が東京都内であれば、都内の交番に行けば対応してもらえる。
この時、iPhoneが見つかった際の連絡を受けるための電話番号が必要なので、iPhoneをなくしてしまって自分の連絡先がない、という人は家族や親しい友人の協力を得た方がいい。
なお、警察が能動的に捜索してくれるということは基本的にないので、過度な期待はしないこと。あくまでも「どこかの交番に届いたら連絡をくれる」くらいの対応。 - 位置情報を確認する
上述した対処を全て行った上で、位置情報に基づいてiPhoneを独自に捜索する。オンラインである限りiPhoneの位置情報は補足することができるので、Google Map等の航空写真で確認したり、ストリートビューでその所在を確認したり、住所をGoogleで検索してみたり、位置情報を手がかりにiPhoneを探す。今回の僕のケースのように「タクシー会社」と一目瞭然に判明する場合ばかりではないと思うけれども、iPhone捜索のヒントはここに詰まってるはず。
- 電話をかける
- 事前
昨今ではiCloudのサービスを使わずにiPhoneを利用するケースはほとんどないと思われるので、iPhoneの紛失によって住所録や写真等のデータが失われることはほとんどないと思います。これらはiCloud上にバックアップされているためです。従ってiPhone紛失によるダメージは単純にその端末の喪失。それは端末代金であり、紛失した端末の回収、または再購入するまでの時間。これらは決してプライスレスなものではないため実は大した損害ではないと言うこともできます。ですが、やはり紛失しないに越したことはありませんし、紛失したとしても回収できるに越したことはありません。
今回のケースで最も感動したのは、テクノロジーの進歩によって自分自身で紛失した端末の捜索ができるようになったことです。ガラケーの時代であれば、携帯電話を紛失した時にできることは「電話をかける」ことくらい。あとはお手上げで、ただただ携帯電話が出てくるのを待つばかりでした。警察や、お店の人なども他人の携帯電話を真摯に探してくれることはまずありません。それが今や携帯電話を紛失しても自分自身で探し出せる時代になりました。これはとてもすごい進歩だと思います。
この記事をお読みになっている皆さんも、もし万が一iPhoneを紛失してしまっても決して諦めないで探してみてください!
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